『ミッドサマー』などの話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社「A24」が北米配給権を獲得した、北欧発の衝撃ネイチャー・スリラー『LAMB/ラム』のあらすじと見どころを紹介する。
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予告編
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【あらすじ】羊ではない禁断の“何か”…得体の知れない生物の正体は?
カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃作であると共に、同映画祭の「ある視点」部門を受賞してアカデミー賞国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど、批評家からも高い評価を受けた話題作『LAMB/ラム』が劇場公開される。
羊飼いの夫婦イングヴァル(ヒルミル・スナイル・グズナソン)とマリア(ノオミ・ラパス)は、アイスランドの人里離れた山間部で静かに暮らしていた。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”が産まれてきた。過去に娘を亡くした心の傷を今も抱えるマリアは、自宅に連れ帰って我が子のように育てようとする。そんな妻の姿にイングヴァルは複雑な視線を向けるが、心の平穏を得た彼女のためにその奇妙な存在を受け入れ、娘の名前にちなんで“アダ”と名付ける。
その後、ある事件を経てイングヴァルの弟ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)がやって来る。ペートゥルは羊のようで羊ではない“何か”の存在に困惑し、夫婦にアダを動物だと諭そうとするが、二人はまったく意に介さない。そんな中、彼らの周囲で不審な事件が起きるようになり、不穏な空気が立ち込め始める。
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【キャスト&スタッフ】アイスランドの新たな才能が、衝撃的な世界を日常として映し出す
本作の監督を務めたのは、今回が長編デビューとなるヴァルディミール・ヨハンソン。『ニーチェの馬』のタル・ベーラ監督が指揮するフィルムファクトリー出身で、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当したアイスランドの新鋭だ。ビジュアルとサウンドで物語を伝えることに重点を置いて台詞は最小限にとどめ、一組の夫婦が羊ではない“何か”と過ごす日常を淡々と描くことで、その異様な空気を不気味に写し取っている。
主演・製作総指揮を務めるのは、北欧発の大ヒットミステリー『ミレニアム』シリーズで知られるスウェーデン人女優ノオミ・ラパス。彼女を含めて人間の登場人物はわずか3人でありながら、抑制された演技で衝撃的な設定の中にリアリティを宿している。アイスランドの人里離れた農場の美しくも厳しい風景も、監督たちが1年以上こだわって探しただけあって、物語の神秘的かつ不穏なムードを高めるロケーションとして絶妙だ。
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【見どころ】止めどなく押し寄せる不穏と衝撃
羊飼いの夫婦が、羊のようで羊ではない“何か”を受け入れ我が子として育てる第1章。妻マリアが“何か”に注ぐ愛情が暴走していく第2章。そして穏やかだった日常が急転直下し、“何か”の正体が明かされる衝撃の第3章。3部構成になっている本作は、寡黙な語り口で終始貫かれているのが印象的。衝撃的な設定をことさらセンセーショナルに煽らず、何でもない日常的な光景として淡々と描くことで、非現実的なエッセンスを現実世界に溶け込ませ、不穏なムードを緊張感たっぷりに際立たせている。
そんな現実離れした物語でありながら、なぜか見ているうちにその状況を自然に受け入れずにいられない。それは「愛と喪失」という普遍的なテーマを潜ませているから。最愛の娘を亡くした夫婦が主人公であることが、奇妙な“何か”を受け入れることに説得力を与えると同時に、どこか心を揺さぶる共感を誘うのだ。もちろん、物語の軸となるマリアというキャラクターに厚みを加えるノオミ・ラパスの熱演も大きく貢献している。
超現実的な出来事があらゆる現実をのみ込んでいく、不条理な映像世界──。民話とホラーが禁断の融合を果たし、『ミッドサマー』を送り出したA24が惚れ込んだ前代未聞の衝撃を体感したい。
『LAMB/ラム』
監督/ヴァルディミール・ヨハンソン
出演/ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソンほか 2021年 アイスランド・スウェーデン・ポーランド映画
1時間46分 9月23日(金・祝)新宿ピカデリーほか全国公開
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