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新たなトレンド、ゼロ年代的“ファットスニーカー”とは? 『東京スニーカー史』の小澤匡行が解説

  • 写真:青木和也
  • スタイリング:飯垣祥大
  • 文:行方 淳 (The VOICE)
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ファッションのトレンドをディケイドで区切って語る際、2000年以降を示す言葉が“ゼロ年代”。スニーカーのトレンドはスポーツブランドの動向による部分が大きいが、近年はメゾンブランドがそのムーブメントを吸い上げてファッションとして昇華。有力ブランドがしのぎを削り、独自のデザインやディテールを開発、毎シーズン話題作がリリースされている。そんなメゾンブランドのスニーカーを、エディター・小澤匡行に詳しく解説してもらった。

ヴァレンティノ ガラヴァーニのオープンスケート

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「このブランドは、モード外のカルチャーを取り入れる感覚がとても優れている。このスニーカーもそのひとつ。ラグジュアリーな発想におけるスケートシューズの名作だと思います」と小澤。シュータンと履き口周辺のパッドの厚みがいかにもファット。サイドにはマキシスタッズをセットしブランドのアイデンティティが表現されている。シュータンにあしらわれた立体的なVロゴはラバー素材によるもの。

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素材  │ レザー
色   │ ブラック、ホワイト
価格  │ ¥116,600
問合せ │ ヴァレンティノ インフォメーションデスク TEL:03-6384-3512

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スニーカーそのもののトレンドと、ファッションとしてのスニーカーのトレンドとは似ているようで少し異なる。たとえばダッドシューズの流行。これはナイキやアディダスといったスポーツメーカーから着いた小さな火を、メゾンのパワーとデザイン力でより大きく拡げていった結果だ。また、それはファッションとしてのスニーカーにおける久しぶりのブームでもあった。では現在、スニーカーのトレンドはどうなっているのだろうか。小澤匡行に訊いた。

ルイ・ヴィトンのランアウェイ・ライン スニーカー

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「複雑なカッティングやパーツごとのレイヤー感など、2000年代に見られるハイテクなランニングシューズを彷彿させる一足。適度なボリューム感を残しながら上品な配色とディテールで美しくまとめ上げるクリエイションはさすがです」。シュータンにはブランドロゴを刺繍でデザイン。ランニングシューズから着想を得たウェッジ型のマイクロアウトソールにも、モノグラム・フラワー モチーフが添えられている。

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素材  │ レザーなど
色   │ ベージュ
価格  │ ¥158,400
問合せ │ ルイ・ヴィトン クライアントサービス TEL:0120-00-1854

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「いまはナイキやアディダスに見られる80年代のレトロなシルエットと、ニューバランスやアシックスに見られる00(ゼロ)年代の複雑なデザインに二極化していると言えます。特に後者の動きが活発で、そこにどれだけ現代の要素を加えられるかが、重要になっています」と話す小澤。

ディオールの「B713」スニーカー

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「スニーカー好きで知らない人はいないであろうカクタス ジャックが、ナイキではなくディオールと組んだところがニュースでした。90年代のスケートシューズの文脈をメゾンブランドならではのクチュール感で表現した見事な一足。なんといってもこの配色が格好いい。“ファット”を見事にモダンに表現していると思います」。太くてレトロなシューレースもポイント。713足限定で、シリアルナンバー入り。

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素材  │ レザーなど
色   │ ミント
価格  │ ¥181,500
問合せ │ クリスチャン ディオール TEL:0120-02-1947

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現代の要素とは、ずばり“ファット”なムードなのだそう。

「ダッドではなくファット。ソールではなくアッパーの変化と言い換えてもいい。ダッドの原型が90年代だとすれば、ファットは00年代のスニーカーがその原型。そこにメゾンが肉付けをした結果が、いまのスニーカーのトレンドではないでしょうか。ファッションとしてのスニーカートレンドは、業界全体の潮流を把握する物差しにもなる。それもまた面白いところだと思います」

バレンシアガのランナー

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「スポーツブランドのスニーカーにおいて、パーツの切り替えはおもに機能的な役割をもっていますが、これに関してはまるでアートピースのよう。機能的なディテールを装飾的に解釈することで高い次元へ昇華された名作だと思います」。全体にユーズド加工が施されているのも特徴で、トゥとヒールにはサイズを表記。さらにヒールにはプルオンタブが装備されるなど、機能とデザインが融和した仕上がり。

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素材  │ ポリエステル、ポリウレタン
色   │ ホワイト、ブルー、イエロー、グレー、ブラック
価格  │ ¥135,300
問合せ │ バレンシアガ クライアントサービス TEL:0120-992-136

小澤匡行

エディター。1978年、千葉県生まれ。 大学在学中に1年間、アメリカ・フィラデルフィアにて生活。 帰国後『Boon』(祥伝社)にてライター業を開始。 現在は雑誌や広告などメディアを横断して編集・執筆活動を行う。著書に『東京スニーカー史』(立東舎)、『1995年のエア マックス』(中公新書ラクレ)がある。

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※この記事はPen 2022年11月号「最旬アイテムを厳選 2022年秋冬名品図鑑」より再編集した記事です。

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