記録的な暑さだった2022年の夏を経験し、いよいよ「気候危機」が身近なところまで迫ってきていると実感している人が多いのではないだろうか。そんな気候変動は世界の観光地にも影を落とし始めている。今、観光業界・航空業界でなにが起きているのだろうか。

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欧州ライン川ではリバークルーズに危機

スイス・アルプスを水源に、ドイツ、フランス、オランダなど欧州各国を横断する全長1320キロメートルのライン川。上流の一部の区間はユネスコの世界遺産に登録されている、ヨーロッパを代表する観光スポットの一つだ。

そして、ライン川の名物と言えるのが、リバークルーズ。中世の雰囲気あふれる古城を眺める数時間程度のクルーズはもちろん、大型船に乗り1週間ほどかけてライン川沿いの国々をめぐっていくツアーもある。

だが、そんなクルーズに今、危機が迫っているのだ。欧州の干ばつ観測所（EDO）は2022年8月、EUとイギリスの約63％の土地で干ばつ警報・警告が出されていると発表。日本と同様に記録的な暑さに見舞われた欧州では、多くのエリアで干ばつ状態に陥っている。

ドイツのカウプ基準点での水位は8月13日に36センチメートル、8月19日には32センチメートルまで低下した。8月24日には降雨によって1.2メートルまで上昇したが、大型船や積み荷を載せて船が航行するためには、1.5メートル程度の水位が必要だという。

リバークルーズを運航する会社の中には、水位にあわせて船のゲスト用に積む真水の量を減らして調整するところもあるようだ。だが今後は、リバークルーズの運航キャンセルが相次ぐことや、そもそもクルーズ自体ができなくなる可能性も否定できない。

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米イエローストーン国立公園で洪水

アメリカ最古の国立公園にも気候変動の影が忍び寄っている。イエローストーン国立公園は、およそ9000平方キロメートルという広大なエリアに、渓谷や牧草地が広がっている場所で、2021年には267万人の人々が訪れた人気観光地だ。夏休みの書き入れ時には多くの人々が訪れ、2021年7月の訪問者数は過去最高となる108万人を記録した。だが、2022年7月は59万人にとどまったのだ。

その理由は、6月13日に起きた記録的な洪水の発生だ。洪水が起きた際、公園内にいた人々は24時間かけて非難し、公園内の全ての入口が封鎖されたという。7月2日には一部の入口を除いて訪問者の入場再開の許可がおりたものの、洪水の危険を理由に訪問をキャンセルした観光客が多かったと考えられる。

最近発表された論文で、アメリカ各地にある公園のうち半数以上が、山火事、干ばつ、海面水位上昇、氷河の減少など、さまざまな危機にあると指摘されている。

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空港・航空会社にも影響

気候変動の影響は、観光地だけに限った話ではない。空港や航空会社もその影響を受けた事例が出てきている。

例えば、イギリス最大のロンドン・ルートン空港で7月に起きた滑走路の隆起だ。この日、イギリスでは気温が37℃に達した地域があった猛暑日。その影響で滑走路の一部が隆起し、運航が一時停止することになった。また別の日に、アメリカ・ラスベガスでは時速96キロメートルの突風が吹き、フライトが遅延する事態も起きている。

このように、気候変動による暑さ、嵐、洪水、降雪などによって今後、空港や航空会社はフライトの遅延やキャンセルが増加するとみられている。2021年に行われた調査で、世界の約270の空港が、海面上昇や海水流入によってフライトの遅延や機器の損傷のリスクがあると発表されている。

気候危機は私たちのすぐそばまで迫り、もう他人事で済ますことはできない事態にまでなっているようだ。その対策に、世界が一丸となって、本腰を入れて取り組まなければならないときが来ている。