海を漂うマッコウクジラの姿が、やわらかな光を放つランプに
『カシャロ』
水中撮影機材の開発製造技術をバックボーンに、気鋭のデザイナーたちによる個性的な照明を手がけるブランド、アンビエンテック(Ambientec)。プロダクトデザイナーの松山祥樹を起用した新製品「カシャロ(Cachalot)」は、フランス語で「マッコウクジラ」を指すその名のとおり、有機的なフォルムがやわらかな光を放つポータブルランプだ。
自然界の動物の形態にモチーフを求めた松山は、「生活のなかにある輝きとして、人の心を温め、やすらぎを与える存在になると考えました」と話す。
「海の奥底のほうから一頭のクジラがゆっくりと姿を現して、少しずつ全身が見えてくるというイメージが、真っ暗な部屋の中でふっと優しく光るランプにつながっています。もちろん、クジラの姿をそのまま照明器具にするのではなく、テーブルに置いたりベッドサイドへ持ち運んだりした時に空間を圧迫しないような心地よいサイズ感を、模型をつくりながら探りました。特にクジラをどこまで抽象化するか、目や口のディテールは残しながら、かわいい印象になり過ぎないように穏やかさを表現したくて」
透き通ったマッコウクジラの姿は純度の高いアクリルで実現され、その内側で優しく灯るのはカシャロのために開発された筒状のLED光源だ。繊細なフレームを構造体とし、自然界の生命を感じさせる光となって空間に浮かび上がる。あかりを灯さない日中にも日差しを受けて自然な光をまとい、インテリアオブジェとなって暮らしに豊かさをもたらす。
カシャロの発売を機に、アンビエンテックは、プロの水中写真家や海洋生物学者などの活動を支援するプロジェクトを始動する。優れた技術と造形的な魅力を堪能しながら、地球の環境にも想いを馳せたい。
※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。