眠ると身体が透明に!アマガエルモドキが透ける秘密が解明された

  • 文:青葉やまと
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眠ると身体が透明になり、内臓が透けて見える——。こんな不思議な特徴を持つカエルの謎が、最新の研究により解明された。

中南米に分布するアマガエルモドキ科のグラスフロッグは夜行性であり、日中の大部分を木の上で寝て過ごす。捕食者に狙われてしまいそうだが、彼らには秘密兵器がある。半透明の皮膚を生かし、木の葉に擬態して敵の目をごまかすことができるのだ。

活動中の姿は、よく見かけるアマガエルとさして変わらないようにも見える。背中側が緑色で、腹部が白くなっている。だが、無防備になる睡眠中になると身体の色が変わり、透明に変化して外敵から発見されにくいようになっている。

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お腹は最大で95%の透明度に

とくに透明な腹側から見ると、各種の内臓がくっきりと透けて見えるほどだ。英BBCは、グラスフロッグの身体全体として、最大で61%まで透明になると紹介している。

科学ニュースサイトのサイエンス・アラートによると、特に透明な腹部に限定した場合、可視光線の90〜95%を透過するほどの透明度の高さとなる。

ニューヨークのアメリカ自然史博物館のジェシー・デリア研究員はBBCに対し、「このカエルをひっくり返せば、心臓が鼓動している様子を観察できます。皮膚を透過して筋肉が見えますし、(内部の空洞である)体腔はまさに透明です」と解説している。

内部が見えるほど透明な生物というだけでもめずらしい。サイエンス・アラートは、陸上生物としては透明な動物は極めて稀だと指摘している。

これに輪をかけて、覚醒時と睡眠時で透明度が変化するという点もまた興味深い。その秘密は、血液にあるのだという。

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血液の成分を回収して透明になっていた

デリア研究員は、米デューク大学のカルロス・タボアダ博士(生物学)と共同で、このしくみを解き明かした。研究の成果をまとめた論文が12月22日、科学ジャーナルの『サイエンス』に掲載されている。

デリア研究員たちは、グラスフロッグの活動中や睡眠中など複数の状況において、身体の各所に複数の波長の光を照射し、その透明度を計測した。すると、血液中に含まれる赤血球の濃度が、活動時と睡眠時で異なることが判明した。

グラスフロッグは睡眠中、血液の成分を肝臓にため込み、身体の透明度を高めているようだ。デリア氏はBBCに対し、次のように説明している。

「彼らはどうにかして赤血球の大部分を肝臓に貯蔵し、血しょう(血液の半分を占める液体成分)から取り除いているのです」

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赤血球を自在に保管できる不思議

研究によると睡眠中、赤血球の最大89%が肝臓に集まるのだという。このため肝臓は、2倍近くにまで膨れ上がる。

そして活動時間である夜が訪れると、再び赤血球を血流内に解き放ち、活発な運動に備える。赤血球は酸素を運ぶため、アクティブな夜間は血液中に再放出することで運動が可能となる。

デリア研究員は、自在に血液の成分をコントロールし、かつ問題を生じないグラスフロッグの不思議な力を、「スーパーパワー」と表現している。

一般には生物の血液が滞留した場合、赤血球が凝固し、血栓を生じるおそれが高まってしまう。だが、グラスフロッグは問題なく赤血球の貯蔵を日々行っている。

グラスフロッグが血栓を予防する特別なしくみを備えているかは、現時点で未解明だ。しかしデリア研究員らは、ヒトの医療の進歩に何らかのヒントを与える可能性もあると期待しているという。サイエンス・アラートもまた、血栓症や脳卒中の予防への道を開く可能性があると指摘している。

脳卒中はかつて日本人の死因の1位を占め、現在でも4位となっている。不思議なカエルの秘密をヒントに、多くの不幸な疾患を未然に防止できる日がいつか訪れるかもしれない。

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【画像】眠ると身体が透明に!アマガエルモドキが透ける秘密が解明された

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