オフィスに足を踏み入れて、いつものオフィスチェアを探したら、それが木の棺桶に置き換わっていたという状況を想像してほしい。この椅子のデザインの外観は、棺桶からヒントを得ている。よくある棺の形状や輪郭に倣いつつ、内側は木でできているように見える。
クッション性のある座面は見当たらないので、この椅子には、ランバーサポート(腰をサポートする部分)までも、木でできている模様だ。オフィスで9時から5時まで働くあいだこの椅子に座るというのは、すぐにでも逃げ出したい悪夢のように思えてくる。
棺桶から着想を得たこの椅子の立案者は、英国を拠点とするデザイナー「チェアボックス(Chairbox)」だ。この作品の本当の名前は「ラスト・シフト・オフィスチェア(The Last Shift Office Chair)」という。
チェアボックスによると、棺桶形のオフィスチェアの着想が浮かんだのは、友人宅の居間で床に寝そべり、少し膝を曲げてソファに両足を乗せていた時だったという。
「もしこのポーズで死んだら、このまま埋葬されてしまうかもしれないと思いました。棺桶に入れるのはかなり面倒でしょう。おそらく、こういう場合には特別な棺桶が必要になるだろうね。友人にそう言って、二人で笑いましたが、数週間後、私はその考えに立ち返り、もう少し掘り下げてみたのです」
「その後、CADソフトウェアで3Dモデルを作成し、レンダリングをおこない、インターネット上に投稿しました」。チェアボックスはそう語る。
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ルネ・マグリットの作品との類似性
あるレディット(アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイト)ユーザーは、この棺桶形オフィスチェアは、ルネ・マグリットが1950年に描いた絵画『バルコニー(The Balcony)』を元ネタにしているのではないか、と指摘した。その作品には、バルコニーに4つの棺桶が描かれており、そのうちの1つが棺桶の椅子だったというのだ。
チェアボックスは、自身の作品を作る前にその絵を見たことはないし、自身の作品は「ただ自分の状態を純粋に反映したものです」と語っている。
さらにチェアボックスは、最初のアイデアを勢いづけたのは、1日に6~8時間座っていると死を招く恐れがあるという最近の研究だった、と明かした。「構造上、人間は1日に8時間椅子に座るようにはできていません」とチェアボックスは言う。
彼は、世界中の職場に蔓延しているように見える「働きすぎ文化」の拡大を指摘し、そうした文化が人々に「人生とはこういうものだ」と思い込ませている、と感じている。
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アーティストのチェアボックスが立案
さまざまなインターネットユーザーが、この作品の裏側にいる人物は誰だろうと推測して、さまざまな人やメディアの名前を挙げた。そして、本人が自らdesignboomに連絡を取ってきて、彼のデザインの影響や、「ラスト・シフト・オフィスチェア」に至った過程について詳細を語ってくれた。
彼が初めて「ラスト・シフト・オフィスチェア」をインスタグラムに投稿したのは2021年10月25日だったが、最近になって自分の作品がウェブ世界の興味をかきたてていることに気がついた、とチェアボックスは語った。
あるレディットユーザーは、次のように記している。「ついに! 簡単なメール1つで済むのに、またしても無意味な2時間の会議に出席するような気分を表しているオフィスチェア!」
別のユーザーも、この棺桶オフィスチェアが、従業員たちが経験している、働きすぎ文化と、将来性のない仕事を反映していることに同意している。
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プロジェクト情報:
名称:ラスト・シフト・オフィスチェア
デザイナー:チェアボックス
※この記事はdesignboomからの提供です。
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【画像】「働きすぎ文化は死を招く…」“棺形”のオフィスチェアが意味するもの
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