〈スマートフォン〉
SHARP AQUOS R7(シャープ アクオス アールセブン)
製品はモデルチェンジによって改良が加えられるが、最近、これほど鮮やかに変身した例は稀有だ。シャープのハイエンドスマートフォンとして昨年発売されたR6は、大型の1インチCMOSセンサーを搭載した、カメラの名門ライカとの提携製品だった。大変な話題を呼んだものの、シャープとしてはある意味、忸怩たるところもあった。一例を挙げると、オートフォーカス(AF)速度。「もっと速くしてほしい」という要望が多くのユーザーから寄せられた。
そこで一念発起し、新モデルのR7はセンサー動作、AF動作を徹底改良。明暗差を手がかりにピントを決めるコントラスト方式が的確さに欠けたため、合焦性能が格段に高い位相差検出方式に変更、それを全画素で実行する。センサーは同じ1型だが、画素を2020万から4720万に増加。画素数が増えると解像度は上がるが、画素サイズが小さくなり感度は下がる。そこで明るい環境での望遠時は全画素をそのまま使い、暗い場合は画素を束ねてサイズを大きくし、感度を上げる新機軸を導入。約1200万の画素数で、光を捉えるのだ。
その改善度合いは、驚くべきものだ。目論見通り、AF動作が格段に速くなった。スマホを対象物に向ければ、瞬速でターゲットにピントを合わせる。小気味よい動きだ。シャッターボタンを押してから次動作へのスタンバイも敏捷。
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画質は、さすがライカカメラ監修というべきか、色の情報量が豊潤だ。暗部から明部まで、階調情報が前作と比較にならないほど多い。ここにお見せしたのは東京・お台場の夜景だが、普通のスマホなら、手前の明るいLOVEの文字が白く飛んで色褪せ、背後の暗い中にあるレインボーブリッジ、自由の女神も闇夜に沈むところだが、R7は格段に広いダイナミックレンジにて、しっかりと色の階調を確保。これぞ、ライカによって徹底的に鍛えあげられた画質成果だ。
傑作は2代目に、成った。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
※この記事はPen 2022年9月号より再編集した記事です。