揺れと騒音。狭い車内に敷かれたレッドカーペット。ハリウッドセレブがやってくる場所とは到底似つかない。だが、この映画の舞台挨拶はここ以外は考えられなかったのかもしれない……。
映画『ブレット・トレイン』は、伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を原作としたアクション映画だ。ブラッド・ピット演じるレディバグは、仕事のたびに無関係の人が死ぬ、不運のデパートのような殺し屋と言えるだろう。そんな彼は善人になることを望み、仕事復帰の際には「超高速列車からブリーフケースを盗んでくる」という簡単な任務が課せられる。ところが、この高速列車は乗ったが最後、途中下車不可能な暗殺者の集まりだったのだ。
『ブレット・トレイン』の舞台が超高速列車ということで、JR東海の全面協力のもと、映画のストーリーさながらに東京発京都行きの新幹線の中で、ブラット・ピット(主人公・レディバグ役)、アーロン・テイラー=ジョンソン(タンジェリン役)、真田広之(エルダー役)、そしてデヴィッド・リーチ監督による挨拶が行われた。
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前代未聞の”動く”グリーティングイベント
新幹線の乗り心地を聞かれると、ブラッド・ピットは「まるでデジャビュのようだ」と目を輝かせた。前代未聞の新幹線イベントは、LEDスクリーンを背景に日本っぽい雰囲気の映像を流しつつ撮影していた彼らを童心にかえらせたのかもしれない。そして「乗り心地は最高だよ。みんなもどう? 大丈夫?」とメディアを気遣う。
明るいムードの中で、出演者に「『ブレット・トレイン』参加を決めたきっかけ」が質問された。ブラット・ピットはコロナ禍だからこそ、笑いが必要だと感じたらしい。
「『ブレット・トレイン』のオファーが来たのは、新型コロナウイルスによるロックダウンの最中でした。まだワクチン云々なんて話もなかった頃でしょうか。気がおかしくなりそうだと思っていたところにデビット・リーチ監督が話をもってきたのです。彼とは『ファイト・クラブ』で僕のスタンドダブルをしてもらった時以来の付き合いです(リーチは監督として有名になる前にスタントをしていた)。送られてきた脚本を読んでとにかく笑いました。そしてこのような状況下にはとにかく笑いが必要だと感じたのです」
作品のコメディ担当と言っても過言ではない、タンジェリン役のアーロン・テイラー=ジョンソンも同様だ。「暗雲が立ち込めているときに脚本が届いたんです。キャラクターに惹かれたし、きっと楽しい映画になると感じました。楽しい映画には参加したいと思いました」と話す。
舞台が日本なので日本に行けるのだろうと期待していたが、コロナ禍なのでそれは叶わなかったと少し残念そうな表情を見せた。それだけに、今回の新幹線イベントへの参加を喜んでいるのが伝わってきた。また、「素晴らしいキャストと共に仕事ができて楽しかった」と撮影を振り返った。
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「日本の小説を国際的な素晴らしいキャストを迎えて映画化し、全世界に公開できることに喜びを感じている」と話すのは、真田広之だ。原作をうまくアダプトした脚本とデヴィッド・リーチ監督の組み合わせなら面白くならないはずがない、と思ったという。真田はリーチ監督と過去に何度か一緒に仕事(映画『ウルヴァリン:SAMURAI』など)をしたことがあり、「乗車します! 」と即答する気持ちだったと言う。
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「重みのある役者が必要」で選ばれた真田
本作で初共演を果たしたブラッド・ピットと真田広之。果たしてどんな印象を持ったのだろうか。
「真田さんが参加してくれたことで優雅さが出て作品の格も上がりました」とブラット・ピット。アクション俳優として長く活躍してきた真田に敬意を表し、「一緒に仕事ができて光栄です」と言う。さらに「もう少し続けたいのですがいいですか。(真田に向かって)天狗にならないでね」と一言加える。
「エルダーの役を演じるのは重みのある役者でなければと話していました。入ってきただけで緊張感が走るというか。真田さんはそのような人物であり作品の心臓であり魂のようなものなのです」
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ブラッド・ピットから思わぬ賛辞を受けて少し照れたのか「撮影が始まる前にこれを聞かなくてよかった。プレッシャーに感じてしまう」と笑う真田もすかさずピットのムードメーカーっぷりを褒める。
「ブラッドは最初に会ったときからフレンドリーで。映画にかけるエネルギーも素晴らしいのです。その空気感に包まれて仕事ができたことは幸せだと思っています。監督とブラッドの信頼関係はスタッフにも伝わり初日からいい雰囲気だったので毎日現場に行くのが楽しみでした」
そして、オン/オフに関わらず笑顔を絶やさなかったブラッドはまるで全体を包み込む機関車のようだった、とも。(作中に登場する『トーマス』に引っ掛けた発言だがそれは作品を見て確かめてほしい)
ブラッド・ピットがその場の雰囲気を和やかにするのは、たった数十分一緒の空間にいただけでも伝わってくる。
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新幹線イベントでわかった『ブレット・トレイン』の臨場感と激しさ
『ブレット・トレイン』のシーンを意識して東京から京都まで新幹線で移動してみて気付いたのは、新幹線の中でアクションを撮影するのは極めて困難である、ということだ。4人並んで立っているだけでも大変だ。なにせ揺れる。コンスタントにバランスをとる必要がある。
座席から撮影するだけでも、障害物が入ってしまい格好いいレイアウトにならない。映画が本物の新幹線の中で撮られていないとはいえ、狭い車内でのアクションは至難の業だったのではないだろうか。そしてこの映画にはなんと10人もの殺し屋がいて死闘を繰り広げるのだ。どこに誰がいるのか図解にしたそうだが、そこまでしなければトラッキングできないのも納得だ。
『マリア・ビートル』を読んだとき、筆者は自由にキャラクターを動かし、ダイナミックなアクションを想像して楽しんだが、この短時間の新幹線イベントに参加して、あの小説を映像に落とし込む難しさを実感したような気がした。ブラッド・ピットが「笑った」と言っていたが、考えてみたら、この企画を映画にしようと考えたそのアイディアさえ狂気じみていて笑えてしまう。
そんな『ブレット・トレイン』を提げてやってきたブラッド・ピットは、日本のファンに向けてこんな言葉を送っている。
「この映画を携えてやってこれたことがとても嬉しいです。僕たちの日本に対する愛を感じてもらえると思います。アクションも素晴らしいし、とにかく楽しい作品になっています」
『ブレット・トレイン』
監督/デビッド・リーチ
出演/ブラッド・ピット、ジョーイ・キングほか 2022年 アメリカ映画
2時間6分 9月1日より全国の映画館で公開。
https://www.bullettrain-movie.jp/
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写真一覧
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