フランスのルノーがおもしろいコンセプト、「4EVERトロフィ」を発表した。1961年から(だいたい)91年まで生産されたR4LをイメージソースにしたBEV(バッテリー駆動のピュアEV)。2022年10月にパリの自動車ショーでお目見えして、話題を呼んでいる。
4EVER(おそらくフォーエバーと読むはず)は、ルノーと日産自動車と三菱自動車によるアライアンスで開発したコンパクトSUVのためのプラットフォーム(車台)を使う。
「ルノー4は神話です。神話は滅びません。誰からも愛されるクルマです。今日、電気自動車という新しい解釈でもって、いまいちどその大きな世界観を再発見したいと思いました」
ルノーのルカ・デ・メオCEOは、4EVERを手がけた意義をこのように説明している。
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ルノー4は、従来のルノー4CV(日本では53年から63年にかけて生産された日野ルノーでも知られる)と区別するため、ファンからは4L(キャトレルと読んだりする)と呼ばれたりする。
シトロエン2CVの対抗馬として開発され、大きな荷室や使いやすいキャンバストップなど、機能面でははるかに上を行っていた(私見)。2CVとどっちが好きか、なんて議論も1980年代にはクルマ好きのあいだでさかんに交わされていた。
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すこしだけ、ちょっとマニアックな説明をします。
4Lは、合理主義的なフランスの精神がいかんなく発揮されたといえるモデルだった。エンジンとギアボックスは、4CVのものを使用。4CVはリアエンジンの後輪駆動だったので、4Lの設計者は、前後方向を180度変えて、フロントエンジンの前輪駆動とした。
もうひとつ、ユニークなのはサスペンションシステムだ。とりわけスプリングの設計。後輪用は、トーションバースプリングという、一般的なくるくると巻いたコイルスプリングでなく、棒がねじれて同じ働きをする。かつてのポルシェ911も同様のスプリングを採用していた。
車体の横方向に渡した棒状のスプリングは長ければ長いほど、乗り心地がよくなる。4Lの設計者は、そこで前輪と後輪の距離であるホイールベースを、左右で変えてしまった。そうすれば、左右のトーションバーを長くしても干渉しあわないからだ。この形式は、4Lのひとつの発展型ともいえる72年発表のR5にも受け継がれている。
ほかにも、フロントグリルごと開くボンネットや、エンジンの上に置かれて衝突時の緩衝効果をねらったスペアタイヤなど、書くべきことはけっこういっぱいある。なにはともあれ、4と聞いて、クルマ好きはそんなことも思い出すはずだ。
もうひとつ、4Lの魅力は愛らしいかんじのスタイリングにあった。今回の4EVERでルノーがこだわった要素だ。
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台形が4Lのデザインの基本型といえる。日本的にいうと、おにぎりの上のほうだけ取り去ったようなカタチ。そこを4EVERは踏襲している。
加えて、前後長の長いルーフ、グリル一体型のヘッドランプ、台形のリアクォーターウィンドウ、縦型の小ぶりなリアコンビネーションランプ……。これらのディテールにも、現代的なひねりを加えて採用している。
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4EVERトロフィは、かつ、オフロードテイストを盛りこまれている。持ち上げられた車高、未塗装の合成樹脂のイメージを強く打ち出した前後のフェンダーとボディ下部、そして頑丈そうなルーフラックとそこに載せられたスペアタイヤ、といったぐあいだ。
「4EVERトロフィは、将来のコンパクトBEVは、舗装路でもオフロードでも使える機能の高いものということを伝えています」。ルノーのプレス向け資料にはそう書かれている。
おなじかたちになるか、ルノーは明言していないけれど、新世代の「4」を発売する計画は進められているようだ。楽しみに待ちましょう。
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Renault 4EVER Trophy
全長×全幅×全高 4160x1950x1900mm
ホイールベース 2570mm
電気モーター
【画像】
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