1. IWC(アイ・ダブリュー・シー)
パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41・トップガン・セラタニウム
マットなブラックケースは、IWCのエンジニアが5年をかけて開発した新素材「セラタニウム」製。セラミックの硬度と耐傷性、チタニウムの軽さと堅牢性を融合した革新的マテリアルは、焼成により絶妙な漆黒のメタリックカラーに発色する。クロノグラフを搭載するムーブメントは伝統的なコラムホイール方式を採用したIWC自社製キャリバー「69385」。
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2. OMEGA(オメガ)
シーマスター ダイバー300M ブラック ブラック
ダイヤルやケースから、ベゼル、リューズ、ヘリウムエスケープバルブまでもセラミック製のブラックで統一。細部まで徹底しながら、インデックスや針などを蓄光塗料で仕上げ、海中での視認性を確保。ダイバーズの本筋も通している。
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3. BELL & ROSS(ベル&ロス)
BR 03-92 ファントム
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特殊な用途をもつミッションウォッチは、本来は黒ダイヤルが身上だ。代表格のミリタリーウォッチでは、文字盤が光を反射して敵に発見されれば任務遂行の妨げになり、生命にも関わる。最暗色の文字盤に、風防ガラスも無反射コーティングが正統と言える。映画『トップ・ガン マーヴェリック』でスクリーンに写った“IWCのストップウォッチ”もまた、当然のように黒文字盤であった。
陸海空いずれの場面にせよ、瞬時に判読できる視認性の高さも任務遂行の必須条件だが、腕時計のファッション化が進む近年では、その“黒の掟”を一歩進めたエクストリームなスタイルが注目を浴びている。ケースも針も同色で染め抜いたオールブラックだ。メタルをPVD加工で着色するものから、最近ではセラミック系の先端素材も増えており、軽量・耐傷性のアドバンテージも考慮されている。グレーなど無彩色のツートーンでインデックスを可読させる手もあるが、ブラック・オン・ブラックで統一したモデルも潔い。“あえて視認せず”も、現代のミッションウォッチの美学であろう。
華やかな色だけが、腕時計の魅力ではない。イブニングドレスの女性をエスコートするタキシード姿も、目立たないのが粋だ。オールブラックのミッションウォッチは、姿を潜めながら魅惑の気配を漂わせるのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。
※この記事はPen 2022年10月号より再編集した記事です。