2019年、彗星のごとく現れた日本酒がある。
その佇まいは凛として、箱を開けた瞬間、重厚感と共に静かなオーラが漂う。グラスに注いで口に含んでみれば、パッと花開く香味は華やかかつエレガントだ。手にした者の五感を刺激し、日本酒の概念を一新するその逸品は、「TAKANOME」という。毎週水曜の販売日には即完売。「幻の酒」と謳われるTAKANOMEが人々を魅了する理由は何なのか。今回は、創業者である平野晟也氏にインタビュー。その魅力に迫った。
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TAKANOMEとは
TAKANOMEは、200年の歴史をもつ山口県の老舗酒蔵「はつもみぢ」と株式会社Forbulとが共同開発し、2019年に誕生した高級日本酒ブランドだ。酒米の王様といわれる山口県産山田錦を100%使用し、3日間かけて丁寧に搾られる酒は、この小さな酒蔵でしか生まれない唯一無二の味わい。精米歩合が低いほど高級だとされる業界の評価軸に疑問を抱き、異例の「精米歩合非公開」に。数字に惑わされず、誰もが飲んで直感的に「うまい!」と思える感覚のみを追求して勝負する。老舗酒蔵と二人三脚で歩んできた過程には、まさに「日本酒」という作品に入魂する職人の拘りと創業者平野氏の熱い想い、そしてTAKANOMEを語る上で欠かせない独自の「哲学」が込められている。
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TAKANOMEの哲学1 “徹底したうまさの追求”
TAKANOMEが他の日本酒メーカーと一線を画するのは、独自の「哲学」とも言えるブランド理念を掲げていること。その一つとして筆頭に挙げられるのが、「徹底したうまさの追求」である。
一般的に日本酒業界では、米をどれだけ磨き上げたかという「精米歩合」の数値が低いほど高級だと評価される傾向がある。しかし、これでは肝心の味よりも先に、精米歩合をいかに下げるかというスペック勝負になってしまう恐れがある。確かに米を極限まで磨き上げればクリアですっきりした味にはなるが、同時に米本来の旨味や個性が薄くなるのも事実。TAKANOMEでは、敢えて精米歩合を伏せることで、数値で判断するのではなく誰もが飲んで単純に「うまい!」と思えるかどうかを判断の基準とした。
「誰もが飲んでうまいと思えるかどうか、この基準は実はとても難しいんです。当初は、同じ製法なのになかなか味が一定しませんでした。各地で行われるマルシェ、イベントなどに丸一日立って何百人というお客様に試飲してもらい、その声を地道に聞きました。何が良くて何が悪いのか、その時の状態を知ることで徐々に基準となる味のベースを掴んでいったんです」と、平野氏は一定以上の味を保つことの難しさを語る。
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「はつもみぢのような昔ながらの製法を使っているところは、同じタンクでもその時の環境や杜氏の技術によって味が変わってきます。逆にいうと、ボタン1つで均一の味が作れてしまう大量生産の日本酒と違って、作品としての面白さ、個性があると思っています。日本酒業界は、こういった日本酒の多様性をもっと打ち出していくべきなんじゃないかと思いますね」
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平野氏は、かつて仕事で行きづまっていた際に偶然飲んだ日本酒のおいしさに驚愕し、人生が変わったという経験をもつ。その時味わった感動を、TAKANOMEを飲む時にも感じて欲しいのだという。
「常に、あの時の感動は忘れないようにしています。TAKANOMEの味は、口の中で3段階に変化します。日本酒好き、玄人の方々に好まれるキレやコクがありつつも、初めて口に含んだ時にパッと花開く甘味とパイナップルのようなフルーティーさは、日本酒初心者や、ワイン好きの方にも好んで頂けると思います」
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TAKANOMEの哲学2 “五感に訴えかける体験を提供する”
TAKANOMEが大事にしているのは、単純に舌で味わう「うまさ」だけではない。空間や料理とのペアリング、人とのつながり、口に運ぶ瞬間までを全て含めて、五感に訴えかける体験こそがTAKANOMEの目指すうまさである。そのための一つに、パッケージのデザインが挙げられるだろう。
TAKANOMEのパッケージは、艶を消し、敢えてムラを出したマットな黒地に、ゴールドの控えめな箔押し。冒頭で述べたように、この箱を初めて手にした時、シンプルながら静かに漂うオーラに、まずは只ならぬ特別感をおぼえるだろう。そして、箱の中に収められた漆黒のボトルは、どのような場面や特別な瞬間にもしっくり馴染む洗練された美しさがある。
デザインについては一朝一夕にはいかなかった、と平野氏は振り返る。
「非常に苦労しました。毎日机に置いて、出社する度に眺めていました。そして、いつ見てもカッコイイ!1ヵ月見続けても飽きないなと思えた時に、このデザインでいこうと決めました」
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「侘び寂びといった日本独自の美意識を盛り込みつつ、かつモダンさを生み出すために北欧のデザインも組み合わせています。また、海外の洋酒文化にも馴染むよう工夫しています。伝統的な日本酒のパッケージというと、ちょっとガヤガヤしていて少し違和感がある。しかし、このデザインであれは日本らしさが漂いつつもワインなどと一緒に並べても馴染みます。海外でも日本酒を普段のお酒として飲んでもらいたい、そんな想いが込められています。」
贈り物として手にした瞬間の華やいだ気持ち、ラグジュアリーな空間、様々なライフスタイルの中に置いて映える美しさ、TAKANOMEを飲むことには、そんな特別な体験が含まれている。
