PCゲーム配信プラットフォームSteamを運営するValveのポータブルゲーム機「Steam Deck」の国内発送が12月17日に開始されると発表された。
日本・韓国・台湾・香港では、正規代理店のKomodoが販売を担当するSteam Deck。海外では2022年2月に出荷が開始されており、当初はコロナ禍での部材調達の遅れなどもあり出荷に遅れが見られていたが、その後、生産量が回復し、前倒しでの出荷が行われていた。国内では今年8月に予約が開始され、予約者には12月1日から注文確定のメールが順次送付されている。
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Steam Deckは、7インチのディスプレイの両脇にコントローラーを備えた携帯ゲーム機だ。最近ではNintendo Switchスタイルと言えばわかりやすいだろうか。同様のスタイルのゲーム機はPSPやPS Vitaなどもあり、とくに珍しいものではないが、PCゲームに特化しているのが目新しいところだろう。
PCゲームに特化したデバイスは中国で盛んに発売されており、GPD WIN 3やONEXPLAYERやAYANEO、AOKZOEなどは日本でもリリースされている。こうしたPCゲーム機は、基本的にWindows 11を搭載している。要するに、小さなゲーミングPCだ。
ゲーミングPCに求められる高性能を小さな筐体に詰め込んでおり、その処理性能を活かしてキーボードやマウス、そして外部ディスプレイを接続すれば、日常的に使うPCとして十分な能力を持つものも少ない。このため価格も通常のPCと大差はなく、安いものでも15万円前後が相場になっている。
これに対して、Steam DeckはWindowsではなく、Linuxベースの独自OSであるSteamOSを搭載している。プロセッサはAMDのZen 2ベースのカスタムAPUで、GPUもAMDのRDNA2となっており、ゲーミングPCとしてみると物足りなさは否めない。
ただその分、最安モデルが5万9800円と比較的安価で、携帯PCゲーム機のエントリーモデルと言っていいだろう。携帯PCゲーム機に興味はあっても、15万円近い機種を購入するのはハードルが高いと感じている人には、とりあえず手に取ってみる機種として手頃な選択肢になりそうだ。
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これまで日本はPlay StationやNintendo Switchなどをはじめとする家庭用ゲーム機が非常に強く、PCゲームはニッチな市場となっていた。しかしながら、日本のゲーム市場に特化したコンサルタント会社カンタンゲームズのCEOで、ゲーム市場アナリストとしても活躍するセルカン・トト氏によると、日本のPCゲーム市場は近年急拡大しているという。(参考:https://www.serkantoto.com/2022/11/06/japan-pc-gaming-market/)。
トト氏の角川アスキー総研のファミ通ゲーム白書2022に基づくレポートによると、日本のPCゲーム市場は2018年から2021年の3年間で約2倍の規模に成長しているとのこと。PCゲームのユーザー数は1600万人で、2015年の1100万人から45%も増加したとしている。
この急増の背景には複数の要因が考えられるが、主なものではコロナ禍での巣ごもり需要によるゲーマー層の拡大、日本でのPlay Station 5の供給不足による、一部のハードゲーマーのPCゲームへの移行、SteamやEpicストアなどのPCゲームプラットフォームの普及などが挙げられている。特に日本では、2017~2018年に登場した韓国発のバトルロイヤルゲーム・PUBGによりPCゲーマーが増えたようだ(現在はモバイルゲームもリリースされているが、当初はWindowsのみだった)。
最近の大型タイトルは、家庭用ゲーム機と同時にSteamでPC版がリリースされることも増えてきた。また、定期的に開催されるSteamでのセールでは数百円でゲームを買えることも少なくない。
こうした状況でのSteam Deck発売は、国内PCゲーム市場の更なる追い風となるだろう。家庭用ゲーム機市場を脅かすほどの存在にはなれないかもしれないが、2023年は携帯PCゲーム機、そしてPCゲーム市場に注目したいところだ。
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