〈水無し電気鍋〉
MK Seiko KO TSU I RA ZU(エムケー精工 コツイラズ)
フランスのストウブ、日本ではバーミキュラなどの鋳物ホーロー鍋は、料理の仕上がりの高さからファンが多い。だが、鍋底を焦がさないように火力を調節することが難しく、慣れないうちは失敗しがちという声もよく聞く。
ここに目を付けたのが、長野県千曲市に本社を置くエムケー精工だ。水無し電気鍋「KO TSUI RA ZU(コツイラズ)」は、ずっしりと重い直径20㎝の“本物”の鋳物ホーロー鍋とヒーター部がセットになっており、無水調理を火加減調整なしの“おまかせ”で叶えてくれる。
手にしたらまず行うのは、油ならしと呼ばれるシーズニングだ。ひと手間かかるが、ダッチオーブンやスキレットを最強の相棒に育てていくのと同じだと思うとなんだかうれしくなる。
さあ、料理に取り掛かろう。付属のレシピブックには「はじまりのレシピ」という名前の鶏とキノコの煮込みが載っている。鍋にオリーブオイルをひいて、タマネギ、ニンジン、鶏モモ肉2枚、マイタケを順に入れ、蓋をしたら、オートモードで40分。まずは高温で予熱が始まり、約10分後に無水調理加熱が始まる。調理終了の合図とともに蓋を開けてみると、水を一滴も入れていないのに食材から出た水分で満たされている。切らずに野菜の上に並べた鶏肉もほろりとやわらかく煮えていて、ヘラでほぐすとご馳走感がたっぷり。調味料はわずかな塩だけなのに、滋味あふれる料理に感動する。
残りは蓋をしてそのまま冷蔵庫へ。翌日はここにトマトとカレールーを加えてチキンカレーを楽しもう。冷えた鍋の再加熱も「加熱HI」なら10分でOK。ガス火で調理する感覚で使えるから、調理のアレンジもしやすくていい。
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主役の鍋が見えるように前下がりになったヒーター部、立てておける蓋の取っ手など細部まで考えられたデザインも心憎い。調理家電と呼ぶよりも、暮らしの道具と呼びたくなるような愛着の湧く一台である。
神原サリー
新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と取材をもとに独自視点で発信。東京・広尾の「家電アトリエ」をベースに、テレビ出演や執筆、コンサルティングなど広く活躍中。
問い合わせ先/エムケー精工
TEL:026-272-4112
※この記事はPen 2022年10月号より再編集した記事です。