フェラーリ初の4ドア4人乗りが爆誕! 「プロサングエ」を現地でじっくり眺めてみた

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Ferrari S.p.A.
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フェラーリが、同社史上はじめてという、4ドア4人乗りモデルを発表した。「プロサングエ」と呼ばれるこのクルマの発表会場として選ばれたのは、イタリア・トスカーナ地方ピサ県ラヤーティコの「テアトロ・デル・シレンツィオ」。

年間ごくわずかな日だけ音楽リサイタルがあり、残りの360日以上は静かなまま。ゆえに沈黙の劇場と名づけられているテアトロ・デル・シレンツィオ。今回だけは沈黙どころか、そうとう盛り上がっただろう。

私がプロサングエを見られたのは、ラヤーティコでの発表の数日前。ボローニャから40分ほどのドライブで着くマラネロにあるフェラーリ本社でだった。写真撮影いっさい禁止と申し渡されるなか、世界中から集まったジャーナリストを前にして、プロサングエがお披露目されたのだった。

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テアトロ・デル・シレンツィオにて

プロサングエの特徴をごく簡単にいうと、4ドアで全高は1589ミリもあるけれど、フェラーリとしては「あくまでもスポーツカー」を標榜するモデル、ということだ。

ボディデザインは、なるほどフェラーリとすぐわかる。誰もがいいねえと思うような個性をそなえている。デザインを統括するフラビオ・マンツォーニ氏に聞いたところ「フローティングボディ」なる新しいデザインテーマが採用されたそうだ。

「最大の特徴は、ボディの上半分と下半分をわけたようなコンセプト。官能的ともいえるほどゆたかな曲線のフェンダーラインなど、上半分は美を強調し、下は機能。それがひとつに合体したイメージです」

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フロントフェンダーに大きなエアアウトレットが設けられているのがデザイン上の特徴

フロントにはグリルがない。エンジンは6.5リッターと大排気量のV型12気筒自然吸気エンジン(ターボではない)。ラジエターへの冷却気はバンパー部分の大きなエアインテークから採り入れる。

空気をどう入れてどう出すか。あるいは空力をどうデザインに活かすか。デザイナーとエンジニアが共同で作り上げたボディ、とマンツォーニ氏は言う。

「注目していただきたいデザインは、ヘッドランプの上のエアインテーク。高速での走行中はここから空気を入れて、フロントフェンダーの後ろに設けたアウトレットから排出します。空気の力で車体を下に押しつけ、浮き上がりを防ぐダウンフォースを生み出すためです」

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巨大なエアインテークから、エンジン冷却、ブレーキ冷却、ダウンフォースなどのために空気が採り入れられる

新開発の6.5リッターV型12エンジン、そのエンジンをフロントミドシップマウントするなどして前後の重量配分を徹底的に煮詰めたレイアウト、全輪駆動システム、後輪操舵機構、そしてなにより大事なのが、このクルマのために開発されたアクティブサスペンションシステムだ。

「フェラーリにも4ドアを作ってほしい、という声は、熱心な顧客からずっと寄せられてきました。フェラーリのファンゆえに、家族で乗れてロングツーリングができるフェラーリモデルが欲しい、と言われてきたのです」

お披露目の席に参列したフェラーリのエグゼクティブのひとり、チーフプロダクトディベロップメントオフィサーのジャンマリア・フルゼンツィ氏は開発の背景を説明してくれた。

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SF90といったスポーツモデルとデザインテーマは共通の「デュアルコクピット」採用

「1980年には、カロッツェリア・ピニンファリーナとともにフェラーリ・ピニンという4ドアの試作車を製作したこともあります」

フェラーリ・ピニンは、残っている写真をみると、低くて長いプロポーションが美しく、Aピラーはグラスの背後に入れて、いわゆる隠しピラーにするなど、細部まで凝った造型だ。ただしフェラーリとしてみると、ややクリーンすぎて、ファンにとってはやや物足りないかもしれない。

幸か不幸か、当時フェラーリを率いていた創業者のエンツォ・フェラーリ(1988年没)は、このプロジェクトにゴーサインを出さなかった。理由は「性能が満足ゆく水準に達していなかったからです」とフルゼンツィ氏。

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観音びらきの「ウェルカムドア」(電動開閉式)の採用で後席の乗降性はかなりよい

今回のプロサングエは、ついにフェラーリの開発陣が太鼓判を捺せる4ドアだということだ。それゆえ英語でサラブレッドを意味する車名を選んだといえる。このクルマは、GTラインいって、ローマやポルトフィーノが属するカテゴリー。しかし、先述したとおり、メカニズムは凝っていて、性能の水準はダントツに高い。

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後席シートも前席のようにフルバケットタイプなのは、どの席にいてもスポーツカーに乗っている感覚が大事とするフェラーリのポリシーゆえ

加速性能を、参考までにみると、静止から時速100キロまで加速するのに必要な時間はわずか3.3秒。2トンを超える全高1.5メートル超のクルマとしては驚くべき速さだ。

V12エンジンは、533kWの最高出力と、716Nmの最大トルクを発生する。そのパワーを最大限活かすべく、電磁式のサスペンションシステムを開発。「このサスペンションシステムがなければプロサングエが陽の目を見ることはなかったでしょう」と、フルゼンツィ氏は言う。

48ボルトでモーターを駆動するプロサングエのサスペンションシステムによって、「コーナリング性能を最大化」(広報資料)が謳われる。

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V12エンジンがフロントミドシップされ、8段ツインクラッチ変速機を介して前後輪を駆動する

「ロール剛性を継続的に変えながら配分し、ロールセンターをアクティブに下げ(最大 10ミリ)、タイヤに作用する横力やオーバーステアとアンダーステアのバランスにメリットをもたらすからです。また、ボディの動きとタイヤの動きの両方を高周波で制御するので、ロールとピッチを抑えると共に、路面の凹凸も吸収します」

上記の資料のなかにあるアクティブサスペンションのメリットだ。まだ試乗できたジャーナリストはほぼいないはずなので、プロサングエの走りがどうなのか、想像するしかないが、パワフルなエンジンと高性能な足まわりとで、かなりすごそう。4ドア4人乗りでもフェラーリが作るとこうなる、というマニフェストだ。

価格は39万ユーロといわれていて、デリバリーは2023年第2四半期からまず欧州向けに行われる。販売台数は未発表。

「このクルマだけが売れる事態を回避するために20パーセントていどに抑えます」と、チーフマーケティング&コマーシャルオフィサーを務めるエンリコ・ガリエラ氏は言う。

それでも、フェラーリによると、注文が殺到していて、ひょっとしたらまもなく受注停止にするかもしれないとのこと。すごい商品を作ったものだ。

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GT「ローマ」をどことなく彷彿されるリアビュー

Ferrari Purosangue
全長×全幅×全高 4973x2028x1589mm
エンジン 6496ccV型12気筒 全輪駆動
最高出力 533kW@7750rpm
最大トルク 716Nm@6250rpm

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