【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『偶然の散歩』
「日常」と「奇跡」はかけ離れた言葉だと侮るなかれ。このエッセイを読むと、いや日常の中にこそ奇跡は潜んでいると思えてくる。著者は京都を拠点に独立研究者として数学をテーマにした講演活動を行ってきた。デビュー作『数学する身体』で小林秀雄賞を受賞。数学的な眼差しで日常を解析すると、自分の立つ頼りなげな座標軸も遥かな宇宙と連なっている。要するに、物事を量る物差しのスケールが違うのだ。歩くことは、身体の知性を鍛える。本物の知性とは、散歩する足取りで永遠を旅する技術のことかもしれない。
※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。
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