「まるで工事現場…」巨岩を使用した子どもの遊具が話題

  • 文:美矢川ゆき
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@mikehewson - homepage

幼い頃に街の空き地や自然の中で、想像力を駆使して遊んだ思い出。そんなことを思い起こさせる、一風変わった遊具がオーストラリアのメルボルンに誕生した。手がけたのは、ニュージーランド人アーティスト、マイク・ヒューソン氏。「Rocks on Wheels(台車の上の岩)」と名付けられたこの遊具には、24個の巨大な岩が無造作に置かれている。その巨岩は、家具などを運ぶような台車の上に不安定に置かれ、岩の間にはロープや建築資材などが括りつけられている。一見すると危険な工事現場や資材置き場に見えるこの遊び場で、子どもたちは自由に飛び回って探検できるのだ。

このプロジェクトは、人口密度の高いメルボルン市郊外、サウスバンク地区の都市改良プロジェクトの一環だ。2022年11月に遊具が公開された当初、オーストラリアのメディアや保護者達から「危険だ」「未完成だ」という批判の声も上がった。しかし、メルボルン市の都市デザインをする建築家、Jocelyn Chiew氏は「安全を核に設計されている」とDezeenに語っている。「この遊具のデザインと構造は、プロジェクトチームによって厳密にテストされています。そして、この遊び場の監査人であるDMC Designが、設備としての安全性を保証しています 」と説明した。

彼の設計は決して行き当たりばったりなものではなく、細部に渡って、ミリ単位で綿密に計画されているのだ。また、設置される前には正確なレプリカが作られ、地質学者、構造エンジニア、クレーンの専門家、遊具の専門家などによって検証が行われていると、ABC NEWS も報じている。

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7枚目には、子供たちが遊具で遊んでいる動画がある。

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無造作に散らばる巨岩や建築廃材

ヒューソン氏は、「ここにある遊具は、まるでいたずらっ子が週末に組み立てたかのように、さまざまな物がポンと岩に置かれているように見えます。例えば岩の上に置き去りにされたように見える建設廃材は、冒険好きな子供がぶら下がることができるのです」とDezeenで述べている。遊び場に手すりはない。滑り台、ブランコ、うんてい、ロープ、足元には砂場。また、至る所に、ミニチュアの動物、おもちゃの車、庭のホース、その他の家庭用品などが隠されている。これらは、探検中に見つけられる「宝物」という仕掛けだ。床面は、転んでも痛くないクッション製になっている。しかし、メルボルンの歩道で一般的に使われているブルーストーンという敷石と同じに見えるように加工されている為、まるで公共の歩道で遊んでいる感覚になる。

遊具に潜んでいる様々な「宝物」 

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ニュージーランドのニュース番組で語るマイク・ヒューソン氏 。

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2〜5枚目と10枚目にクッション製の床材が紹介されている。「これがクッション製だとは信じられない」とヒューソン氏。※1枚目、6〜9枚目は別の作品 

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写真家ダイアン・アーバスの作品からインスピレーション

この遊び場は、世界的写真家ダイアン・アーバスが1962年に撮影した写真「Rocks on Wheels」から着想を得ている。ダイアン・アーバスはシュルレアリスティックな表現方法で、被写体の真実を明らかにする作風で知られている。この写真の被写体は、台車に載せられたディズニーランドの偽物の岩だ。

メルボルン市の遊具で使われている岩は、偽物ではなくメルボルンの歩道の敷石と同じ採石場から調達された本物を使用。岩を支える台車は、不安定に見えるが慎重に設計されて配置されている。また、子どもたちが自然と遊び場に誘導されるように、周辺に飛び散って転がった小さな岩を配置。自然のリアルさを演出しているそうだ。公共の遊び場で大切な概念「自由な遊び」「自然な遊び」「危険な遊び」を組み込んで表現している。

写真家ダイアン・アーバスと、彼女の代表作『一卵性双生児』 

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左にダイアン・アーバスの作品「Rocks on Wheels」、右にメルボルンの遊び場「Rocks on Wheels」の構想 @mikehewson - Instagram

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マイク・ヒューソンとは?

マイク・ヒューソン氏は、構造工学と重土木建設のバックグラウンドを持つビジュアル・アーティストだ。オーストラリアで5つの大規模なパブリックアートを手掛けている。マイク・ヒューソン氏の作品の多くは、彫刻と公園が一体となったプレイグラウンドだ。彼の作品の特徴は、前衛アートを公共の場に融合させること。公共空間では不可能と考えられていることを、実際に行うことができると証明するために活動中。2007年にニュージーランドのカンタベリー大学で土木工学の学士号を、2016年にニューヨークのコロンビア大学で美術修士号を取得している。

10歳頃のマイク・ヒューソン氏の頭に浮かんだ、想像力豊かなアイディア 

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幼い頃の思い出や自身の作品への思いを語るマイク・ヒューソン氏 @TEDx Talks - YouTube

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【画像】「まるで工事現場…」巨岩を使用した子どもの遊具が話題

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2〜5枚目と10枚目にクッション製の床材が紹介されている。「これがクッション製だとは信じられない」とヒューソン氏。※1枚目、6〜9枚目は別の作品 

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写真家ダイアン・アーバスと、彼女の代表作『一卵性双生児』 

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左にダイアン・アーバスの作品「Rocks on Wheels」、右にメルボルンの遊び場「Rocks on Wheels」の構想 @mikehewson - Instagram

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マイク・ヒューソンとは?

10歳頃のマイク・ヒューソン氏の頭に浮かんだ、想像力豊かなアイディア 

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幼い頃の思い出や自身の作品への思いを語るマイク・ヒューソン氏 @TEDx Talks - YouTube