インド出身の建築家でデザイナーのマナス・バティア(Manas Bhatia)は、AI描画生成ツール「Midjourney(ミッドジャーニー)」の可能性を活かし、超現実的な未来を構想している。
同氏の最新プロジェクト「Symbiotic Architecture(共生的な建築)」では、カリフォルニア州にそびえ立つ世界一高い樹木であるセコイヤ「ハイペリオン」からインスピレーションを得て、呼吸・成長し、自然と共生する超高層アパートメントが林立する未来を描き出している。
そびえたつ高層アパートメントの姿はまるで、内部が空洞になった巨大なセコイアの木のように見える。バティアはこう問いかける。「私たちは、コンクリートとガラスでできた、空調が効いたアパートメントと呼ばれる箱の中で暮らしている。私たちを取り囲むそうした建物エンベロープ(外皮)が、人間に代わって生物のように呼吸することはできないものだろうか」
生物や自然と建築の関係を探究するバティアは、自ら取り組むコンセプチュアルな想像や研究を、AIの力を借りてイメージ化した。生成されたイメージに描かれているのは、自然へと完全に溶け込んだ、超現実的な「生きる」アパートメントだ。
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人間と自然の結びつきに着目
バティアはこのプロジェクトで、物理的な建築デザインの枠を超えようとしている。AI、ならびに超現実的な建築コンセプトと建築デザインを探るなかで、自然界でパターンが生まれる様子や、小さな生物が網のように張り巡らされた巣を形成する過程、自然の刺激と理論に従って植物が反応する仕組みなどを研究している。
バティアはまた、人類と自然との深い結びつきに思いを巡らせている。自然のなかでの人の体験に触れつつ、「ユートピア的な未来」のビジョンを作り上げようとしているのだ。バティアが描いた代替的未来における建物は、コンクリートと鉄鋼からできた機械ではない。生命をもっており、拡大し続ける住居ニーズに応えながら成長することが可能なものだ。
バティアは、このコンセプチュアルな想像や研究をさらに進めようと、AI描画プログラムMidjourneyを使って、自然と調和し共生する建築物を生成した。そのためにプログラムに投入したのが、テキストベースのさまざまなプロンプト。たとえば、「giant(巨大)」「hollowed(空洞の)」「tree(木)」「stairs(階段)」「façade(ファザード)」「plants(植物)」といった単語の組み合わせだ。
プログラムは、こうした単語に応じて、数々のイメージを生成した。さらに、プロセスの過程で学習を何度も重ね、プロンプトを改変し、望ましいアウトプットを目指した。そうして完成したのが、自然を完全に取り込んだ、数々の超現実的な高層アパートメントだ。
内部が空洞になったこの建物は、呼吸する機能的な建築物へと変貌している。各住居は木の内側へと開いており、降り注ぐ自然光に照らされた空間は、うっとりとするほど美しい。
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魔法にかけられたような建築は、呼吸し成長
バティアはこの最新プロジェクトシリーズで、すでにある自然体系から学びを得れば、より効率のいいデザインを生み出すことが可能だということを伝えている。「私はいつも、小さな虫や生物が、自然界で住まいを作り上げていく様子に心を惹かれてきました。たとえば、アリは複雑に入り組んだ巣を土の中に作りますよね。もし人間が、植物のように呼吸し成長する建築物を作り出し、そこで暮らせれば、きっと素晴らしい世界となるでしょう」とバティアは語る。
自然体系に関する知識を活かしたこの新たなアプローチに、テクノロジーの力が加われば、生物学的により融和された建築デザインが生まれるだろう。その可能性は無限大だ。新時代のテクノロジーとツールがあれば、建築家やデザイナーは、自らのビジョンをより手軽に描き出し、頭にあるアイデアをじかに描画やレンダリング、3Dモデルへと変換できるようになる。そうすれば、業界はよりスムーズかつ効率的に動いていく。
AIツールMidjourneyがそうであるように、視覚的に望ましいイメージを生成するためには、プロンプトにする単語の適切な選択がカギとなる。思っていたものとは異なるイメージが生成されることもあるだろう。しかし、そうした予期せぬ成果がやがて、もともとは考えもしなかったような新たなビジョンの誕生につながっていくかもしれない。
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【画像】巨大樹木でできた“生きたアパート”が可能にする、ユートピア的な未来
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プロジェクト情報:
名称:Symbiotic Architecture(共生的な建築)
デザイナー:マナス・バティア