コロナ禍で観光客が減少する一方で、実はホテルのオープンラッシュに沸いている京都の街。それぞれが独自のスタイルを打ち出すなか、特に注目したいのが建築と美食だ。今回は、清水寺に近く、小学校をコンバーションしたラグジュアリーホテル「ザ・ホテル青龍 京都清水」を紹介する。

そして、記事の最後にはこちらのホテルの宿泊券のプレゼント企画もご用意。心地よいおもてなしが待つホテルステイを、この機会にぜひ体験してみてほしい。

2020年3月に開業した「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、2010年度に閉校した元清水小学校の校舎をコンバージョンしたラグジュアリーホテルだ。清水小学校は1869年に下京第二十七番組小学校として開校し、1933年に現在の地に移転新築。番組小学校とは、日本で最初の学区制小学校で、学び舎としてだけでなく、地域自治の拠点や伝統的コミュニティの中心施設としての役割も果たしていた。当時は、モダンで画期的な鉄筋コンクリート校舎をもつ小学校が次々と竣工した時代で、なかでも清水小学校は、その立地や外観上の装飾、内装デザインで評判だったという。その歴史的価値のある校舎の意匠を継承しながら、現代的なエッセンスを加え、新たなホテルとして生まれ変わったのだ。

清水寺や八坂の塔（法観寺）、高台寺など、東山の観光名所が徒歩圏内という絶好のロケーションにありながら、敷地内に足を踏み入れると、喧騒や混雑とは無縁の静かでゆったりとした時間が流れている。背後の東山を借景とする山腹の傾斜地に立つコの字型の既存校舎は、それぞれ異なる階層の3棟が連なり、中央の大階段を囲むような配置に。タイル貼りの外壁、スパニッシュ風の屋根瓦、アーチ状の連窓など、外観はできるだけ当時のまま保存、復原。内部デザインは、廊下や階段といった共用部はそのままに、教室は客室に、講堂はレストランやプライベートバスに刷新された。新たに増築された北側の客室やレストランが入る別棟は、温かな色合いで装飾的な既存校舎をより際立たせるように、ミニマルなデザインでまとめている点にも注目だ。

---fadeinPager---

チェックインは、元管理作業員室を改装し、ソファやラウンジチェアを配したレセプションにて行う。全48室の客室は、清水寺や法観寺「八坂の塔」が見える部屋、広々したテラス付きの部屋、書斎を備えた部屋など、さまざまなタイプが用意されている。

泊まったのは「プレミアムコーナーツイン」という60㎡以上の広々した角部屋。ダブルベッド2台とソファが置かれ、願わくば仕事はしたくないけれど、デスクがあるのはリモートワークやワーケーションにはありがたい。シンプルでモダンなインテリアが心地よく、つい部屋にこもりたくなってしまうが、館内には宿泊者専用のラウンジや、開放的なプライベートバス、話題のルーフトップバーなど、魅力的な施設がいろいろとあるので、こもっていてはもったいない。

宿泊者専用ゲストラウンジは、目の前に八坂の塔と四季折々の自然を見渡せる最高のビュースポットだ。デイタイムはスナック、スイーツなどの軽食、カクテルタイムにはオードブルなどの軽食が並び、常時ビールやワインといったアルコールを含むドリンクが自由にいただける。チェックイン後にお茶をしたり、ディナー前のアペリティフに立ち寄ったりと、いつでも気軽に利用できるほか、一保堂茶舗の抹茶でお点前体験やコーヒーミルによる小川珈琲の焙煎豆の豆挽き体験にもトライできる。

完全予約制のプライベートバスは、「清水」「山鳩」「桜」をテーマにした3つの個室を用意。かつての講堂を活かした天井高のある開放的な空間となっている。

---fadeinPager---

忘れてはならないのが、京都の名バーテンダー、西田稔がプロデュースする最上階のふたつのバー。360度のパノラマビューが楽しめるルーフトップバー「K36 Rooftop」は、マジックアワーに染まる街並みや、沈みゆく夕日、市街の夜景やライトアップされた八坂の塔など、時間帯で異なる景色を眺めながら、名バーテンダーによる美酒をいただけるとあって、開業以来、話題のスポットとなっている。ゆっくり落ち着いて杯を傾けたいなら、室内の「K36 The Bar」がお薦めだ。

西側のレストラン棟に入るのは、フレンチの巨匠、アラン・デュカス率いるデュカス・パリ社監修の「ブノワ 京都」。フランス各地方の伝統的な料理をモダンに昇華させたビストロメニューをいただける。赤いベンチやアールヌーヴォー風のパテーションなどパリっぽい内装ながら、目の前には八坂の塔という京都らしい風景が広がるのがユニークだ。

そして印象深かったのが、講堂だった天井高のある空間に図書館のように本を並べた「restaurant library the hotel seiryu」でいただいた朝食のおいしさ。「Well-being」をテーマに、日本における栄養療法・点滴療法の第一人者である柳澤厚生医学博士が監修したもので、「しば漬け入りリゾット」や「サーモンのソテー」、「ラタトゥイユと卵のそば粉ガレット」といったメイン料理をチョイスするアメリカン・ブレックファストか、「京の和朝食膳」を選択。どちらにも野菜やフルーツがたっぷり使われた、身体が喜ぶようなメニューとなっている。

---fadeinPager---

「記憶を刻み、未来へつなぐ」というコンセプトどおり、洗練された建築デザインで長年地域に愛されてきた建物に新たな魅力をまとわせたザ・ホテル青龍 京都清水。校舎だった当時を彷彿させるような廊下や階段などにノスタルジーを感じ、パブリックスペースや客室に飾られた京都に縁のあるアーティストの作品を愛でる。朝は早起きして、まだ人気のない清水寺や二寧坂など周辺を散歩。ホテルにこもっても出かけても楽しい一軒だ。