こんなに楽しい服がある!脱ベーシックな17ブランド一気見せ【着る/知る】Vol.140

  • 写真・文:高橋一史
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レショップ(ベイクルーズ グループ)展示会にて。

「地味な服にはもう飽きた……」。そんな自分の気分が世間ずれしてないか気になり、セレクトショップのバイヤーやPR担当者らに意見を聞いた。すると皆が口を揃え、「それこそがいまのファッションの流れ」と言う。「店に並べて最初に売れていくのはカラフルな服」「1990年代イギリスの派手なサッカージャージが古着市場で大ブレイクして、僕も着たくて毎日メルカリでチェック中」「これまで無地Tシャツしか着なかったのに、いまはプリントTシャツばかり」といった具合。テーラードを着こなす大人の彼ら自身にも、脱ベーシック、脱コンサバな気分が広がっているようだ。

男女の好みに違いがないジェンダーレスが浸透した世の中。望ましい男性スタイルが、「目立たない上質な服による洗練された装い」なのも昔話になりつつある。心を縛るコロナ禍のマスク疲れを解消するためにも、2022-23年秋冬はポップなアイテムを身につけたい。「それ楽しいですね」と会う人を笑顔にさせるようなものを。

とはいえ手持ちのワードローブとの組み合わせを考えると、行き過ぎたデザイン服は候補から外れそうだ。ベーシックに捻りを加えた、ほどよいアレンジ服が便利。ここでは「着る/知る」担当者が22-23年秋冬展示会を巡ってスマホでスナップした、ちょい足しに役立つアイテムを一気にお見せする。街でウィンドウショッピングするように眺めてもらえればと思う。

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キャラクター降臨!

意外性のある懐かしの有名人とコラボしたのがジュンヤ ワタナベ マンとアンダーカバー。キャラクターモチーフのアイテムが大充実。

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<ジュンヤ ワタナベ マン>。同ブランドがテーマにしたのは90年代に一世風靡したバンドのジャミロクワイ。コム デ ギャルソンのメンズグループ展にて。

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<ジュンヤ ワタナベ マン>。大人世代に懐かしいジャミロクワイのマークが服にもタグにも。

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<ジュンヤ ワタナベ マン>。ジャミロクワイはあらゆるアイテムに姿を変えて登場。

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<アンダーカバー>。この顔は……映画監督アルフレッド・ヒッチコック!誰も思いつかなかったユニークなコラボ。

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<アンダーカバー>。ヒッチコック自身が描いた似顔絵を使った、知る人にだけ気づかれる洒落たプルオーバー。

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<アンダーカバー>。似顔絵キャップはストリートでも大活躍しそう。

まず最初にお届けするのは、今季秋冬の展示会巡りで大人心をガッチリと掴まれた、ベテランブランドのコラボコレクション。ジュンヤ ワタナベ マンは90年代イギリス音楽シーンのシンボルであるジャミロクワイのボーカル、ジェイケイをフィーチャー。アンダーカバーはハリウッド黄金時代サスペンス映画の巨匠監督、アルフレッド・ヒッチコックにフォーカス。ヒッチコックの肖像や作品スチールを使ったアイテムを多数登場させた。

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<A.P.C.>。高精細なプリントがド迫力。

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<A.P.C.>。アウターのインナーからチラ見せしたいアニマルプリントTシャツ。

明確なキャラクターアイテムが苦手な人は、モチーフの由来があいまいなプリントTシャツはいかがだろうか。A.P.C.の一着はクオリティの高さにうならされる逸品。冬服のインナーに取り入れてベーシックな服装のアクセントにしたい。

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レトロポップが本命か

70〜90年代、ゼロ年代(Y2K)が入り交じるレトロポップが、古着の流行とリンクしビッグトレンドになっている。メンズだと70年代、90年代に勢いがあるようだ。

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<イザベル マラン>。70年代カジュアルウエアのフィーリングに満ちたデザイナーズウエア。

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<トーガ ビリリース>。たっぷりとした現代的シルエットにアレンジされたクラシックアウトドアウエア。古着好きデザイナーならではのセンス。

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<トーガ ビリリース>。タイダイ染めをリゾートや70年代ヒッピーの文脈から切り離して都会的にした逸品。

イザベル マラン、トーガ ビリリースはともに女性デザイナーのモードブランド。古着を再解釈した繊細な感性が息づいている。トーガ ビリリースは派手なようだが着るとすっと馴染み、ベーシックな服装にも合う。印象が強いウィメンズの影に隠れたメンズのビリリースも、決してお見逃しなく。

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<プーマ>。シューズにコカ・コーラのロゴが!ユーモア満載のビッグコラボ。

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<プーマ>。ヒールにでかでかとコカ・コーラロゴ。「コカ・コーラ社の販促品!?」と思ってしまうほど大胆なデザイン。

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<プーマ>。コカ・コーラとのコラボはアパレルでも。

プーマがコカ・コーラとコラボしたカプセルコレクションは、レトロな味わいでいっぱい。SNS疲れと無縁な古き良き時代、健康志向の現代に反旗を翻すかのような白砂糖たっぷりのドリンク。カルチャーの一言ではくくりきれない、奥深い面白みがある。

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<ラングラー>。90年代の懐かしいペイントデニムを彷彿させるトラッカージャケット。

