「こんな日本ワイン今までなかった」 ワインジャーナリストが旨さに驚いた、富山県氷見の“究極のロゼ”

  • 文:鹿取みゆき
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「セイズファームロゼ 2021」愛らしいラズベリーの香りに生き生きとした酸。軽やかでフレッシュな果実味が楽しめる。¥3,700

9月に入ると、日本各地の多くのワイナリーが仕込みに突入。SNSでもブドウの収穫や仕込みの様子が、盛んにアップされる。「蒸し暑い夏にこそ味わいたい、後味スッキリな日本のロゼ3選」でも紹介した富山県氷見のセイズファームでも、ピノ・ノワールを皮切りにとうとう2021年の仕込みが始まった。 

このワイナリーを6月に訪れる機会を得た。JRの氷見駅からタクシーで約20分あまり。鬱蒼とした林の中を蛇行して上る道を辿ると、突如視界が開ける。ワイナリーに到着だ。ワイナリーの周囲には自社農園が広がっており、眼下には富山湾が臨め、その遥か向こうに立山連峰も姿を見せる。心が解放されるような景色だ。

栽培醸造責任者の田向俊さんに畑を案内してもらい、まずはアルバリーニョの区画に行く。ここで紹介したロゼもその抜群の美味しさに驚いたのだが、このアルバリーニョという品種のワインも見逃せない。グラスに注ぐと溢れんばかりの金木犀の香りが広がり、口中は、その香りに満たされて、煌めきのある果実味とおだやかな酸味が互いに引き立て合い、魅了される。こんな日本ワインは今までになかった。しばらく完売だったが、10月には2021年ヴィンテージが販売になるという。リリースが待ちどおしい。

せっかくなので、ロゼの原料になった、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロの畑にも連れていってもらった。一眼見て、木々が丁寧に管理されているのが見てとれる美しいブドウ畑だ。

ちょっと専門的な話になるが、赤ワインをより濃いものにしようと、「セニエ」という工程を取り入れる造り方がある。ブドウを破砕した後、果汁だけを少し取り除き、搾った果汁における果皮や種などの固形物の比率を高める方法だ。セニエはフランス語で血抜きという意味になる。実は日本や海外のロゼワインの中には、この取り除いた果汁から造られたものが多い。

しかし、田向さんの造っているロゼワインは違う。赤ワインを造るための副産物ではなく、わざわざロゼワインを造るためにブドウを育てているのだ。田向さんによると、セイズファームでは、ロゼワインの原料として、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど合計3ヘクタールもの面積のブドウを育ている(自社農園の総面積は8.5ヘクタール)。

2021年物のロゼは、メルロを主体にピノ・ノワールがブレンドされ、フレッシュで軽快なタイプ。今後は、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロの厚みのあるタイプと、ピノ・ノワールとメルロの軽やかなタイプの2タイプのロゼワインがリリースされるようになるようだ。こちらは現在、ワイナリーのショップで販売中だ(各地の酒販店でも販売中)。

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メルロの畑

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セイズファーム

https://www.saysfarm.com/

※現在、レストラン・宿泊利用者以外のワイナリー見学は行っていません。見学の受付につきましては予約時にお伝えください。

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鹿取みゆき

フード&ワインジャーナリスト

ワイン、食の生産現場の取材の傍ら、日本の生産者支援にも注力。現場の生産者向けの勉強会、消費者との交流の場のプロデュース、地域ブランドの構築のプロジェクトなども手がける。一般社団法人日本ワインブドウ栽培協会代表理事。信州大学特任教授。

鹿取みゆき

フード&ワインジャーナリスト

ワイン、食の生産現場の取材の傍ら、日本の生産者支援にも注力。現場の生産者向けの勉強会、消費者との交流の場のプロデュース、地域ブランドの構築のプロジェクトなども手がける。一般社団法人日本ワインブドウ栽培協会代表理事。信州大学特任教授。