『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は、ホラー映画の名手、白石晃士が監督・脚本・撮影を務めた最新作。白石監督が自らカメラマンとなり、POV(ポイント・オブ・ビュー=主観視点)で捉える「フェイクドキュメンタリー作品」だ。
異界とつながる祟りの森を舞台に、黒石晃士(白石晃士)が率いる5人が迫りくる恐怖に立ち向かう「ノンストップ・ジェットコースター・ホラー・アドベンチャー」作品。助監督の市川美保役は、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で好演が光る堀田真由。ホスト風イケメン霊能力者・ナナシ役は『仮面ライダーエグゼイド』の飯島寛騎が演じる。そのほか、筧美和子、宇野祥平、中野英雄らが映画を彩る。
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映画は、黒石と市川が映画撮影のため山奥の家へ向かうシーンから始まる。黒石は送られてきた動画を見て「傑作が撮れる!」と確信し、撮影者である三好麻里亜(筧美和子)のもとへ。車を走らせると、やがて壁いっぱいに怪しい文字が書かれた家へたどり着いた。
しかし、三好麻里亜は言動がおかしい。「私が体験した出来事は、黒石くんの映画の内容そのものなの」と訴える。やがて、物語は危険な方向へ。窮地を救うのは、行方不明の少女を探す「スーパーボランティア」の江野祥平(宇野祥平)。そこにイケメン霊能力者も加わる。撮影隊の冒険が始まった。黒石は傑作映画を撮ることができるのだろうか。
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本作は、2022年7月からWOWOWで放送された全6話の連続ドラマを基に、劇場公開用に再編集されたもの。見どころは、フェイクドキュメンタリーならではの臨場感だ。役柄を演じる白石監督と堀田真由が実際に撮影した映像が使われており、迫力満点。観客は撮影隊に実際に加わったような感覚になる。
また、本作のプロローグにあたる劇場版だけの特別短編「訪問者」も同時上映される。
白石監督としては久しぶりのフェイクドキュメンタリー作品だ。白石監督はこれまで、POVの『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズのほか、『オカルト』『ある優しき殺人者の記録』『貞子 vs 伽椰子』『恋するけだもの』など多数の映画を手がけてきた。本作でも、白石作品ではおなじみの異界のクリーチャーたちが登場するのが楽しい。宇野祥平が「この山、危ないで。はよ帰った方がええ」と忠告するシーンは、『オカルト』好きにはたまらないシーンだろう。過去作の『カルト』や『殺人ワークショップ』を彷彿とさせる描写もある。
しかし、本作は初めて白石監督の作品を見た人でも楽しめる。撮影隊がバスに乗って逃げ惑うシーンは特に臨場感が満点で、ホラー作品ならではのスリルを味わうことができる。
筧美和子の「怪演」も見どころのひとつだ。異世界のクリーチャーに憑依されて言動がおかしくなったかと思うと、すぐに元の人格に戻るなど、切り替わりが激しい。難しい役柄をこなすだけでなく、画面いっぱいに映る筧美和子の可愛い笑顔には思わず見とれてしまう。
白石監督はインタビューのなかで、ホラー映画の醍醐味を次のように語る。「自分にとってのホラーの醍醐味は、ホラーという枠組みのなかであらゆる要素をぶち込めることです。ジョージ・A・ロメロ監督のようにポリティカルな社会的なことも入れられるし、ラブストーリーや今回の作品のように冒険物語的要素も入れることができる。まさにジャンルミックスが可能というか、あらゆるものを一緒くたにして怖がらせつつもエンタテインメントとして提示できる。それがホラーのすばらしい所以です!」
本作はまさに、ホラー映画に冒険譚がミックスされた極上のエンタメ作品だ。
秋の足音が聞こえてきたこの季節。映画館で本作を見て、夏の終わりを迎えるのはいかがだろうか。
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』
監督・脚本・撮影/白石晃士
出演/堀田真由、飯島寛騎、筧美和子、宇野祥平ほか
2022年 日本映画 2時間3分 8月27日より新宿ピカデリーほかにて公開中。
https://movies.kadokawa.co.jp/okamori/
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。