1954年に兵庫県の芦屋で結成された美術家集団「具体美術協会(以下、具体)」。戦前より活躍していた画家の吉原治良を中心に、「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示」すべく、多様な造形表現で1972年の解散まで18年に及び活動を続けた集団だ。その具体が、活動拠点となる展示空間「グタイピナコテカ」を1962年に開館した場所が、大阪中之島。2013年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で、2019年にはパリのポンピドゥセンターで回顧展が開催されるなど、海外でも広く注目される具体の大規模展が、大阪中之島美術館と国立国際美術館の2会場で共同開催されている。
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1983年の構想開始から開館までにおよそ40年を要した大阪中之島美術館は、長い期間をかけて作品収集を続けてきたのだが、その方針のひとつに「大阪と関わりのある近代・現代美術の作品と資料」を掲げている。具体の作品を収集・研究することは必然であり、実際に吉原治良の作品約800点をはじめ数多くの作品を所蔵。開館後の早い段階で大規模な展覧会を行うことを悲願としていた。そして同時に、道路を一本隔てた位置に隣接する国立国際美術館と、いずれ共同企画を実現しようという話もしていた。実際問題としては行政の管轄も異なり、美術館それぞれに指針があるため、巡回展は別として複数の公立美術館での共同企画展というのは非常に珍しい。しかし両館は、中之島を文化ゾーンとして発展させる意志を共有している。館長同士、学芸員同士の打ち合わせを重ね、共同開催の実現に至った。
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設立当初、具体は画家集団だった。そこから「人のまねをするな、今までにないものをつくれ」という吉原の指導のもと、メンバーを増やしながら表現が多様化していった。オリジナルであることにこだわった具体の先駆性と独創性。絵画という枠組みから自由になることを目指すと同時に、絵画を改めて解釈し、解体し再構築する試みが多様な作家によって行われた。そして、吉原は美術のあるべき姿を「人間精神と物質とが対立したまま、握手している」状態であると考え、そのコンセプトに則って制作する作家たちを具体に迎え入れていった。
大阪中之島美術館での展示テーマは「分化」。具体の表現が多様であることは大前提だ。先駆性と独創性の内実に迫るために具体の制作からいくつかの要素を抽出し、「オリジナリティ」にこだわった吉原がどのような表現を受け入れてきたのかが最大限可視化される。一方、国立国際美術館のテーマは「統合」。「絵画」から自由になることを目指し、必ずしも一枚岩ではなく参加作家たちがそれぞれオリジナルであるべく造形は多様化したが、存在感の強すぎるマテリアルを使用したり、徹底したフォルムの破壊を行ったり、俯瞰したときにはいくつかの傾向が見出せる。作家ごとの差異をあぶり出しながら、「統合」を目指す。
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いずれの会場の展示も、隣に置かれた作品との関係性なども考慮しながら、個別の作品を鑑賞すると同時に大きな文脈での展示の解釈にも意識を向けて味わいたい。戦後日本の現代アートの世界で、具体は大きな足跡を残した。二館の展示に足を運び、革新の堆積とも呼びたくなるその物量にも圧倒されてほしい。
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大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画
すべて未知の世界へ — GUTAI 分化と統合
開催期間:〜2023年1月9日(月・祝)
開催場所:大阪中之島美術館5階展示室、国立国際美術館地下2階展示室
[大阪中之島美術館]
大阪府大阪市北区中之島4-3-1(大阪中之島美術館)
TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
開館時間:10時〜17時
※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月(1月2日、1月9日は開館)、12月31日(土)、1月1日(日・祝)
入館料:2館共通券¥2,500、一般¥1,400
https://nakka-art.jp/
[国立国際美術館]
大阪府大阪市北区中之島4-2-55
TEL:06-6447-4680(代表)
開館時間:10時〜17時
※金・土20:00まで
※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月(1月9日は開館)、12月28日(水)〜1月3日(火)
入館料:2館共通券¥2,500、一般¥1,200
https://www.nmao.go.jp/