ホラー映画初主演の相葉雅紀が、新たなチャレンジの中で見せた父親の顔

  • 文:佐野慎悟
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© 2022「“それ”がいる森」製作委員会

相葉雅紀8年ぶりの主演映画にして、初のホラー作品となった『“それ”がいる森』が、公開3日目の時点で、観客動員数と興行収入で今年公開のホラー映画No.1となる、好調のスタートを切った。40歳を目前に新しいチャレンジを続ける相葉雅紀に、いまの心境を聞いた。 

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右が相葉演じる田中淳一の息子・一也を演じる12歳の上原剣心。東京から田舎町に引っ越してきた、垢抜けた少年の姿を好演。左は上原の小学校の担任・北見絵里を演じる松本穂香。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

Q. 8年ぶりの主演映画が初のホラー作品で、しかも『リング』や『事故物件 恐い間取り』などで知られるJホラーの匠、中田秀夫監督とのお仕事となりました。久々の主演作に、ホラーを選ばれた理由は?

相葉 僕が選んだというよりも、いただいたお仕事が中田監督の作品で、ホラーの匠にお声をかけていただけるなんて光栄なことなので、ぜひやらせてください! とお受けしたのですが、実は僕、ホラーものを観るのがあんまり得意じゃなくて(笑)。でも台本を見た時に、これは好きなタイプだって、そう思えたんです。この作品は、親子や家族の絆を描いたヒューマンドラマでもあると思うので、僕みたいにホラーが得意じゃない人にも、幅広く楽しんでもらえると思います。

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森で姿を消した一也(上原)のクラスメイトの捜索を続ける田中(相葉)と担任の北見(松本)は、深い森の中でカップルの変死体を発見し、静かだった街に不穏な空気が流れる。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

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最初はどこかぎこちなかった親子関係だが、物語が進んでいくうちに、二人の間に強い絆が生まれていく。それと同時に、田中(相葉)の顔も一人息子を必死で守ろうとする親の顔へと変化していく。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

Q. 初めてのホラー作品でしたが、表現のしかたや、演出、現場感など、普段と違う部分はありましたか?

相葉 表現の部分に関しては、「もっと目を見開いて」とか、「もっと小さな声で」とか、中田監督が細かく演出してくれたので、戸惑うこともなく、スムーズに演じることができたと思います。でも、やっぱり“それ”との絡みのシーンは、常に高い緊張感のなか続いていくので、撮影の後はどっと疲れがきますよね。“それ”って、現場で会うと、めちゃ怖いですよ(笑)。かなりリアルな感じですし……。シーンによっては“それ”がいない状態で、想像してお芝居をすることもありましたが、そういう撮影はこれまでにあまりなかったスタイルなので、ワクワクしながら取り組めました。

あと、今回の撮影で特に印象的だったのは、“それ”を撮影している時に、中田組のスタッフのみなさんが、やたらテンションが高かったことですね。やっぱり好きな人たちが集まっているから、「その角度怖いね!」とか、「もっとこうした方が怖いかもね!」とか、ずっと盛り上がっているんです。僕がブラッドオレンジをふたつに切って味見をするシーンがあるんですが、断面とか、色とか、果汁の垂れ方とか、何個もオレンジを切って試しながら、その見えかたにすごくこだわっていました。

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カップル変死事件の捜査にあたる刑事に対して、森の中で蠢く“それ”の存在を力説する田中(相葉) © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

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オレンジ栽培を営む田中(相葉)を支える、地元の農家仲間。“それ”はついに森を出て街中を移動しはじめており、田中はついに、自身のビニールハウスで“それ”と遭遇する。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

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その目で“それ”の存在を目の当たりにした田中(相葉)は、一向に話を信じてくれない県警の対応に憤りを感じていく。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

