10年住んだアメリカから日本へ戻ったのが2017年の夏。その後サウナのためにフィンランドにばかり行っていて、アメリカにはずっと「ほったらかしでごめんね!」という気持ちでした。そうこうしているうちにコロナ禍になり、まったく海外へ行けない状態になって3年。今年の夏くらいから海外へ行くハードルが少しずつ下がってきたので、思い切ってずっとごめんね状態だったアメリカへ5年ぶりに行くことに。
今回の渡米で一番楽しみにしていたのはクラフトビール。クラフトビール文化豊かなアメリカに住んでいたのに、その頃はまったく興味がなくて日本に帰国してからハマったのでクラフトビールを飲みまくるぞ!と決めていました。
今回行ったのはアメリカ第3の都市、シカゴです。シカゴは全米で一番ブルワリーの数が多い都市でもあります。でもニューヨークやカリフォルニアのクラフトビールは日本にたくさん輸入されるのですが、シカゴのビールはあまり日本にないんです。それもあって、今回長く住んだシアトルではなく、シカゴへ行きました。(こうなると、次はシアトルほったらかしでごめん!になっちゃいます)
日本ではめったに売っていなくて、お土産でもらうしか入手方法がないブルワリーを中心に行ってきました。最初はMORE Brewing Company。ここはわたしが一番行きたかったブルワリー。なぜかというと、日本にも入ってこないわ、アメリカ国内でもこのブルワリーに直接行く以外にビールを買える場所がないという尖りまくりのブルワリーなんです。そしてめちゃくちゃおいしい。スタウトは一口飲むと味の宇宙がパァ〜っと広がるようなそんな世界を見せてくれるビールです。
シカゴのちょっと郊外にあるんですが、どっかーん!工場のようなでかさです。中はビアパブレストランと併設して醸造所があります。タンクの数と樽の数がすごい!
ビールで樽?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、ビールを作った後にウィスキーやシェリー酒などの樽に入れて熟成することをバレルエイジドといいます。日本ではスペースの問題などであまりバレルエイジドビールがないのですが、他のアルコールの樽にできあがったビールを入れることで、味が組み合わさってさらにおもしろい味が生まれるのです。
次はHalf Acre Brewing。こちらも日本では売っていないけれど、アメリカでは大人気のブルワリー。Daisy Cutterというペールエールが代表作です。朝11時、開店と同時に行ってきたんですが、朝からこんなお宝ビールを飲めるなんて働いている世の中のみなさま、スイマセン!の思い……。
トイレに行こうとドアを開けると、こちらもどどどーっと樽が並ぶ場所に通じていました。
やっぱりアメリカは樽レベルがすごいです。定番も作りつつ、いろんな実験をしながら新しくておもしろいビールに挑戦する姿勢は、やはりアメリカのクラフトビールは楽しい!と思わせてくれるものです。
さて、3つ目のブルワリーはGoose Island Brewingです。ここのビールは日本にもたくさん入っているので、聞いたことがある方もいるかもしれません。では、そんなメジャーで日本でも手に入るブルワリーになぜわざわざ?ですよね。わざわざ行く理由があるのです。
Goose Island Brewingでは、年に一度だけバーボン樽で熟成した特別な「Bourbon County Stout」というバレルエイジドビールを限定で出します。毎年違った味がリリースされるので、毎年「今年はどんなの出してくるんだろう?」とビールファンが1年間楽しみにしている超レア限定ビールなのです。
もちろん日本には誰かの手土産以外ではほぼ入ってくることもなく、アメリカにいても手に入れにくいビールなのです。ちなみにバレルエイジドという熟成方法を始めたのがここGoose Island Brewingなのです。1992年に1000回目の醸造をした時に記念で遊びで樽にスタウトを入れてみたらものすごくおいしいビールができちゃったことから、年に一度レアビールとして毎年リリースすることになったそうです。(ブルワリーツアーで仕入れた豆知識です)
というわけで2022年の夏だったので、前年2021年のBourbon Countyを飲ませていただきました。ひゃーーーという感想です。こんな深みのあるスタウトひゃーーーです。シカゴの人たちはこれをふらっとブルワリーに来て飲めちゃうんだから、そりゃ舌が肥えますよ。
ここでしか買えないボトルをビールファンの友だちにお土産で買いました。渡したら価値がわかってくれる人だったので、すごくよろこんでくれました。
さらには自家醸造の専門店もいくつかあります。こちらの写真はモルトの量り売りの売り場。すごい数です。
日本では違法なんですが、アメリカは自家醸造が合法です。日本ではウン百万の設備投資をして、免許をとって、やっとはじめてビールをつくることができるのですが、アメリカでは自分でビール作りを家でしていて、ビール作りを仕事にする前に十分な練習をしてからプロのブルワーになる人もたくさんいます。だからビール文化も進んでいるのだと思います。
酒屋さんに行ってみると、圧巻のクラフトビールの取扱量。写真は1列しか写ってないのですが、これがフロアいっぱいに続いています。舌が肥えるわけです。
こんなふうにクラフトビールが身近にあって、自家醸造にもチャレンジできて、普段からトップクラスのブルワリーで飲めたら、クラフトビールレベルが上がるのは自然なことですね。日本も新しいブルワリーが増えてきましたし、おもしろいビールを作っているブルワリーも増えてきました。日本でもクラフトビールを作る側も飲む側もみんなでレベルをあげていけるといいなと思いました。
来週からロサンゼルスとシアトルへ行くので、またクラフトビール飲みまくってこようと思います!
文筆家、イラストレーター
コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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