金持ち父さん・貧乏父さん、どちらになるのか? 40代が分かれ道の理由

  • 文:川畑明美
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マイホームも購入したし、子どもも手がかからなくなった。家族の形がはっきりと定まってくるのが40代だ。収入は増えても、その分支出が増え、経済的なゆとりをあまり感じられない年代でもある。この40代は、自分達の老後資金を視野に入れつつ子どもの大学進学の資金を貯めていく年代だ。この時期にどうお金と向き合うかで、その後の人生が大きく変わってくる人生の転機ともいえる。


早く結婚・出産した方は、上の子どもは中学生くらいだが、晩婚・晩産の方は、まだ未就学児のケースもある。問題なのは、後者のケースだ。まず、親が何歳の時に下の子が大学を卒業するのかを考えてみて欲しい。遅い方では、60歳を過ぎてもまだ大学生というケースもある。


ここで人生のお金の計画を立てておかないと老後破産への道をたどることになってしまう。40代にどのようにお金に向き合うかが、お金持ちになれるかどうかの、分かれ道なのだ。

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子どもの習い事は手取り収入の4%まで


子どもにかかる教育費は子どもが生まれた日から、何年後にどのくらい必要なのかは、予測できる。最もお金がかかる大学費用を生まれた月から貯め始めるのが理想的だ。そして幼稚園や保育園から高校までの教育費は大学費用や老後資金のための貯蓄を差し引いた残りの生活費から出せる範囲内におさめるべきだ。


ここを間違ってしてしまう方が非常に多い。子どもが幼い頃は、いろいろな可能性があるので習い事や塾にお金をかけてしまいがちだ。可能性にかけるのは良いことなのだが、子どもが本当に望んだ時にお金を出してあげられるのか?


特に幼い頃の習い事は、親の思い込みの可能性もある。筆者は幼稚園の時から小学校を卒業するまで親に言われてピアノを習っていた。しかし、それはただの苦痛でしかなかった。子どもの「好き」を伸ばせることを見つけることが大事なのだ。


幼い頃の子どもの習い事や塾費用の目安は、手取り収入の4%以内だ。そして小学生の頃が、一番のお金の貯め時となる。まだ子どもの生活費は少なく済むし、公立の小学校ならば、ほとんどお金がかからない。この時期に大学費用と老後資金の原資をしっかり貯めていくことだ。

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2年後の大学費用は運用してはいけない

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着実にお金を増やすことを資産運用という。そして資産運用は基本的に長期投資だ。短期間でチャレンジするのはとても危険だ。tsingha25-istock

筆者は長期投資を教えている。なのに、「2年後に迫った子どもの大学費用を増やしたい」というご相談をいただくことはよくある。残念なのだが、あと2年では安全に増やすことはできない。子どもが生まれてすぐに、毎月2万円くらい投資信託を積立していれば、平均で5%の運用で18歳までに約698万円準備できる。その元本は432万円。


小学校から毎月2万円、10年間投資信託の積立をし、同じく5%で運用できれば、約310万円だ。ちなみに元本は240万円。2万円の倍4万円を積立して5%で運用できれば約621万円だから運用期間が長い方がより増やせるのだ。積立投資は、1日でも早く始めるのが大事なのだ。そう考えると、投資を利用できるのは、中学1年生までだろう。5年間毎月4万円を5%で運用できたとしても約272万円なのだ。

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奨学金を借りるならば在学中に返済

大学費用が準備できていない場合は、子どもの進学先が限定されてしまう。最低限18歳までに大学費用の半分は、準備したいところだ。国公立の大学に自宅から通学するのならば受験費用も入れて550万円くらいは準備したい。5年間4万円を5%で運用すると約272万円だから、ちょうど半分くらいになる。自宅外で私立大学に進学するのならば1000万円は準備しておきたいところだ。


奨学金を借りることも考えられるが返済は長く続く。奨学金を返済している間に、子どもが生まれたら、あなたの孫の教育費を子どもが準備するのは困難だ。貧乏が遺伝してしまうのだ。


奨学金を借りたら、早く返済することが基本だ。奨学金も繰上げ返済(一括返済)することで利息を少なくすることも可能だ。また、在学中に繰上げ返済をすると利子もかからない。奨学金は借金だと意識をして借りたら早く返済すること。また、親が借金をする教育ローンも同様だ。

40代は、老後資金も準備する時期だ。教育ローンの返済で老後資金が準備できないと、結局子どもに迷惑がかかってしまう。まずは、給付型の奨学金を調べること。次に無利子の奨学金が借りられるよう成績をアップすること。どうしても足りない場合は、利子付きの奨学金で繰上げ返済を検討することだ。

