インフレ時にお金に困らない生活をするためのたった2つの方法

  • 文:川畑明美
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「経済的自由を手に入れた」とは、どんな状態だろうか。使い切れないほどのお金を持つことなのか。筆者はそう思わない。そもそも「使い切れないほどのお金」は、幸福だけでなく不幸も呼び寄せてしまいそうだからだ。古今東西のミステリー書では、そのようなお金持ちの家で悲劇がおこっている。「お金や資産」があることで親族や使用人に狙われてしまう話が多い。不幸を呼び寄せてしまうのであれば使い切れない程のお金や資産は不必要だ。


その点を踏まえると「お金」が自分を自由にしてくれるのではなく、色々な選択をお金にしばられずにできることが経済的自由と考えられる。たとえば「休暇が取れたので、旅行に行きたいと思った時に旅行に行ける」「学び直しがしたいので、その費用を工面することができる」など、少しの贅沢ができる状態のことだ。では、どうしたら「経済的自由」を勝ち取ることができるのか? それは「お金の使い方」に関係があると考えている。

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「経済的自由」を勝ち取るお金の使い方 その1
→ インフレ率を考える


以前、次のようなご質問をいただいた。「51歳の主婦です。住宅ローンが現在、2000万円近く残っており、60歳くらいまでに返済できればいいなと思うのですが、子供2人がまだ高校、中学で、学費もかかってくる時期です。学費は学資保険で300万円くらい貯めていますが、投資できるお金も限られていると思います。投資よりも住宅ローンの繰上げ返済をした方がよいのでしょうか」


この方の間違いに気付いただろうか。2つのお金の使い方が間違っている。お金を貯めるには、インフレ率を考える必要がある。まずお子様の学費について考えてみよう。例えば返戻率が110%の学資保険に加入していたとする。大学費用のために500万円貯めようと考えて18年間学資保険に入った場合、返戻率が110%だったら18年後550万円になる。加入した当時は、これで十分だと思うかもしれない。


ところが、毎年2%ずつ物価が上がった場合を考えてみて欲しい。18年前は500万円で大学費用が足りていたとしても毎年2%で物価が上昇していけば大学費用は700万円になっている可能性が高い。110%の返戻率の学資保険は、年利に換算すると0.55%だ。物価の2%上昇率には間に合わない。

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「経済的自由」を勝ち取るお金の使い方 その2
→ローンでインフレ対策


もうひとつのお金の使い方の間違いは「住宅ローン」だ。基本的に激しいインフレ時は、借金は「有利に働く」のだ。特に住宅ローンを10年以上の固定金利で借りているのならば、インフレで現金の価値が目減りするのと同じようにローンの価値も下がる。インフレになる前に借りていた住宅ローンならば、この恩恵にあずかれるのだ。


例えばインフレが進み5年後に物価が1.5倍になった場合、1000万円の住宅は1500万円になっているはずだ。ところがインフレ前に住宅ローンを利用して1000万円の住宅を購入していれば物価が1.5倍になっても1000万円を返済するだけで済む。例えば固定金利1%で1000万円を5年間借りていれば支払額は、約1026万円になる。物価が上昇していれば、借金の返済額の方が少ないのだ。日銀が長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度へ引き上げ住宅ローンが上昇すると懸念されているが、金利が上がるからといって慌てて間違った行動をしないで欲しい。

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インフレ時のお金の構造をよく理解する

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住宅ローンが上がってしまう前に繰上げ返済を考えている方もいるが、それは時期尚早だ。いままで解説した通り、インフレ時の借金は優れた金融戦略なのだ。また住宅ローンは、他のローンよりも金利が低く設定されていることも忘れてはいけない。


例えば退職金で住宅ローンを返済してしまい、年金生活の資金が足りずに借金をしたら、その借金の金利の方が高いのだ。お金の使い方を間違えると経済的に破綻してしまう。日本では、長い期間物価が上昇していなかったが、世界的なインフレを受けて日本でも物価が上昇している。


インフレ率を考えずにお金を使っていては、家計が破綻してしまう。多くの方は、ここを間違えているので、お金を増やすことができないのだ。インフレ率を考えて、物価の上昇と同じように金額が上がる金融商品で資産運用をして、インフレ時には有利に働く借金はそのまま保有するということだ。くれぐれも間違いのないように。インフレ時は格差がおこりやすい。お金の構造を知っている人はお金を増やすことができ、お金の構造を知らない人は、お金を減らしてしまうのだ。

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投資をしてお金を減らす人の特徴


投資を安全に家計に取り入れる手法を筆者は教えている。つまり投資で大儲けするのではなくインフレの対策として投資を取り入れ、尚且つ人生の「夢」を実現させるための家計を作るお手伝いをしている。ところが家計相談の現場では、赤字続きなのに投資額を増やしている方や生活防衛資金が十分ではないのに預貯金せず投資だけをする家計も見てきた。そういう方ほど投資をしたのにすぐに成果が得られないので不安を感じてしまい、さらに高リスクな投資に走るという方もいる。


投資は「魔法」のように増えるものではない。投資を始めたら必ずプラスになるということもない。特に長期投資では、十分に増えるのに相応の時間がかかる。その間マイナスになることもあるので、マイナスになった時に使えるお金として生活防衛費を預金で準備することは必須だ。生活防衛費が十分にない方は、まずは預金を優先しなければ、家計に投資を取り入れることでさらにお金を減らしてしまう危険があるのだ。

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投資してはいけない資金で投資してしまう人の心理


他にもよくあるのが、あと1~2年後の教育費のために投資をしたいというご相談だ。教育費を投資で増やす場合は5年以上の期間がなければ元本保証の金融商品で運用すべきだ。投資で資産を減らすこともある。もし、2年後の大学費用のために300万円準備しているのならば、それはそのまま元本保証の金融商品で運用して欲しい。受験費用と入学時の学納金で300万円くらい使ってしまうケースも考えられる。


そもそも投資で失敗してしまう方は、投資に回してはいけない資金を投資に使ってしまうからだ。2年後の教育費というのは、どう考えても投資に回してはいけない資金だ。ところが「お金が足りない」という恐怖心があると、なぜかリスクが見えなくなってしまうのだ。リスクを取る前に、毎月の支出の見直しをして貯蓄額を上げることの方が重要だ。


脳科学的にも感情的になってしまうと、理性的な脳の働きが落ちるので、思考力や理解力も低下してしまうのだそうだ。あと2年後に迫った大きな出費を目前として、焦る気持ちを切り替えて欲しい。面倒だと思わずに、まずは生命保険料、通信費などの固定費を見直し、次に日々の支出となる変動費を見直してみよう。こうした「少し面倒」と思われる作業をすることで、思考系の脳が活性化して、感情も安定してくる。過去に家計指導をした方達を見ても家計管理をすることで、不安が安心に変わった方も多い。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/