スイス時計の最高峰ブランドとして知られるパテック フィリップから、左利き用のハイエンドなグランド・コンプリケーションが登場した。クロノグラフでは最も複雑な機構のスプリットセコンドに加えて、永久カレンダーを搭載。しかもクロノグラフはシングルプッシュ式であり、左側に配置されたリューズのトップを押せば、スタート→ストップ→ゼロリセットの動作を繰り返す。スプリット秒針の操作はその下の角型ボタンで行う。
通常はクロノグラフ秒針とスプリット秒針は完全に重なっているが、この角型ボタンを押すことでスプリット秒針は停止。その一方でメインのクロノグラフ秒針は動き続けており、ラップタイムなどを記録後に、角型ボタンをもう1度押せば、スプリット秒針は先行するクロノグラフ秒針を瞬時に追いかけて再び重なる仕組みだ。この動きから「割り剣」またはフランス語で追いつくという意味をもつ「ラトラパンテ」とも呼ばれる。
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最薄ムーブメントを搭載した「5372P」がベースモデル
もうひとつの複雑機構である永久カレンダーは、周知のように月末はもちろん閏年の2月末も自動判別するため、時計が正しく動いている限り修正は一切不要。6時位置のムーンフェイズも誤差は122年で1日程度という高精度だ。懐中時計の頃からの伝統的な超複雑機構を進化させて併載したグランド・コンプリケーションなのだが、これを左利き用として再開発したのは、2005年からパテック フィリップが着手したクロノグラフの包括的なコレクション拡大の一環という。その出発点となったのは、スプリットセコンドクロノグラフでは最薄のムーブメント「キャリバーCHR 27-525 PS」。これに永久カレンダー機構を重ね合わせた「キャリバーCHR 27 525 PS Q」を2010年に発表しており、パテック フィリップでは最薄となる7.3㎜を実現。このムーブメントを搭載して2017年に発表されたプラチナケースの「5372P」が、今回のベースモデルとなっている。
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視認性が向上した現代的でアクティブなダイヤル
ごくごく簡単に言ってしまえば、この「5372P」を左利き用として180度回転させたのが今回の新作だが、オリジナルのダイヤルはブルーソレイユまたはローズゴールドメッキの単色だったのに対して、新作ではカラーリングを一新。ダイヤルベースを黒に近いグレーのアントラサイトに縦サテン仕上げにしたほか、外周に向かって色が濃くなるグラデーションも施されている。サブダイヤルは繊細な同心円模様がアクティブな印象を与えるエボニーブラック。そして何よりも目立つのが、鮮やかなレッドに塗装されたセンターのクロノグラフ秒針とスプリット秒針、9時位置の60分積算計の指針だ。それによってクロノグラフ系の視認性が格段に向上しただけでなく、伝統を守りつつも現代的でスタイリッシュな雰囲気を感じさせる。
ちなみに、この左利き用モデルは1926年に特注で製作されたクッション型ケースのスプリットセコンドクロノグラフからインスピレーションを得たという。クロノグラフはプッシュボタンを頻繁に操作することになるため、左利き用は潜在的なニーズに対応した必然的なバリエーションと解釈できそうだ。いずれにしても、グランドコンプリケーションの左利き用モデルはとりわけ稀少なので、コレクターズウォッチとしても人気や評価を高めていくに違いない。
問い合わせ先/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL:03-3255-8109
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