武勇/純米吟醸 なごやか
数々の魅力的な酒場を手がける大野尚人さんは、仕事柄いつもアンテナを張り、さまざまな酒を口にしたいという。
しかし、プライベート、つまり普段の自腹酒(じばらざけ)は一貫して「心身にスッと入ってくる酒がいい」と教えてくれた。
「特に家酒では、味を探らなきゃならないような難しい酒ではなく、なにも考えずに飲めるものがいいですね。酒場の仕事が終わった後は、お客さんが想像する以上に疲れているんですよ(笑)。なので、ずっしりと重厚すぎる酒も飲みたくない。ゆる~く酔える酒がベストです」
たとえば、と大野さんが挙げてくれたのが、長年愛飲しているという日本酒「武勇」。この銘柄は、米の旨味たっぷりの質実剛健をイメージさせる男っぽい酒だが、数あるラインアップの中でもとりわけ軽快な「純米吟醸 なごやか」は、仕事後の晩酌に最適だと推薦する。
「素直に旨いと感じる日本酒です。武勇の定番酒よりもスッキリと後味が軽く、どの温度帯でも楽しめるので、疲れた身体でもラクに飲み続けられます。飾り気がなくて地味なところがいい。1日の終わりに飲むとホッとします」
つまみは、凝った料理よりも、素材を活かしたシンプルなものがいい。大野さんいわく、つくり置きの惣菜やぬか漬けなど、ありふれた家庭の味とよく合うというが、あえて特筆したいお気に入りのおともは厚切りにしたかまぼこ。化学調味料などの添加物を一切使用していない「鈴廣 特上かまぼこ」をひいきにしている。
「かまぼこに目覚めたのは『鈴廣』がきっかけです。嘘がない本物の旨味とプリッとした歯ごたえに唸りました。このかまぼこと『純米吟醸 なごやか』があれば、言うことありません」
気持ちよく酔えて「すぐに眠くなる」と、大野さんは笑いながらうれしそうに付け加えた。
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大野さんがかまぼこに開眼したきっかけの「鈴廣 特上かまぼこ」は、完全無添加。なめらかな口当たりで、弾力のある歯ごたえもいい。生わさびや上等な海苔とともに。
大野尚人
1980年生まれ。「酒亭 沿露目(ぞろめ)」「酒肆一村(しゅしいっそん)」の他、2022年開業の「酒房蛮殻」「手盃(てっぱ)蛮殻」「可否灰殻(カフェハイカラ)」を経営。
酒房蛮殻
住所:東京都中央区月島1-25-7 1F(2F「手盃蛮殻」)「可否灰殻」
TEL:03-5859-5363
※この記事はPen 2023年2月号より再編集した記事です。