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<ラングラー>。上写真のジャケットの元生地。

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<モンクレール>。レトロアウトドアウエアの配色に通じるスポーツベスト。

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<モンクレール>。背中のハッシュタグつきロゴはまさしく現代のデザイン。

今季秋冬は街なかにレトロな服や小物がたくさん見つかるだろう。お気に入りを見つけてワードローブに加えよう。

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ふわもこニットに癒やされて

今季もっとも売れ筋と予測されるアイテムがニット。なかでも人気なのが、モヘアに代表される“ふわもこ”ニットだ。

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<コーヘン(COOHEM)>。今季目にしたニットのなかで、もっとも美しいと感じた傑作ノルディックセーター。ユナイテッドアローズ グループ展にて。

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<コーヘン>。ファンシーヤーンという糸が編み込まれ、ビーズ刺繍のごとく華やかな表情に。

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<コーヘン>。今季はさまざまなショップでコーヘンのセーターが取り扱われている。ビショップ展示会にて。

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<イザベル マラン>。一捻りあるデザイナーズノルディックセーター。

ニット人気のなかでもトレンド最前線にいるボリュームのあるニットのうち、誰もが着こなしやすいのは伝統的なノルディックセーターをアレンジしたもの。トラッドがベースなら色柄が派手でも、ベーシックなパンツに馴染みやすいものだ。やや女性的なニュアンスを男性が着ることのギャップが楽しい。ここに掲載したコーヘンは、山形県のニットファクトリー米富繊維のオリジナルブランド。世界レベルの創造性とクオリティがある。

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<トーガ ビリリース>。あたかもキャラクターの顔のようにユーモラスと思いきや、着るとスタイリッシュになる巧みなデザイン。

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<オニツカタイガー>。スニーカーの模様がニットのような素材で描かれた、冬にぴったりの一足。

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<クラークス オリジナルス>。伝統のワラビーも今年はカラフルなニット調に。セーターとの相性が抜群だ。

表面にニュアンスのあるざっくり素材のアイテムを身につければ、今年らしさを手軽に演出できる。小物も活用して、ニットに限らずフェルト、フリース、フランネルといった温もりのある起毛素材で身体を包もう。

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着こなし自在なオーセンティックカラフル

ベーシックな服装を崩さず時代感を取り入れやすいカラーアイテムをここにセレクト。黒、グレー、ネイビーといったモノトーン系にプラスαすると装いに動きが生まれるだろう。

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<ロロ ピアーナ>。高級素材のトップブランドによるポップな色のセーター。

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<ポロ ラルフ ローレン>。今季チェックしたさまざまなブランドのアイウエアのなかで、私的にもっとも刺さったのがこのポップなコレクション。

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<ポロ ラルフ ローレン>。レトロな土産物サングラスのようなカジュアルさに心惹かれる逸品。シックな服装の着崩しで活用したい。

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<ワックス ロンドン>。カーペットのようにざっくりしたバスケット織りチェック柄のシャツジャケットがずらり。ネルシャツも90年代を象徴するアイテムだ。グリニッジ ショールームにて。

なにはともあれ地味な服装から脱却する近道は、カラーアイテムを取り入れること。若い女性に人気が広がるカラーパンツは敷居が高くても、ニット、ネルシャツ、サングラスならこれまでの服や小物と置き換えやすいはず。無難な色を選びがちだった過去とは気持ちを切り替えてカラフルをチョイスすれば、人から一目置かれる新しい装いがきっと手に入る。

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ふざけすぎ!? 一点突破主義

当記事のトリを飾るのは、ユーモアに振り切ったふたつの日本ブランド。品質の高さにも定評があり、決して“チャラく”ない実力派のカラービーコンとダブレットだ。掲載のアイテムを身につければ、冬の沈みがちな気分が明るくなる。

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<カラービーコン>。バッグのモチーフはなんと問診票。「ダルい」って……。

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<カラービーコン>。漫画の吹き出しの擬音(オノマトベ)のごとく日本語で言い表されたブランド名。

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<ダブレット>。子供服?いや、太った成人男性でも着られる超伸びる服!

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<ダブレット>。90年〜ゼロ年代ストリートシーンの再現。二つ折りケータイで話しながら街を歩く様子のだまし絵。

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<ダブレット>。二つ折りケータイをパンツに引っ掛けた時代のパロディ。デコレーションを本格的にスワロフスキーでつくるこだわりがダブレットの凄み。

カラービーコンとダブレット、日本メンズモード界で敬愛される両ブランドの22-23年秋冬コレクションから、ちょい足しに使えるユーモアアイテムをピックアップ。スポーティカジュアルだから、どんな服装にも違和感なく馴染ませられる。

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最後にもう一点、普通っぽくも個性的なアイテムをお見せして本記事を締めくくろう。

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<クーキーズー(KOOKY ZOO)>。一見普通に見えるトラッカージャケット。レショップ展示会にて。

上写真はリーの定番101Jかと思いきや、どこか不思議なバランス。実はこのモデルの子供服バージョンを、コピー機で伸ばすように大人が着られる大きさに拡大したものなのだ。ボタンやステッチまでしっかり拡大されている。着ている人を見ると、「なにかがおかしい」と感じる隠れユーモアアイテムである。

22-23年秋冬はデニムカジュアルの復活も注目トレンドになっている。このジャケットのような変型デザインを選んで、さりげなく遊んではいかがだろうか。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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