【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『地図と拳』
日露戦争で勝利した日本は、満州に理想の新国家建設を計画した。戦前に神父としてこの地に来たロシア人、クラスニコフが持っていた地図で森林だった場所は農地に、そして街へと変貌を遂げていく中で、日本軍によって焼き払われてしまう。中国人の暴動が起きたからだ。日本軍は再興計画を策定したが、再び大きな戦争が近づいていたため新官舎の建築計画に変わり、それも白紙に戻る。歴史の中で地図は何度も書き換えられてきた。満州の開発と破壊、人々の希望と絶望を描いた長編小説だ。
※この記事はPen 2022年9月号より再編集した記事です。