マツダ肝煎りの新型SUV「CX-60」が、あえて直列6気筒エンジンを採用したのにはワケがある

  • 文:小川フミオ
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マツダが新型SUV、CX-60を発売した。特筆すべきは、3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンを新開発して、搭載していること。いまは、けっこう大きなボディのクルマでも1.5リッターあたりの小排気量エンジンが当たり前の時代。時代に逆行している?

いや、じつはこれもカーボンニュートラルに向かう一歩、とマツダでは説明するのだ。

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プレミアムスポーツはグリルやロードホイールなどがブラック塗装

CX-60は全長4740ミリで、全高1685ミリ。競合だと、トヨタ・ハリアが全長同一で、全高1660ミリ。レクサスだとNX(全長4660ミリ)と発売が予定されている新型RX(4890ミリ)の中間。日産の新型エクストレイルだと全長4660ミリ、全高1720ミリと、全長がやや短く、背は高め。

ラージ商品群、というのがCX-60の属するマツダのカテゴリー。北米をはじめ、主要市場で大きめサイズのSUVが求められていることから、開発された。

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ソウルレッドメタリックの塗色が迫力を感じさせる

「3.3リッターと大きめな排気量の直列6気筒エンジンを開発した背景は、このボディには、550Nmぐらいの最大トルクが欲しい、というのが第一点です」

CX-60の開発を指揮したマツダの和田宜之主査は、いまあえて、3.3リッターもの排気量をもつ直列6気筒ディーゼルエンジンを開発した理由を教えてくれた。競合と渡り合っていくには、パワーがあるていど必要ということだ。

「4気筒でなく直列6気筒にしたのは、エンジンというのは直列6気筒だと、スムーズに回るからです。4気筒のように振動を抑えるためにいろいろ工夫する必要がありません」

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マツダ流ともいうべき質感の高いボディが特徴

当初は4気筒を大排気量化しようというアイディアもあったようだ。ただしそれは却下。トルクを増やすとともに、軽量化、つまり低燃費化も重要な課題だったからだ。

「大排気量化さらた4気筒には振動を低減するためのバランスシャフトが必要になりますが、直列6気筒にはそれがいりません。結果として重量も抑えられるし、今回は、新開発のピストン、ターボチャージャー、それにごく低回転域にトルクを上積みするマイルドハイブリッドを搭載しました」

8段オートマチック変速機も、効率のよいトルコンレスタイプを新開発。アクセルペダルを踏み込まない低負荷のときは、エンジンを駆動系から切り離してしまう。はたして、燃費はリッター21.2キロを達成。軽自動車より良好なぐらいの値だ。

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ヘッドランプは切れ長でなくなりグリルも縦のラインが強調されている

「現時点でいきなりピュアEVは、社会インフラも追いついていないので無理があるといえます。そこでいまは、あえて内燃機関を使って、ただし持てる技術で低燃費化をはかろうというのが、新しいパワートレイン開発の背景です」

CX-60のドライブトレインは、バリエーションゆたかだ。これまで触れてきた6気筒ディーゼルターボ(マイルドハイブリッド)のみでない。

ベースモデルは2.5リッター4気筒ガソリンエンジン搭載。3.3リッター6気筒ディーゼルは、ノンハイブリッド版もある。そして、2.5リッターガソリンエンジンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたモデルも予定されている。

私が乗ったのは「CX-60 XD-HYBRID」(これが車名)の「プレミアムスポーツ」グレード。ブラックメタリック仕様のロードホイールと、バンパー下からのぞく排気管のテールカッター(最後の部分)がクロームで目立つようになっているのが専用装備だ。

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「タン」の内装はタンとブラックのコンビネーションが美しい

内装は、タン。ベージュとブラウンの中間ぐらいの色合いで、ブラックとのコンビネーションで仕上げてある。ステアリングホイールは外周部分がブラック、内側がタン。レンジローバーやボルボを思わせるしゃれた仕上げだ。

ダッシュボードも上面は反射を防ぐ意味もあってブラック。乗員に面した部分はタン。ソフトな感触の素材を使っている。

ドライバー正面の計器盤、12.3インチの液晶ディスプレイ、その下のエアコンなどの操作類と、機能がゾーンごとに明確に区分けされているのだ。走行中の使い勝手を考慮して、とはマツダの説明。

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CX-60ではからだを腰で支えるシートが採用されている

走り出しは、電気モーターがトルクを上積みするので、重さをまったく感じない。そもそも低い回転域を得意とするのがディーゼルエンジンの特長なので、そこからぐっとパワーが盛り上がり、2000rpmの手前からはターボチャージャーの働きで力強く加速していく。

アイドリングではディーゼルエンジン特有のカラカラという音がすこし聞こえるものの、加速中は、サウンドエンジニアの仕事が効果を発揮。低めのエンジン音を模した合成音が、気分を盛り上げてくれる。

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写真の車両は「エクスクルーシブモダン」なるグレード

どんな音を聞くとドライバーは気持ちいいと思うかを研究して、波形を作ったと担当者は説明してくれた。プレミアムスポーツカーのなかにも合成音を使っているモデルもあるぐらい。燃費規制などで、昔のように、ぞんぶんにエンジン音を楽しませてもらうことが出来なくなった。いまはそういう時代なのだ。

リッター21.2キロという燃費と、前後席ともに余裕ある室内空間をもつCX-60。ロングツーリングに行ったら気持ちよさそうだ。

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ホワイトの内装色は美しい

いっぽう、もうひとつ、このクルマが魅力を発揮するのが、ワインディングロード。山中の屈曲路などを走行するとき、ひらりひらりというかんじで、カーブからカーブをこなしていく。1.8トンの余裕あるサイズのSUVとは思えないほどだ。

マツダの開発者も「走りが楽しんでいただけるように心を砕いた」というぐらい。ボディ剛性の高さをはじめ、サスペンションシステムとステアリングで、ドライバーの一体感の強い操縦性が実現している。

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キネマティックポスチャーコントロールなどでコーナリングは得意科目

キネマティックポスチャーコントロールといって、カーブを曲がっていくとき、内側の後輪に軽くブレーキをかけることで、車両の姿勢を制御するシステムも採用。それもカーブの楽しさに寄与しているはずだ。

さきに触れたとおり、バリエーションの多いCX-60。まず22年9月に、今回乗った、e-SKYACTIV-D(505万4500円~)搭載モデルが登場する予定だ。

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新しい意匠のシフトレバーと左上にドライブモード切り換えスイッチ

続いて、3.3リッター6気筒ディーゼル(マイルドハイブリッドなし)の「SKYACTIV D3.3」(323万9500円~)「SKYACTIV-G 2.5」(299万2000円~)が22年内に続く。そして、4気筒ガソリンエンジンのプラグインハイブリッド「eーSKYACTIV PHEV」(539万円)が控えている。

Specifications
Mazda CX-60 e-SKYACTIV-D
全長×全幅×全高 4740x1890x1685mm
エンジン 3283cc直列6気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド 全輪駆動
最高出力 187kW@3750rpm