アメリカ・ネバダ州の砂漠に、壮大なアートが出現した。長さ2.4キロ、幅0.8キロという果てしないエリアに展開する、「シティ」と命名された作品群だ。ランドアートの巨匠、マイケル・ハイザー氏が手がけた。制作に50年を費やした同作品が、今年の9月2日から公開される。
盛り土と砂利、そしてコンクリートで構成されるシティ内には、いくつかのインスタレーションが設けられている。ハイザー氏が最初に完成させた「コンプレックス・ワン」と呼ばれる一角には、台形の基礎に未完成の柱が寄り添う。そこから作品内を2キロ近く進むと、「45°, 90°, 180°」と銘打たれたサイトが出現する。
2つのサイトは延々と続く盛り土で結ばれ、それはときに緩やかにうねり、ときに鋭い表情を見せる。盛り土とインスタレーションが織りなすリズムは、これから完成をみようかというモダンな建築のようであり、同時に打ち捨てられた古代文明の痕跡のようですらある。
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案内板などない…迷い、体感するアート
その巨大さと立体的な特性から、全貌を一度に目にすることは不可能だ。訪れた者はアートを「鑑賞」するのではなく、その中を実際に歩き回り、都市を肌で「体感」する。
米アート情報サイト「アートネット」のタイラー・ダフォー記者は、「シティを訪れることは、多くの意味でオフロードな行動となる」と述べている。作品はハイザー氏が長年かけて取得した砂漠の私有地にあり、人里から遠く離れている。鑑賞には予約が必須で、ツアーで現地に向かう。
作品に一歩足を踏み入れれば、迷いすら体験の一部となる。ダフォー氏は続ける。「世界一巨大なアートと評されるハイザー氏の大作には、通路がなく、見晴らしのよいポイントや案内板もない。始まりはなく、終わりもない。足と本能の赴くままに探検するよう仕向けられている。砂利になった斜面、カーブを帯びた谷間、巨大なコンクリートの構造物のあいだを、訪問者は闊歩するのだ」
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世界各地の建築様式に着想得る
発想の源として、世界各地の文明と建築が取り入れられているようだ。建築ニュースサイトの「アーキ・デイリー」は、アメリカ先住民が伝統的に使用してきたマウンド(盛り土)の手法、先コロンブス期の中南米の都市、そしてエジプト建築などの要素が融合していると解説している。
米スミソニアン誌によると、シティの製作には4000万ドル(約55億5000万円)が投じられた。用地確保と作品製作のため基金が設立されたほか、ハイザー氏自身も資金を提供した。
ハイザー氏は、土地そのものをアートに変える「ランドアート」の手法で大胆な作品を繰り出し、その名声を高めてきた。1969年の代表作『ダブル・ネガティブ』は、ネバダ州の峡谷を500メートル近くにわたって深く削りとり、二つの断崖に挟まれた「何もない空間」をアートとする発想で人々に衝撃を与えている。
半世紀を費やし遂に完成した大作「シティ」にも、全米で高い関心が向けられているようだ。巨大な空間に反し、チケットは日に6枚の限定販売となっている。シティをその足で歩くことができた人々は、かなりの幸運といえそうだ。
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【写真】「世界最大のアート」マイケル・ハイザーの大作、50年越しに完成 砂漠に出現した迷いの“都市”
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