ウクライナで発見の壁画、バンクシーが自分の作品と認める

  • 文:松丸さとみ
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ウクライナでの作品を収めた動画(バンクシーのインスタグラム)

がれきで体操をする少女や大人を投げ飛ばす柔道少年

イギリスの覆面アーティスト、バンクシーのものとみられる壁画がウクライナ国内で複数見つかったことが日本でも話題になっていたが、バンクシー本人がこのほど、自身の作品であることを認めた。

バンクシーのものではないかとされた壁画は、ウクライナの首都キーウや、キーウ近郊のイルピン、キーウから北西50キロほどにあるボロディアンカなどで見つかっていた。

ボロディアンカで見つかった絵は、体操のユニフォームを着た少女が逆立ちしている絵と、柔道で少年が大人の男性を投げ飛ばしている絵だ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は柔道をたしなむこともあり、投げ飛ばされている大人は同大統領なのではないかという声もある。どちらも、爆撃によりがれきと化した建物の壁に描かれている。

またイルピンでも、爆撃されて崩れた住居の壁に、首にコルセットを巻いて新体操の競技「リボン」をする少女の絵が描かれている。キーウの独立広場では、「ヘッジホッグ」(ハリネズミ)と呼ばれる、戦車の侵入を防ぐ金属製のバリケードをシーソーに見立てた作品が見つかった。

その後、ホストーメリのアントノフ国際空港近くでは、頭にカーラーを巻いた女性がガスマスクをして消火器を持っている絵、ホレンカでは髭面の男性が入浴している絵、さらにはキーウで、以前からあった男性器の落書きを核弾頭に見立てた絵が、それぞれ見つかっている。

どれもバンクシー作品の特徴である「ステンシル」と呼ばれる技法で描かれており、バンクシーが戦闘下のウクライナに絵を描きに来たのだろうか、と世界中で話題になっていた。

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芸術雑誌に自らの作品と認め、インスタで動画公開

そんななか11月12日、バンクシーは自身のインスタグラムに「ボロディアンカ、ウクライナ」とだけ書いて、逆立ちしている少女の絵の写真を1枚だけ投稿。少なくとも、逆立ちした少女の壁画がバンクシーの作品であることが確認された。


バンクシーが最初にウクライナでの作品を投稿したインスタグラム。逆立ちした少女。

さらにアート雑誌ジ・アート・ニュースペーパーは11月14日付の記事で、バンクシー本人が同誌に対し、ウクライナの壁画は自分が描いたものだと認めたと報じた。合計で7点の壁画をウクライナ国内に描いたという。つまり、前述の作品すべてがバンクシーのものということだ。

その後18日、バンクシーは作品を制作中と思われる自らの姿と、完成した壁画を収めた1分半ほどの動画をインスタグラムに投稿した。「2022年11月」「ホレンカ、ウクライナ」と記された動画で、幼い娘を連れた女性のインタビューも含まれている。女性は、柔道の絵が描かれた壁画の建物は娘が通っていた幼稚園だったと言い、泣きすぎて涙はもう枯れてしまったと話す(動画や作品の写真は現在、バンクシー本人のウェブサイトでも公開されている)。

今回バンクシーが壁画を残した地域は、ロシア軍により特に激しく爆撃された場所で多数の犠牲者が出ており、ボロディアンカやイルピン、ホストーメリの空港などは、一時ロシアの支配下に置かれていた。

バンクシーはこれまでも、戦闘中の地域に赴き、反戦メッセージを込めた作品を残す行動を繰り返しており、「反戦活動家」と呼ばれることもある。2005年には、パレスチナとイスラエルを隔てる通称「分離壁」に壁画を残したほか、2015年には激しい空爆を受けた後のガザ地域で作品を描いた。

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2015年、ガザでがれきと化した建物の扉に描いた作品

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ウクライナでの作品を収めた動画(バンクシーのインスタグラム)

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バンクシーが最初にウクライナでの作品を投稿したインスタグラム。逆立ちした少女。

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2015年、ガザでがれきと化した建物の扉に描いた作品

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