イタリア・フィレンツェの名門サルトリアとして知られるリヴェラーノ&リヴェラーノ。今年3月に日本初となる旗艦店が、大阪・北浜にオープンした。壁面什器から天井にかけて檜材の縦格子が連続する和の意匠で、イタリアの老舗ブランドが日本の風土に根付くことを目指している。
内装設計を担当したのが鬼木デザインスタジオ。代表の鬼木孝一郎は大学で建築を学んだ後、大手組織設計事務所の日建設計に入社。その後、デザイナーの佐藤オオキ率いるnendoに加わり、空間デザインチームのチーフディレクターとして10年にわたり国内外のプロジェクトに携わってきた。2015年の独立直後に担当した期間限定店舗「エルメス祇園店」が話題となり、一躍脚光を浴びる。以降、建築やインテリア、プロダクト、インスタレーション作品を手がけるなど、活動の幅を広げている。
なかでも話題の国内ブランドの店舗設計に数多く携わっているのが鬼木の特徴だ。ブランドがもつ理念やコンセプトを、空間全体で体現することに定評がある故だろう。東京都内の複数店舗を設計した化粧品のシロでは、浮遊感のある左官仕上げのカウンターを主役にするなど、マテリアルの持ち味を活かしたデザインを提案。自然素材を用いたブランドのものづくりの姿勢を表現した。こうした引き算の美学から生まれる繊細で透明感あふれる作風は、国内外の賞を数多く受賞するなど、ますますその活動が期待されている。
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鬼木孝一郎が携わってきた代表的な建築
【Keyword 1:引き算のデザイン】
大理石の外壁を引き立てる白をベースに、ガラスや金属など硬質な素材を用いた「ステュディオス ウィメンズ 丸の内店」をはじめ、鬼木がこれまで手がけた多くのプロジェクトに共通するのが、装飾を最小限に抑えた“引き算の美学”だ。
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【Keyword 2:ブランドの美意識を表現】
北海道発のコスメティックブランド、シロの東京都内6店舗を担当。廃棄予定の酒かすや昆布などの素材を活用し、エシカルなものづくりを行うブランドの理念を、左官材などの自然素材やニュートラルカラーを用いた透明感のあるデザインで表現。
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【Keyword 3:繊細な和の意匠】
日本建築の構法や意匠、素材を現代的に再構築した空間づくりが、鬼木の特徴のひとつ。「パブリックトウキョウ 大阪」では軒先に着想を得た空間を、「エルメス祇園店」では伝統的な木造建築に見られる“木組み”の技術を応用した什器を提案。
鬼木孝一郎
1977年、東京都生まれ。早稲田大学大学院卒業後、日建設計勤務を経て、デザイン事務所・nendoに入社。チーフディレクターとして10年間ほど携わった後、2015年に鬼木デザインスタジオを設立。これまでに国内外の賞を多数受賞。
※この記事はPen 2022年9月号より再編集した記事です。