京王電鉄と小田急電鉄主体の再開発プロジェクトによって異なる業態の商業施設がオープンするなど、大きな変貌を遂げた東京・下北沢。今年3月には京王井の頭線高架下に、飲食店や書店、オフィスが入居する複合施設「ミカン下北」が開業した。複雑に入り組んだ路地裏に個人店が連なるかつての下北沢らしさを残しながら、新たなカルチャーの発信拠点として街の賑わいに寄与している。
コンセプト立案から建築・環境デザインを担当したドラフトの山下泰樹は、建築やインテリアを独学で学んだ後、2008年に26歳の若さで同社を設立。現在、東京・大阪・福岡のほか、セブ島やセルビアにも拠点を構え、建築からプロダクトまでジャンルを超えた多様なデザインを手がけながら、ブランディングにまで携わる。
それぞれに専門チームを組んで行う幅広い活動のなかで、設立当初から手がけるのがオフィスデザインだ。以前は軽視されていた“居心地のよさ”を重視する、働く人のためのオフィス環境を提案。世界のデザインアワードを多数受賞するなど国際的にも評価を得ている。人を主役にした空間づくりは企業のオフィスだけでなく、店舗やホテルといった多くのプロジェクトにも共通している。
現在ドラフトでは、横浜みなとみらい地区の臨港パーク内に24年竣工予定の、次世代型のサステイナブルな複合施設を計画中。これからもデザインの力で、世の中に新しい風を吹き込んでいく。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
山下泰樹が携わってきた代表的な建築
【Keyword 1:次世代の大型オフィス】
オフィスデザインの先駆者でもある山下は、これまで数多くの有名企業のオフィスを設計。共有部の一部を地域住人に開放することで休日の活用を見据えた「コイル テラス」など、次世代に向けた働く場の在り方を提案している。
---fadeinPager---
【Keyword 2:体験価値を高める空間づくり】
「スーパーマーケット」をテーマに楽しさを詰め込んだポップな眼鏡店や、ドラフトが展開するオリジナルブランドの家具を体感できる東京フラッグシップストアなど、その場所でしか得られない体験や訪れたくなる空間づくりを得意とする。
---fadeinPager---
【Keyword 3:心地よさを生むトータルデザイン】
オフィスや店舗設計においては、特に、居心地のよさを重視する。乃木坂のオフィスビルでは、建築から12階全フロアのインテリア、ブランディングまで携わり、利用者が快適に過ごせる空間を提案した。
山下泰樹
1981年、東京都生まれ。建築やインテリアを独学で学びながら、2008年にドラフト設立。建築設計からインテリア、プロダクトデザインまで幅広い領域を手がける。世界のデザインアワードを多数受賞。桑沢デザイン研究所非常勤講師も務める。
※この記事はPen 2022年10月号より再編集した記事です。