【写真家・永山瑛太インタビュー】『永山瑛太、写真』展がライカ銀座店にて開催

  • 写真:藤田一浩
  • 文:倉持佑次
  • スタイリング:壽村太一
  • ヘアメイク:寺沢ルミ
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永山瑛太。1982年、東京都生まれ。俳優として自身のキャリアにおいて数々の受賞歴を誇る。写真家として多くの著名人のポートレートやスナップ作品を手がけ、近年はアーティストとしても独自のペインティング作品を発表するなど、多方面で才能を発揮している。

東京と京都で同時開催中の写真展『永山瑛太、写真』が好評だ。雑誌の連載をまとめた写真集からの著名人のポートレート作品を中心に、初の試みであるセルフポートレート、日常の風景を収めたスナップ作品までが展示されたこの展示は11月中旬まで続く。自身初の写真展となる本展への思いを、永山瑛太に聞いた。

──今回の写真展は、今年1月に発売された写真集『永山瑛太、写真』がきっかけになっているんですよね。どのような内容になっているのでしょうか。

写真集の元になった雑誌連載ではすごい豪華な方々を撮らせていただいたので、ライカさんには、その写真を展示したいというのと、それからスナップと、セルフポートレートをやりたいということと、自分でマットの中に絵を描くのはどうかということを提案させていただきました。「自由にやってください」と言っていただきましたが、自分でアイデアを出しながらも、自分の中にすべての決定権があるとは思っていなくて。自分の感覚で好きな写真をセレクトするだけじゃなく、それを他の人が見たらどう見えるのかという客観的な意見を聞かせていただくことも、写真の自由さみたいなものを考えると大事だと思っています。写真という芸術は、自分自身で決めることではないというのが、僕の中での答えです。

──写真を公表した時点で、一種の共有性をもつというようなことでしょうか。

そうですね、例えば自分の家に飾る家族写真とかは、僕自身が絶対にいいものを選べますけど、写真展でお客さんに見てもらう場合は、絶対に賛否が生まれるわけで。乱暴に言ってしまえば、そういったことを他者に投げてしまうということも必要で、僕自身、それを楽しんでいるところもある。僕だったらこっちにするけど、そういう考えもあるんだなあとか。例えば自分なら、僕の写真の横に弟(俳優の永山絢斗)を並べて展示することはたぶんしてないんですけど、ライカさんがそういう風に置いてるっていうのは、これはこれでありなんだなと。

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俳優・永山絢斗の写真はライカギャラリー東京に展示。

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ライカギャラリー京都に展示されている、俳優・浅野忠信の写真。

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──以前、雑誌の『Pen+(ペンプラス)』に掲載されたフォトグラファー水谷太郎さんとの対談では、ライカで撮る写真の“意図しない余白”の魅力について語っていましたが、それとも通じる話ですね。

写真にしても映像にしても、そこの現場で生まれることに、嘘はないんです。例えば、映画の撮影現場であるスタッフが「そこはもうちょっとこうした方がいいんじゃないかな」と言ったら、俳優部の僕はその意見を活かした上で、僕なりの表現をするわけです。俳優をやっているとそういうことが日々起きているので、それが当たり前というか。そういった意味では、写真でも余白みたいなものがあった方が、見てる側も押し付けられている感じがしないんじゃないかなって気がします。

──今回の写真展では、セルフポートレート作品を自らペイントした1点物のマットと組み合わせていますね。

ペインティング自体は普段から行っていて、今回のものは2カ月くらいかけて制作しました。ただ当初はマットだけじゃなく、写真にも全部絵を描くことを考えていたんです。でもそうなってくると、ものすごい大好きなラーメンを食べに行って、ついチャーシューメンとライスまで頼んじゃって、結局お腹いっぱいで途中から嫌になる、みたいなことと同じような気持ちになりそうで(笑)。結局、バランスが大事ってことですね。

──会場構成や仕上がりについてはいかがですか。

写真展をやるのは初めてのことなので、どんな感覚になるのか全然わかりませんでしたが、何の先入観もなく会場に足を踏み入れた瞬間、最初からものすごく仕上がっていて、とても感動しました。芝居の上では絶対に満足することがないのですが、これ以上、写真の順番を入れ替えたりとか、何もしなくていい状態でしたね。それに近い感覚だったのが、今年、僕が監督した作品で役所広司さんを撮らせていただいたショートフィルム。役所さんが出ていればもうそれだけですべて成立していて、数ミリ単位のカット割りの編集すらもだんだんこだわらなくなってきちゃって。決して惰性でやってるとか、手を抜くという意味ではなくて、それよりも感謝することだったり、この人に出会えてよかったなってことだったり、何かいいところを探していった方が、次の何かに繋がっていくと思います。反省点を見つけて「ここをもっと強化しなきゃ」みたいなことを話し始めると、何かちょっと重い感じの人間になっていくっていうか。写真や俳優業にしたって、勝ち負けでも、点数を付けられるわけでもないし、考えることよりも、それを見てどう感じるかが大事だと思うんです。70点、80点って思い悩むなら、全部100点でいいんじゃないかなっていう。今はそんな境地にいるのかもしれないですね。

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『永山瑛太、写真』

「ライカギャラリー東京」「ライカプロフェッショナルストア東京」
開催期間: 2022年11月15日(火)まで開催中
住所: 東京都中央区銀座 6-4-1 2F
Tel: 03-6215-7070
定休日: 月(ライカプロフェッショナルストア東京は日・月休)

「ライカギャラリー京都」
開催期間: 2022年11月17日(木)まで開催中
住所: 京都府京都市東山区祇園町南側 570-120 2F
Tel: 075-532-0320
定休日: 月

永山さん着用:シャツ¥37,400、パンツ¥62,700/ともにヘリル(にしのや ️03•6434•0983)