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TAKANOMEの哲学3 “文化で魅せる日本に”
TAKANOMEは、日本酒を日本文化の結晶と捉え、文化の発展でもって日本を引っ張ってゆく存在になるということをブランドの使命としている。近代合理主義の中で人間関係が希薄になり、経済の発展と同時に心を病む人々も増加した。そんな中、昨今では人々の心を豊かにする文化的側面(歴史、自然、食、ものづくりなど)が見直されつつある。TAKANOMEは、日本酒を職人による作品の1つとし、工芸や華道、書道、和食といった日本のハイカルチャーと様々なコラボレーションを実施。日本文化というブランド価値を底上げし、人々の心を豊かにする活動を行っている。また、これらを海外に向けて発信することで、世界で勝負できる魅力ある日本文化の発展を目指す。
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TAKANOMEの哲学4 “既存の概念にとらわれない鷹ノ目の視点”
TAKANOME(鷹ノ目)というネーミングには、大空を高く飛ぶ鷹の如く、ものごとを高く広い視点で眺め、既成概念にとらわれないという意味が込められている。精米歩合を非公開としたのも業界の常識からすれば異例のこと。
「特定名称酒としてのコンテストには出品できなくなりましたが、それでも本質的なうまさを追求したかった。既存の概念を壊したかったんですね」
オンラインのみでの販売という新たな流通の仕組みも、これまでとは違う試みだ。また、後述する熟成酒のように、日本酒に資産的価値を持たせることも考えているという。
「日本酒に資産的な価値を持たせ、世界中の金融業界からも注目されるような仕組みの構築をしたいと思っています。こういった視点を入れて市場を広げようとしている日本酒ブランドは少ないと思います。業界内で井の中の蛙にならず、常に俯瞰的に日本酒というものを考えるようにしています」
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新たなステージに向けて ~海底熟成・海外進出~
現在、販売開始わずか5分で完売してしまうほどの人気を誇るTAKANOMEだが、平野氏は更なるステージに向けて行動を開始しているという。
・海底醸造
まずは、8月17日リリース予定の「海底熟成酒」の開発。これまで日本酒はフレッシュさを楽しむものであった。しかし、ワインなどでは樽や海底で熟成させた古酒というものが存在し、それらはまた熟成によって味が素晴らしく変化するのだという。
「熟成を日本酒でやるとどうなるのだろう?という単純な興味もありました。また、製造の外側でどう味の多様性を追求できるかということも課題の1つです」
「また、熟成によって、置いておくことに価値が見出せるようになれば、日本酒に資産的価値を生み出すことができます。各国の富裕層にももっとアプローチできますし、ワインやウイスキーファンドのように、金融市場が入り込めばマーケットが拡大するでしょう。日本には水楢や桜など色々な樽があるので、海底熟成だけでなく樽熟成なども面白いかもしれません」
・海外進出
また、今後は海外進出を視野に入れているという。今年5月にその一歩となるイベントが開催された。世界中の映画関係者が集まる「カンヌ国際映画祭」でのイベントDPA Loungeに、日本酒業界としては初の出品を果たしたのだ。期間中約200名の各国セレブ、映画関係者がTAKANOMEを試飲し、これまでの日本酒に対するイメージを一新するその味に高い評価が集まった。
「これからは、グローバルな企業になった上で、日本というローカルに還元をしていく必要があると感じています。そのためには、単に輸出をするだけでなく海外に拠点を持ち、現地のレストランなどと様々な関係を作ったり、自らその土地のコミュニティーにしっかり入り込むことも大事なのではと思っています」
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おわりに
誕生から3年。業界の常識を越える変化をもたらしてきたTAKANOMEだが、ここまでの道のりには多くの苦悩と試行錯誤の日々があった。目先の利益やトレンドだけを追い求めるのではなく、本質を見極め、真に良いものを作りたい。人々を魅了する「うまさ」の底には、酒蔵やスタッフの熱い想いが独自の「哲学」となって存在する。
2021年度世界経済フォーラムでは、最も観光したい国の第一位に日本が選ばれた。TAKANOMEが考えるように、日本酒を日本文化の結晶と捉えるのならば、世界に向けて日本酒を発信するチャンスは今だ。鷹が空高く飛び立つように、更なる高みに向かってTAKANOMEの飛翔は止まらない。
TAKANOME
価格:¥15,400
アルコール度数:16%
内容量:720ml
製造元:はつもみぢ
公式オンラインショップにて毎週水曜21:00~販売
公式オンラインショップ:https://takanome-sake.com/
TAKANOME 混沌と秩序
TAKANOME(鷹ノ目)に「火入れ」を実施して誕生。独自の技術により、完熟パイナップルのような甘い香りと、まろやかな米のうまみを引き出すことに成功した。商品名『混沌と秩序』は、哲学者 ニーチェの格言「混沌をうちに秘めた人こそ躍動する星を生み出すことができる」よりインスパイアされて命名。高度な職人の技術により進化したTAKANOMEの新たな「作品」をご堪能ください。
価格:¥22,000
アルコール度数:16%
内容量:720ml
製造元:はつもみぢ
販売方法と販売日:
・一般抽選販売:7/25(月)10:00 〜 8/15(月)23:59(応募期間)
特設ページ:https://takanome-sake.com/pages/chaos-and-order
*一般抽選販売の詳細はHPにて記載いたします。最新の情報はHPよりご確認ください。