創立140周年記念展が日本に上陸、イッタラのモノづくりの真髄に迫る『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』が開幕

  • 編集&文:久保寺潤子
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北欧デザインのパイオニアにして、フィンランドを代表するライフスタイルブランド、イッタラ。創立140周年を記念してヘルシンキで行われた展覧会に続き、この秋日本で開催する『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』を紹介する。

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1881年、フィンランド南部・イッタラ村のガラス工場から出発したイッタラは、豊かな自然美や地域に根付いたデザインを取り入れながら、機能性と美しさを追求してきた。昨年ヘルシンキで開催された『イッタラ カレイドスコープ』展ではその哲学や技法、ガラス制作に使用する型や道具、技術を伝える動画など、モノづくりの現場に迫る展示が好評を博した。日本の巡回展ではこれをベースに歴史や歴代デザイナー、日本との関係を紹介する部門を加え、その魅力を多角的に紹介する。

本展巡回予定の高知県立美術館の長山美緒学芸員は、北欧の吹きガラス工房での制作経験をもつ。長山は本展の見どころのひとつにデザイナーと職人の関係性を挙げる。

「1950年代に活躍したデザイナーの作品が長きにわたって愛されているのは、職人の存在も大きいです。フィンランドでは、デザイナーは素材を深く理解してデザインすべきだと教えられます。紙の上だけでデザインするのではなく、職人と一緒に工房に入ってガラスという素材の特性を学びながら仕事をしているのが特徴です」

アルヴァ・アアルトやカイ・フランク、タピオ・ヴィルカラ、オイバ・トイッカら多くの名作を生み出したデザイナーたちは、デザインはもちろん、型作り、吹きガラス、彩色などの過程で、それぞれの職人と共同作業を行った。展覧会では制作現場の様子を実物と映像で見ることができる。

日常生活に使いやすい製品であることもブランドの変わらぬコンセプトだ。

「安定した形のワイングラスやスタッキングできて場所を取らない食器は、日本の住宅事情にも受け入れやすかった。また冬が長く続くフィンランドでは、ガラスは家の中に彩りをもたらしてくれる大切なアイテムなのです」

自然をモチーフにした機能的かつ独創的なデザインで、ライフスタイルを豊かにいろどるイッタラのモノづくりの真髄に触れてみたい。

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1.『パーダリンヤー(パーダルの氷)』タピオ・ヴィルカラ(1960年)

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© Design Museum Finland, Photo: Johnny Korkman

ガラスに氷の解釈を取り入れたタピオ・ヴィルカラの初期の作品。パーダルとはラップランドにある湖の名で、作家が過ごした別荘の近くにある。

2.工場でのガラス制作風景

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© Iittala

アルヴァ・アアルトコレクションのベースの制作風景。吹き竿で膨らませたガラスを型に入れて吹き込み、取り出したあとベース部分を外し、熱処理、研磨を経て商品が完成する。  

3.『マルセル』ティモ・サルパネヴァ(1993年)

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© Design Museum Finland, Photo: Johnny Korkman

イッタラでは1930年代以降、無駄を削ぎ落としたデザインの、食器やカトラリーが生み出された。他のデザインの食器とも組み合わせやすい。

4.『ヒーデンニュルッキ(悪魔のこぶし)』『ヒーデンケフト(悪魔のゆりかご)』 ティモ・サルパネヴァ(1951年)

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  © Design Museum Finland, Photo:Pietinen

ティモ・サルパネヴァによる「ヒイシ(悪魔)」シリーズ。ヒイシは「神聖な木立」を意味し、悪魔とも呼ばれる。  

5.『ルーツ』コレクションロナン&エルワン・ブルレック(2015年)

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© Ronan and Erwan Bouroullec

イッタラでは 200色の豊富なカラーパレットを有する。透明なガラスの原料に、主として金属酸化物を加え溶解することで、さまざまな色が生まれる。

6.ガラス制作のための道具

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© Iittala

アルヴァ・アアルト コレクション ベースのための木型と、吹きガラスに用いる吹き竿。展覧会ではさまざまなアイテムに使う型や、制作工程を展示するほか、映像を駆使して技術を伝える。  

7.『フォレスト』タピオ・ヴィルカラ(1963年)

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© Design Museum Finland, Photo:Ounamo

短い脚と安定した形状のグラスは、日常使いに適したデザイン。スタッキングできるので、場所を取らずに整然と美しく収納することができた。

8.『アアルト・ベース「クリア1937」』

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© Iittala

展覧会では1937年発売の『アアルトベース』を、当時の特別な色で復刻販売する。底面は展覧会記念刻印入り、高さは95㎜と120㎜の2種類。会場やイッタラショップにて販売予定。  

9.オイバ・トイッカによる『バード バイトイッカ』コレクション

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© Iittala

オイバ・トイッカは独創的で遊び心に富む大胆なガラスアートを数多く制作した。とくにガラスの特性を活かした『バード』コレクションが有名。  

10.『カンタレリ(アンズタケ)』タピオ・ヴィルカラ(1947年)

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© Design Museum Finland, Photo:Ounamo

タピオ・ヴィルカラは、400種以上のイッタラ製品をデザイン。北欧の黄金のキノコをモチーフにした『カンタレリ』は有機的なデザインが特徴だ。

『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』

開催期間:9月17日~11月10日
開催場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開催時間:10時~18時 ※金・土は21時まで。
入館は閉館の30分前まで
休館日:9/27
www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_iittala

約450点の作品を中心に、映像、インスタレーションも展示。全国で巡回予定。

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