【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第162回“スポーツカーを愛する紳士たるもの艶めくべし!とことんカーボンパーツが似合う英国製SUV”

  • 写真&文:青木雄介
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フロントグリルの開口部を27%ほど拡大し、いっそう精悍な顔つきになった。

アストンマーティンのハイパフォーマンスSUVであるDBX707。「707」とはこのクルマの最高出力であり、SUVのなかでは最高クラスに君臨する。乗った結論からいうと長く記憶に残る大傑作ですよ。日常的に使いやすく快適で、ハンサムな上に性能も抜群。なにより707馬力というパワーなくしては語れない。

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カーボン製リアスポイラーとディフューザーを装備。ノーマルとは大きく違う。

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そもそもDBXは、乗り心地が快適で速いSUVという意味ではピカイチの完成度。そこにアストンマーティン流の英国マナーを注入することで、「自分は普段着のダニエル・クレイグかもしれない」と錯覚させられてしまう(笑)。そんなDBXに入れ込んだミスター・クレイグなら、当然このモデルを見逃せるはずがないよね。

英国紳士がとことん惚れ込むだろう乗り味とはなにか。乗ってすぐ違いがわかるのが、新しいターボチャージャーによるトルクなのね。DBXより身軽に感じられるし、ちょっとした加速や追い越しが格別に愉しい。時速100㎞までわずか3.3秒とスーパースポーツ並みに速く、ライバルを圧倒するポテンシャルの片鱗が日常的に体感できるんだ。

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専用にチューニングされたアクティブエキゾーストシステムは室内からも一聴の価値あり。

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さらに驚かされるのがブレーキとアクセルを同時に踏み込むだけで簡単に発動できるローンチコントロールですよ。この機能はあらゆるシーンで「ライバルに実力の違いを見せつけよう」って意図を感じずにはいられないのね(笑)。そしてバックミラーで置き去りにしたライバルを見ながら「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」。そんな機動戦士ガンダムのランバラル大佐の名言をつぶやく姿が容易に想像できる。まぁ、ちょっと英国紳士らしくないかもしれないけどね(笑)

その軽快な乗り味は峠において本領発揮する。ライバルたちとの大きな違いはエアサスのマナーとカーボンブレーキの性能に尽きる。23インチ(オプション)の特大ホイールを履いている割にバネ下重量が適正で、制動性も抜群。なにより路面に対するタイヤの追従性が悶絶するほど素晴らしい。スポーツプラスモードで走ればステアリングもクイックでオーバーステアリング傾向になり、サスペンションの長いストロークを生き生きと感じられる。

初期のランボルギーニ・ウルスのようにクイックな荷重変化で深く沈み込むレース用トロフィートラックのようなワイルドさとはまったく違う。姿勢制御がスポーツカーのように常にフラットなので、クールにふるまうのが基本。そこに決してバタつかない、しなやかな足回りで躍動感のある走りも実現する。おおクレイグ、これですよ(笑)。これぞアストンマーティンのルールであり、彼らが見出した最新かつ独自のマナーであることがわかるんだ。

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アップデートされたセンターコンソールと美しいカーブを描くカーボンパネル。

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マナーといえば匂い立つ本革張りの室内。空調の吹き出し口やシフトパドル、ドアノブに使用された冷たいチタンの触感といったお馴染みのマテリアルに加え、クリアを何度も吹きかけたカーボンパーツにもぐっときたね。ホント似合ってる。スーパースポーツではお馴染みの素材だけど、クリア層に厚みをもたせれば透かしのガラス細工のような高級感が出る。こ
の深みのある艶が、これ以上に似合うSUVはないんだ。

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標準装備のカーボンセラミックブレーキは約40㎏のばね下重量を軽減している。

アストンマーティン DBX707

サイズ(全長×全幅×全高):5039×1998×1680㎜
排気量:3982㏄
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
最高出力:707PS/6000rpm
最大トルク:900Nm/2750~4500rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥31,190,000~
アストンマーティン ジャパン
www.astonmartin.com/ja

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※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。