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40歳から老後資金を準備する

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子どもの教育費という重い負担を抱えつつも、40代で老後資金の準備をスタートしなければ、貧乏父さんになってしまう。takasuu-istock

40歳というと、まだまだ老後は先の長い未来のように感じると思う。お金の面でも生活費に加え、住宅ローンの返済や子どものいる世帯では学校や習い事にかかる教育費など出費の多さに悩んでいる人も少なくない。それでも近い将来を考えて欲しい。60歳を過ぎると収入がガクッと減ってしまうのだ。


そう考えると60歳までの20年をどう活用するのかが大事になってくる。まずは、どんな金融商品でどのくらいの金額を準備したらいいのか考えてみよう。老後の大切なお金だから、なるべく安全なものでと考える方もいるが、安全な金融商品だけで老後資金を貯めるのはかなり危険だ。


10年20年という長い期間で資金を作るという点を考えてみて欲しい。20年前と今では、モノの値段が違っている。食料品を中心に物価は年々上がっている。物価の上昇と同じように値上がりする株式でないと目減りしてしまう可能性があるのだ。


株式といっても必ずしも株を購入することではない。投資信託やETF(株式市場に上場している投資信託)などを活用しよう。なぜ投資信託なのかというと、個人では、20銘柄以上の株を購入するのは資金的にも難しいからだ。株式投資は、売買できる単位が100株となっていて、ある程度のまとまった資金が必要になるからだ。

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複利の効果はたった1%でも大きい


株式投資では1回の売買でまとまった金額も必要になるし、購入するタイミングを間違えると大きな含み損(買った時よりも時価が値下がりしている状態)になってしまうこともある。含み損を抱えたままにするのは、精神的にもよくない。少額から購入でき、設定したら自動で買付してくれる投資信託の方が扱いやすい。


投資信託は、証券会社などが顧客から集めた資金を10億円ほどの単位にして、運用会社が株式などで運用する金融商品だ。ネット証券を利用したら100円から購入できるので、少額投資も可能なのも利点だ。子どもの費用がかかる40歳代ならば、少額でも良いので長く運用することだ。運用は、長ければ長いほど複利効果で大きく増えていく。


少額でも早くはじめる方が大きく増えるのが複利の特徴だ。例えば、毎月1万円を30年間積立しているAさんと、毎月6万円を5年間積立てしているBさんの複利の効果を比較してみよう。細く長く積立しているAさんと、太く短く積立しているBさんの違いはあるが、自分の懐から出した元本は、どちらも360万円だ。物価の水準が変わらず、運用益も付かなければ2人の資産額は、同じ360万円だ。ところが、運用益がたった1%でも違うと、細く長く積立しているAさんは、約420万円になるのに対してBさんは約369万円と50万円ほどの金額の差がでてしまう。

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再雇用の収入から準備するのは遅い

「住宅ローンの返済と子ども達の教育費のために必死に働き退職後は、のんびり旅行に行きたいと思っていました。ところが退職金をもらって、老後に必要なお金を計算してみたら、生活はできるけれど旅行に行くお金なんかなかったのです」このような相談を頂くことがある。退職金をもらって、はじめてその金額を知ったというのだ。意外にも多くの人が退職金の計算をしていない。


筆者が以前勤めていた会社では、計算している方は割と多かった。と、いうのも基本給がものすごく少なかったからだ。さまざまな手当がついて、やっと一般的な収入くらい。退職金は、その少ない基本給で計算するので30年間勤めても1000万円に手が届かないほどだった。同僚との飲み会でも、よく話題に上っていた。なので筆者は、退職金を計算するのは、当たり前と思っていたのだが、現実は違うようだ。


退職金の計算は、就業規則に掲載してある。正確でなくても、退職金がいくらになるのかは計算しておくべきだ。そうでないと、老後資金の不足額もわからず準備もできないまま、現役を終えてしまう。再雇用で働けると言っても、退職時の給料の50%〜70%程度に落ち込んでしまう。ここから老後資金を準備するのは難しい。


ご相談いただいた方は、退職金で生活費は、なんとか確保できそうなのだから、まだ良かった方なのだ。退職金があっても、老後の生活費が不足する方は多い。遅くとも40歳代には退職金の計算をしておこう。早くから把握していれば、資産運用をすることで、少ない資金で準備することができる。退職金をもらってからではリスクはあまり取れなくなってしまう。退職金の金額を知らないあなたは、今すぐ計算をして欲しい。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/