〈360°カメラ〉
RICOH THETA X(リコー シータ エックス)
全天球を静止画、動画で撮影するリコーTHETA(シータ)シリーズの最新機は、誰でも気軽に360°の景色が撮れる「THETA X」だ。
これまでのTHETAは、いわばマニアや“仕事向け”だった。デジタルカメラの範疇に収まらない異次元性を矜持とし、いかにスマートで機能的な仕様にするかがこだわりだった。バッテリーは内蔵のみで、取り出し不可。メモリーも内蔵のみで、SDカードは使えない。フォルムもおもなデジカメは横型だが、THETAは縦型。そんな違いの最たるものが、本体にディスプレイなし、という点。そもそもディスプレイこそデジカメの象徴であり、THETAはそれを載せないことで、単なるデジカメではないと宣言。使用時はスマホに転送しモニターするが、両手がふさがり使いにくかった。でもそれは並のデジカメではないという高踏さの現れでもあった。
そんな変なこだわりをすっかり捨て、「360°撮影できるデジカメだ」と宣言したのが、このTHETA Xなのだ。2.25型の液晶タッチパネルを搭載し、本体のみでライブビュー(スワイプで360°表示)、撮影情報の表示、撮影値設定ができる。マイクロSDXCカードも使え、バッテリー交換も可能。このユーザーフレンドリーさなら、360°撮影の愛好家が増えるに違いない。
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改めて言っておくが、360°撮影は圧倒的に楽しい。カメラを対象物に向けずとも、どんな位置からでも撮影できる。映像はスマホ、タブレットにも転送でき、スワイプすればどんな角度でも見られる。適当に撮っておいて、アプリで欲しい部分をトリミングする使い方をすれば、撮影時の緊張感も和らぐ。背景に思いがけないものが写っていたという体験も楽しいだろう。専用編集アプリ「THETA+」で作品性の高い映像にも挑戦でき、専用サイトtheta360.comにアップすれば、作品を世界に公開できる。簡単操作の新THETA Xで、楽しさいっぱいの360°撮影にぜひ挑戦してほしい。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
問い合わせ先/リコーお客様相談センター
TEL:0570-001313
※この記事はPen 2022年10月号より再編集した記事です。