1. VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)
ヒストリーク・222
1977年に発表した伝説的な記念モデル「222」を、現代の性能で復刻。その謎めいた数字は「創業222年目」を表す。「ジャンボ」の愛称で知られたファーストモデルと同じケース径で、そのトノー型ケースと一体化したブレスや溝付きベゼルが逆にいま新鮮に映る。ブランドを代表するコレクション「オーヴァーシーズ」が掲げる“スポーティシック”の原点が見事に表現された。
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2. HUBLOT(ウブロ)
ビッグ・バン インテグレーテッド イエローゴールド
サテン&ポリッシュで立体的な造形に仕上げたイエローゴールドの躯体に、垂涎のエンジンがマットブラックのスケルトンダイヤルからのぞく。搭載するのは自社製のフライバック・クロノグラフ・ムーブメント「ウニコ」だ。チタン製のH型ビスでベゼルを留めたケースと三連ブレスは、ゴールドならではのラグジュアリーな一体感と精悍さを湛える。
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3. PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)
トンダ PF マイクロローター
プラチナ製マイクロローター装備で厚さを3㎜に抑えた、新開発の超薄型ムーブメント「PF703」を搭載。ケース厚も7.8㎜で、ゴールド一体型のラグジュアリー感と快適な着け心地、すっきりと美しい見た目をすべて共存させている。バーリーグレインモチーフのマットなギョーシェ彫りを施したグレーカラーのダイヤルが、ローレット加工ベゼルに映える。
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近年の高級腕時計シーンで目立つのが、ケースとブレスレットが一体化したデザインだ。なかでも高い注目を浴びるのが、イエローゴールドやローズゴールドといったゴールド素材を全面に用いたスタイリッシュなモデルだ。そもそもゴールドに限らずメタルブレスレットの腕時計は、素材を問わずケースとの境目を意識させないデザインの巧拙が美醜を分けるものだ。レザーやラバー、ファブリックのストラップであれば、コーディネートのセンスが活きるが、ブレスレットでは視線をシームレスに流す造形を心がけないと、メタル素材特有のボリューム感が悪目立ちして、“重たい”印象を与えてしまう。逆に優れたデザイン性を有すれば、手元に洗練さと抜群の存在感を付与してくれる。
かつての日本では、ゴールドのブレスレットモデルは富や権力の象徴のように思われがちで、敬遠されることも珍しくなかった。遠目にはステンレス・スチールと差
が出にくいホワイトゴールドが人気だったのも、そのせいだろう。
一方、最近のゴールドモデルではピンクやレッド、ローズゴールドが人気を牽引すると同時に、王道のイエローゴールドが復権している。さらにデザイン的な特徴を挙げると、節目が美しいサテン仕上げをベースに、ところどころにポリッシュを効かせて磨き分けるモデルが市場を牽引している。ギラギラとこれみよがしではなく、一体型デザインですっきりと、あくまでも自然体に。そんな姿勢こそが現代のラグジュアリーの表現といえるのであろう。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。