グラフィック・空間・映像・アートピースなど、さまざまなアプローチで制作活動を行うアーティストYOSHIROTTEN。
この連載では「TRIP」と題して、古くからの友人であるNORI氏を聞き手に迎え、自身の作品、アート、音楽、妄想、プライベートなことなどを織り交ぜながら、過去から現在そしてこれからを、行ったり来たり、いろんな場所を“トリップ”しながら対談します。
ホリデーシーズンの銀座を彩る、GINZA SIXの展示「WARMEST WISHES」
——今回はNORIさんに代わって、連載担当ライターの穂上がお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
YOSHIROTTEN よろしくお願いします。
——現在、GINZA SIXに展示されているアートモニュメント「WARMEST WISHES」について。展示は11月11日からスタートしているので、すでにご覧になっている方もいらっしゃると思いますが、改めて作品をつくるに至った経緯など、詳しく教えていただけますか?
YOSHIROTTEN はい。毎年、ホリデーシーズンにGINZA SIXでやっている企画なんですけど。1階のエントランス前に、その年ごとに選ばれたアーティストのアートモニュメントを置いて、ホリデーシーズンの銀座を盛り上げるという企画で、今年は自分を呼んでいただきました。
この企画がスタートする前に、GINZA SIX制作の「銀座は夜の6時」っていうポッドキャスト番組があって、そのビジュアルをYARが担当していたりというつながりはあったんですが、それ以外の企画でご一緒するのは、はじめてでした。GINZA SIXの2つのエントランススペースと、館内に入るまでの地下連絡通路を使って、ホリデーシーズンのための展示と装飾ができないか?という依頼です。
——なるほど。
YOSHIROTTEN 銀座中央通りの正面エントランス側に、2つのモニュメントを設置しています。
YOSHIROTTEN 最初、GINZA SIX側から、2022年のホリデーシーズンのテーマ「WARMEST WISHES」というコピーをもらっていて。
「WARMEST WISHES」っていうのは、海外の方が感謝祭とかクリスマスとか、ホリデーシーズンに入ると手紙とかメッセージカードとかの結びによく使われている言葉なんですね。「あたたかい日々を願っています」とか「心を込めて」みたいな意味で。GINZA SIXの人たちとも、今回の展示を見て、あたたかい気持ちになって、ホリデーを楽しむきっかけになったらいいですよねっていう話をしていて。
僕もこのコピーはすごくいいなと思って、そこからイメージしていって、最初にまずキービジュアルをつくりました。
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YOSHIROTTEN キービジュアルは、十人十色、人それぞれにいろんな“色”を持っていて、それぞれの人達が、思い思いに寄り添いあっていく、そういうイメージでつくっていこうかなと思って。
それは人と人であったり、人とモノであったり。たとえば「僕は赤、あなたは緑」みたいにくっつきあっていくんだけど、それがはっきりと「赤」「緑」と分かれているんじゃなくて、寄り添いあうことによって、融合していく。それがこのキービジュアルの、グラデーションの表現に至ったところです。
——キービジュアル、すごくYOSHIROTTENさんらしい表現だなと感じました。
YOSHIROTTEN GINZA SIXに集まってきている人たちも、通りすぎていく人たちも、銀座の街はいろんな人達が集まる場所だから、なにかそこに思いがあって、いろんなグラデーションが繋がりあっていくっていうことをテーマに、ビジュアルにしていこうっていう思いで、このグラフィックをつくっていきました。
そこから、このグラフィックを店内で展開していったり、アートモニュメントをつくっていこうということになっていったんです。
——なるほど。
YOSHIROTTEN どうやってこの表現を形にしていくかっていうところで、色々と試行錯誤しました。実際に行って、展示を見てもらったらわかると思うんですが、不思議な素材感があるので、写真で見るのとはまた全然違うイメージだと思います。
——これはどんな素材が使われているんですか?
YOSHIROTTEN アクリルに今回のグラフィックで使用した色たちをプリントしたものを貼って、さらにその上から、レンチキュラーっていう液晶のなかに入っているレンズのような、透明のシートみたいなのがあるんですけど、それでカバーしてるんです。レンチキュラーを貼ることで、色と色が融合するっていうのが、フィジカルでも起きる。その現象を使って、街の光だったり店舗から出ている光だったりも吸収したりするから、時間帯や状況によって、見え方も変わるというモニュメントです。
——モニュメントの下からライティングされている?
YOSHIROTTEN そうです。アクリル板の下からライトが放たれています。
——実際の制作はどんな感じで進めていったんですか?
YOSHIROTTEN 最初はCGを使ってシュミレーションして、提案していきながら、じゃあ実際にそれをどう立体物として形にしていくかというのを、展示やイベントの企画を手掛けている博展さんと、美術系の装飾とかパブリックアートなどを手掛けている光伸プランニングさん、僕たちがいつもお願いしている美術会社weedsさんの3社で協力しあって進めていきました。実際に、オブジェクトの下からライトを当ててみるとどう見えるのか?とか、展示前に色々と検証したりして。
——立体物にしてみて、苦労したところはありましたか?
YOSHIROTTEN かなり仕上がった状態でテストしたときはわからなかったことが、実際に銀座に置いてみたら気づくことあって、そこが難しかったですね。
3日間くらいかけて、深夜に運んだんですけど、置いてみると思ってたのとは違ったりして、急遽、変更のお願いをしたり。大変な作業なんですけど(笑)。
以前からずっとパブリックアートをやってみたいと思っていたので、今回実現したのは嬉しかったですね。今後は永続的なパブリックアートにも挑戦してみたいなと思ってます。
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YOSHIROTTEN 実際に見に行ってくれた人からは、「いわゆるのクリスマスツリーじゃないけど、クリスマスツリーに見える」って言われました。
——私も最初に見たとき「クリスマスツリーだ!」と思いました。
YOSHIROTTEN 一般的にイメージするクリスマスツリーとは違うけど、見てくれた人にはクリスマスツリーに見える。そういうものを作れてよかったなと。あとはクリスマスのプレゼントの箱が、積み重なっているみたいなイメージ、映画『ホーム・アローン』の劇中でよく見た光景みたいなところも意識しています。
——まだ実物を見に行けていないので、クリスマスが終わる前に行ってみます!
YOSHIROTTEN はい、是非!夜がとくにおすすめです。
WARMEST WISHES
展示場所:GINZA SIX 銀座中央通り 正面エントランス、地下連絡通路
住所:東京都中央区銀座6丁目10-1
開催期間:開催中〜2022年12月25日まで
https://ginza6.tokyo/gsix2022/christmas_art
連載記事
グラフィックアーティスト、アートディレクター
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR