シングルモルトのパイオニアとして知られるグレンフィディックは、スコッチを象徴する存在として愛され、常に世界のトップシェアを維持し続けているウイスキーだ。創業から5世代目となるいまも、一貫した一族経営を続けているグレンフィディック蒸溜所では、昔から変わらぬ真摯なウイスキーづくりと、常に革新を求めるパイオニア精神が、色濃く受け継がれている。そんなグレンフィディックの魅力を知り尽くした、バーテンダーであり、SG グループ・ファウンダーの後閑信吾が、ウイスキージャーナリストの西田嘉孝とミュージシャンの尾崎裕哉をゲストに迎え、グレンフィディックの愉しみかたについて語りあった。
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シングルモルトの聖地、スペイサイドの自然に育まれたウイスキー
グレンフィディックが、自社の蒸溜所でつくられたモルトウイスキーのみをボトリングしたものを、シングルモルトウイスキーとして世界で初めて販売したのは、1963年のこと。それから約60年のあいだ、常に世界のトップシェアを維持し続けているグレンフィディックは、まさにシングルモルトのパイオニアと呼ぶにふさわしい存在だ。
後閑:1960年代は、個性の穏やかなグレーンウイスキーでモルトを割った、ブレンデッドウイスキーが全盛の時代だったので、個性が際立つシングルモルトを世界に打ち出していくことは、とてもチャレンジングな試みだったはずです。
彼がまだ駆け出しだった2000年代初頭にも、そんなグレンフィディックのパイオニア精神を、実体験として目の当たりにしたことがあるそうだ。
後閑:僕がバーテンダーを始めたばかりのころに、グレンフィディックがシングルモルトを使ったカクテルを提案しているのを見て、当時は誰もそんなことを思いつかないほど新しいことだったから、とても驚いた覚えがあります。
西田:僕も同じころにウイスキー専門誌でキャリアをスタートしましたが、当時はそれこそ“ウイスキー冬の時代”と呼ばれるほど、ウイスキー業界全体に強い向かい風が吹いている状態でしたからね。いまとなってはシングルモルトも、それを使ったカクテルも世界的に人気ですが、時代を切り拓いていくグレンフィディックらしさが垣間見えるエピソードですね。
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三角形のボトルで表現する、唯一無二の味わいへのこだわり
グレンフィディックのチャレンジスピリッツは、そのボトルの形にも表れている。三角形は、ウイスキーをつくる上でもっとも重要な『麦芽』『水』『風土』という3つの要素を表しており、ロンドンの地下鉄のロゴも手がけたといわれる、ハンス・スフレーヘルによるデザインだ。このシンプルでアイコニックなデザインは、グレンフィディックがスコッチの聖地スペイサイドの自然に育まれたウイスキーであるということを表現するのと同時に、常に比類なき個性を誇る、唯一無二のウイスキーであることを高らかに謳っている。その味わいに、3名は触れていく。
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グレンフィディックの個性の奥深さ
尾崎:華やかでフルーティな味わいだから、ストレートでも飲みやすいですね。これならバーでも自宅でも、シーンを問わず愉しめそうです。
後閑:僕が若手のころは、よく先輩のバーテンダーが『グレンフィディックは水割りがうまい』と言っていました。もちろんストレートやロックで飲んだ時のバランスの良さと完成度の高さも特徴ですが、少し加水しただけでもいろんな表情を見せてくれるお酒なので、水割りを試してみると、グレンフィディックの個性の奥深さをさらに実感できるはずです。いくつか簡単にできるバリエーションをお出ししてみますね。
まず後閑が出したのは、「グレンフィディック 12年 スペシャルリザーブ」を、ミネラルウォーターで薄めに割ったもの。
後閑:実はこれ、焼酎によく使われる「前割り」の手法で用意したもので、長い時間をかけて水とウイスキーを結合させたことで、さらにまろやかな口当たりに仕上がっています。
西田:こうやって薄めに割ってアルコールのパンチを抑えてあげると、グレンフィディックの飲みやすさとバランスの良さがさらに強調される印象ですね。やっぱりこのお酒、完成度が高いんだなーって、改めて実感させられます。
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後閑:次は、時間をかけながらゆっくりと加水していったものです。割り方や加水の度合いによって、出てくる味わいやフレーバーの表情が違ってくることを実感していただけると思いますよ。
尾崎:本当だ! ストレートや普通の水割りともまた印象が変わりますね! 同じウイスキーでも、これだけ表情が変わるって、本当に面白いです。
後閑:それだけ複雑な要素を併せ持った、懐の深いグレンフィディックだからこその愉しみかたともいえますよね。グレンフィディックと水だけでも、本当にいろんな愉しみかたができます。
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シングルモルトの愉しさを教えてくれる、完成度の高い調和の取れた味わい
グレンフィディックの個性の奥深さを体感した3名だが、それを愉しめるのも創業当時からこだわりの製法を守り続け、レベルの高い味わいが実現出来ているからこそ。
西田:僕がウイスキーの仕事を始めた当初は、いまほど多くの種類のシングルモルトウイスキーが出回っていたわけではありませんでしたが、当時から流通量が多くて比較的手に入りやすかったグレンフィディックは、僕にシングルモルトを味わう喜びや愉しさを教えてくれた存在でした。そもそも、いろんな蒸溜所の個性を比べるっていう愉しみかた自体、シングルモルトの誕生によってもたらされた価値観。シングルモルトを世界に広げたグレンフィディックが、その愉しみかたの扉を開いてくれたとも言えますよね。
さらに言うと、ウイスキーを好きになっていろんな経験を積んだあとも、何度でも戻ってきたくなるのがグレンフィディックの奥深さだと思います。いつ飲んでも、いろんな個性がとてもバランスよく調和していて、飲みやすくてあとを引く、完成度の高い味わいにはいつも驚かされます。
後閑:何十年も世界最大の販売量を誇りながら、いつでも変わらずに完成度が高くて、バランスが取れた味わいを維持することは、単純に考えてもすごいことなんです。
グレンフィディック蒸溜所では、創業当時から変わらぬ製法を守り抜く糖化職人や蒸溜職人のほかに、銅器職人や樽職人も常駐させており、あらゆる工程において、グレンフィディックならではのオリジナリティあふれるウイスキーづくりが実践されている。
また、ポットスチルの形状や加熱方法などを創業当時から変えずに守り続けているところも特長的。生産量を増やす際にも、スチルの形状を大きくするのではなく、単純に同じ大きさのスチルの数を増やしていくという方法論になる。その結果、グレンフィディックはポットスチルの数がスコットランドでも最大級だと言われている。
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尾崎: “シングルモルトと言えばグレンフィディック ”みたいなところまでは聞いたことがあったんですが、今日、さまざまなお話を聞いて、グレンフィディックにますます興味がわきました。
そして、いろんな飲みかたを試してみて、本当にグレンフィディックの愉しみかたが広がりました。僕はよく、友達とウイスキーを持ち寄って宅飲みを愉しんでいるんですが、今度宅飲みで友達が集まったときに、今日教えてもらった知識を披露するのが待ちきれないです(笑)。
味わい、そしてボトル。そのすべてに創業者のこだわりと挑戦の思想を引き継ぐグレンフィディック。ぜひその背景に想いを馳せながら、愉しんでいただきたい。
尾崎裕哉●1989年、東京都生まれ。2歳で母と共にアメリカに渡り、15歳までの10年間を米国ボストンで過ごす。慶應義塾大学大学院卒。2017年より音楽活動を開始。20年に1stフルアルバム『GOLDEN HOUR』をリリース。翌21年にEP『BEHIND EVERY SMILE』をリリースし、弾き語りツアーライブ「ONE MAN STAND 2021」を敢行。22年にも同名のツアーを春と秋の2回開催するなど、精力的に活動を続ける。
後閑信吾●1983年、東京都生まれ。2001年にバーテンダーとしてのキャリアをスタート。06年に渡米し、ニューヨークの名門バーでヘッドバーテンダー兼バーマネージャーを10年間務める。14年に自身のバーを上海にオープン。18年には渋谷に「The SG Club」をオープンした。現在は国内外に9店舗を運営し、世界で最も影響力のあるバーテンダーとして知られている。
西田嘉孝●1978年、京都府生まれ。ウイスキー専門誌『Whisky Galore』 やPenをはじめとするライフスタイル誌、ウェブメディアなどで執筆。2019年からスタートしたTWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)では審査員も務める。
グレンフィディック
https://www.glenfiddich.com/jp/
サントリーお客様センター
https://www.suntory.co.jp/customer/
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