映画『百花』のあらすじと見どころ。菅田将暉主演で描く“記憶”をめぐる物語

  • 文:上村真徹
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©2022「百花」製作委員会

映画プロデューサー・脚本家・小説家として活躍する川村元気が、自身の小説を映画化した長編監督デビュー作『百花』のあらすじと見どころを紹介する。

【あらすじ】母の記憶が消えゆく中、蘇っていく母との思い出

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母の百合子(右)が認知症を患い、泉(左)は親子の時間を取り戻すかのように母を支えていこうとする。©2022「百花」製作委員会

映画プロデューサー・脚本家として『告白』『モテキ』『君の名は』など多くのヒット作を生み出してきた川村元気が、自身4作目となる小説を自らの監督・脚本で映画化。菅田将暉をはじめ実力派俳優たちが豪華集結したヒューマンドラマ『百花』が劇場公開される。

レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)は、ピアノ教室を営む母・百合子(原田美枝子)が過去に起こしたある事件によって、親子の心の溝を埋められないまま過ごしてきた。香織(長澤まさみ)と社内恋愛の末に結婚し、間もなく子供が生まれようとしていたある日、百合子が不可解な言葉を発するようになる。診察の結果、認知症を患っていることが判明。百合子は次第に記憶を失っていき、香織の名前すら分からなくなってしまう。

一方、泉は百合子が記憶を失うたびに親子で過ごした日々を思い出していき、献身的に母を支えていこうとする。そんな中、泉は百合子の部屋で一冊の日記を見つける。そこに綴られていたのは、泉がずっと忘れられずにいた事件の秘められた真相だった。

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【キャスト&スタッフ】日本映画界をけん引する実力派俳優陣が豪華集結

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泉の妻・香織(右)は、夫と百合子の関係性に対して不思議に思う。©2022「百花」製作委員会

川村監督は、認知症を患った祖母に自分のことを忘れられてしまった実体験をきっかけにこの物語を執筆した。その想いについて「徐々に記憶を失っていく祖母と向き合いながら、私自身がさまざまなことを忘れていたり、記憶を書き換えながら生きていることに気付かされました。人間は体ではなく記憶でできている。どうしようもない瑣末な記憶ですら、それらは複雑にその人に根ざし、その人を形成している。そんな実感から生まれた小説が『百花』でした」と語っている。

そんな川村自ら演出を手がけた長編監督デビュー作には、そうそうたる実力派俳優たちが集結。主人公の泉を演じるのは、日本アカデミー賞最優秀男優賞をはじめ数々の映画賞に輝き、目覚ましい活躍を見せている菅田将暉。原作小説を読みながら号泣し「川村さん本人の手で残すべき作品だ」と思ったという菅田は、記憶を失っていく母を目の当たりにしながら、封印していたはずの辛い記憶と向き合う息子を繊細に熱演している。

母の百合子には、これまで数々の名匠の作品に出演し続け、自身の母が認知症になっていく様を短編ドキュメンタリーで記録した原田美枝子。今回はその経験を存分に活かし、記憶を失いながらも思い出の奥底にある秘密に手を伸ばそうとする母を圧倒的な存在感で魅せている。他にも、泉の妻を長澤まさみ、百合子の秘密を知り事件と関わっていく男を永瀬正敏が演じ、親子を取り巻く人間模様に深みと情感を宿している。

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【見どころ】記憶を失くしていく者と忘れられていく者…最後に残るのは“根源的な愛”

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記憶が消えゆく中、百合子は「半分の花火が見たい…」と繰り返しつぶやくようになる。©2022「百花」製作委員会

記憶を巡る本作のストーリーは、原作では息子・泉の視点を主体として進んでいくが、映画では原田美枝子という大女優が母を演じていることもあり、母の記憶と息子の記憶が交互に描かれている。そうすることで、記憶を失くしていく方と忘れられていく方、それぞれの辛さや切なさが浮き彫りとなっていく。そして、封印されていた過去にお互いが手を伸ばして重なり合った瞬間、共通の思い出の本当の姿が鮮やかに見えてきて、そこに息づく温かな親子愛に胸が熱くなることだろう。

また、全編が1シーンを1ショットで撮影する“長回し”で構成されているいるのも本作の大きな特徴。初の長編映画に挑む監督が選ぶには大胆な演出スタイルだが、それは自らの演出力への自信というより、大切な家族の認知症という誰にとっても起こりうる日常的なドラマをありのまま写し撮りたいという情熱があってこそ。そして、1シーン1ショットの映像に“今そこに生きている人のエネルギー”を凝縮できる実力派俳優たちの確かな演技力もあって、その試みは成功したと言える。

記憶とは主観的であり不確かなもの──それは人を疑わせたり憎しみ合わせることもあれば、愛し合おうという力にもなる。だからこそ、大切な人との思い出は忘れずにいたい。誰もがそんな願いを抱かずにいられない、かけがえのない人間ドラマがここにある。

『百花』

監督/川村元気
出演/菅田将暉、原田美枝子ほか 2022年 日本映画
1時間44分 9月9日(金)全国公開

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