Q. 相葉さんが父親役を演じられていることも、非常に新鮮でした。親子の姿を表現する上で、工夫したり、心がけたりしたことはありますか?

相葉 物語は、訳あって父と子が離れて暮らしている状況の中、子どもが突然、田舎で暮らす父のもとにやってくるところからスタートします。だから最初は、あまり父親らしさがなくてもいいと思いました。ストーリーが進むにつれて、徐々に息子の同級生や、自分の息子にも危険が迫り、逼迫した状況を潜り抜けていく中で、父親としての責任感が芽生えていくイメージは意識しました。

Q. 今回息子役を演じられたのはジャニーズ事務所の後輩で、12歳の上原剣心さんでした。親子の関係性はどのように築いていかれましたか?

相葉 僕はいろんなお仕事で子役の方と一緒になるんですが、待ち時間でも横にぴったりくっついていたり、膝の上に乗っていたりと、みんな舞台裏でも、本当の親子のように仲良くさせてもらっています。でも上原くんの場合は、やっぱりどこかに先輩・後輩っていう関係性があるみたいで、どんな状況でも常にビシっとしていて、こんなに若いのにしっかりしているなぁって、感心していました。でも、そういうべったりじゃない関係性が、今回の親子像を表現する上では、距離感的にもちょうど良かったのかなって思っています。

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さらなる悲劇が街を襲った夜に、田中(相葉)は県警に頼ることなく、息子の身を守るために、自らの手で“それ”に立ち向かう覚悟を決める。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

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息子の担任役を演じた松本穂香の他にも、妻役に江口のりこ(写真)、過去の事件の目撃者役に小日向文世など、注目のキャストが脇を固める。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

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過去に森で起きた事件の目撃者で、 60年間口を閉ざしていた児玉勉(小日向文世)。彼の下へとたどり着いた田中(相葉)と北見(松本)は、“それ”の正体の核心へと迫る。 © 2022「“それ”がいる森」製作委員会

Q. 映像作品のデビューとなった上原さんの姿を見て、デビュー当時のご自身の姿と重なる部分などはありましたか?

相葉 僕はデビューが14歳で、彼はまだ12歳ですが、当時の僕よりもだいぶ大人ですよ。今回は彼にとって初めての映像作品なので、僕もスケジュールが合う限り、クランクインする前にできるだけ一緒に稽古ができるようにしました。結構緊張していたみたいなので、先輩とか後輩とか何も気にしなくていいから、ただ役に没頭できるように、僕の方でも心がけていました。それから一緒に撮影を進めていくと、なんだか本当の親子なんじゃないかっていうぐらいに、顔が似てくるんですよね。ちょうど僕と、元妻役の江口のりこさんの子どもみたいな顔になってくるんです(笑)。その点にも注目して観てもらえると、楽しめると思いますよ。

Q. 父親として、大きな困難に立ち向かっていく姿が印象的でした。相葉さんご自身、大きなプレッシャーのかかるお仕事も多いかと思いますが、ものごとから逃げずに戦い続けるためには、なにが必要だと思いますか?

相葉 そうですね。今回の役柄としては、ただ子どものことを守らなきゃっていう、その一心だと思います。でも僕自身、実際に“それ”がいるんだったら、リアルなことを言うと、速攻で引っ越すと思いますけどね(笑)。無理ですよ。真っ暗な森の中だし、虫さえもダメで、本当はキャンプすらできないんですから……(笑)。それはさておき、これまでも仕事で逃げ出したくなるようなことはたくさんありましたが、いまこれをやらないと、何年後かに後悔するだろうなっていう気持ちが、僕の中のものごとを考える基準になっていたりします。たとえ失敗したとしても、自分が決めたことだと納得できるから、もう一度前を向くことができるんです。これからもその時々のインスピレーションや出会いを大切にしながら、また新しいことにチャレンジしていけたらと思っています。

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© 2022「“それ”がいる森」製作委員会

『“それ”がいる森』

監督/中田秀夫 
出演/相葉雅紀、松本穂香、上原剣心(ジャニーズJr.)、江口のりこほか 
2022年 日本映画 1時間47分 丸の内ピカデリーほかにて公開中。

https://movies.shochiku.co.jp/soregairumori

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