世界最大級のデザインの祭典、ミラノデザインウィーク。今年6月、本格的に再始動の時を迎え、インテリアを中心とするあらゆる分野のデザイナーがミラノに集結した。今回は、次なる時代を彩る注目の展示20個を紹介する。
Studio Luca Guadagnino
名監督が手がけた、初のインテリア
映画『君の名前で僕を呼んで』の監督として知られるルカ・グァダニーノが、自身初となるインテリアプロジェクトを発表。同じ構成でありながら、色彩や仕上げ、家具や小物のセレクトを変えることで、異なる印象を与える空間を対照的に配置。壁面の木製パネルを遠近法を応用して貼ることで、空間に奥行きが生まれ、ぐっと引き込まれる演出がされていた。
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Bloc Studios × NM3&SUNNEI
大理石の印象を変える、異素材との組み合わせ
さまざまな外部デザイナーと協力しながら、通常の製造工程から出る余剰大理石を再利用するブロック・スタジオズ。今年は金属を得意とするデザインスタジオNM3と、異素材を組み合わせたシェルフや家具を発表(右写真)。また、ファッションブランドのスンネイとのコラボレーションでは、テーブルウェアとダイニングセットも提案していた。
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Grace Prince
儚さの裏にある、絶妙なバランス
ロンドンに生まれ育ち、セントラル・セント・マーチンズを経て渡伊。ヴィンチェンツォ・デ・コティスの元で経験を積み、現在はミラノで活動するグレース・プリンス。多様な素材で構成されたテーブル「スタティック・フラジリティ」は、アンバランスでいまにも壊れそうな儚さを湛えているが、機能性は十分。不完全さのなかに生まれる独自の美を追求している。
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LOEWE
進化していく、クラフトの現在地
人の手技で更新される工芸のあり方を、ロエベらしい切り口で表現している。ロエベクラフトプライズのファイナリスト、ヤンソン・リーとともに韓国の手漉き紙「韓紙」を紐状にまとめ手提げに仕上げたものや(写真奥)、スペインのガリシア地方に伝わる蓑にも似た雨具(写真左)に用いられる技法を応用したフリンジバッグを展示。他に世界中から集めたバスケットをレザーで修復した作品も展示された。
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SolidNature × OMA+Sabine Marcelis
石材の可能性を広げる、革新的な加工技術
石材ブランドのソリッドネイチャーが、設計スタジオのOMA、デザイナーのサビーネ・マルセリスとともに石材の革新的な加工技術を提示した。エントランスでは9種類のオニキスを使って素材にフォーカスし、ピンクのオニキスを使った浴槽などマルセリスとOMAの作品を展示。
粉末と樹脂の混合や、石材に粉末を吹き込んで新しい色調を生み出す技術など、石材の可能性を広げる仕組みとなった。
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UniFor × OMA
OMAと開発した、オフィス家具が誕生
イタリアのオフィス家具メーカーであるユニフォーが、設計スタジオのOMAと開発したコレクション「プリンシパル」を発表。リング型ソファ、二重構造の天板をもつテーブルなど、ユニークなモジュールシステムの家具は個人宅やラウンジなどワークスペースの自由度を高める。OMAの起用によって、オフィスを手がける建築家を刺激する家具を目指している。
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Hermès
軽やかにイメージを広げる、エルメスの世界
ほの暗い空間に、巨大な行燈のような4つの構造体がぼんやりと浮かび上がる。今年のエルメスが展示テーマに掲げたのは「軽やかさ」。給水塔をモチーフにしたという構造体のなかでは、繊細なフォルムのレザーのセンターピースほか、磁器、家具、照明など、幅広いオブジェを紹介。同時に、それぞれに特徴的な製造工程やパターンを用いたカシミア製のテキスタイル5種も展開した。
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Loro Piana × Raphael Navot
上質な素材を生み出した、広大な砂丘を再現
ロロ・ピアーナは、イスラエル出身のラフェエル・ナヴォとともにミラノの新社屋、コルティーレ・デッラ・セッタで新作家具「パーム」を発表。空間は、同社が取り扱うカシミアの原産地であるモンゴルやネパールの高地をイメージしたもの。緩やかに起伏する砂丘のようなインスタレーションのなかに、カシミアやウールの張り地を施したソファなどを展示した。
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DIOR MAISON × Philippe Starck
名作を再解釈した、スタルクの新作
ムッシュディオールが愛したルイ16世様式を象徴する「メダリオンチェア」。フィリップ・スタルクがこれを再解釈した「ミス ディオール」が誕生した。「生涯を通してリトルブラックドレスを探し求めた人がいたように、私がずっと夢見てきたのは、パーフェクトな小さな椅子でした」とスタルクは語る。洗練されたフォルムと華やかな色づかいに、大胆さと優雅さを併せもつ女性らしさを感じる一脚だ。
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Armani/Casa
東洋と自然を巡る、静かなる旅
多様な文化的要素と技術を織り交ぜながら、独自の世界を表現するアルマーニ/カーザ。今年は、日本と中国を軸にした東洋的な美学にさらにフォーカス。波紋とオリエンタルな色調のテキスタイルを用いたベッド「モルフェオ」や、しなやかさと凛とした態度をもち合わせる竹のモチーフを展開した椅子「シャロン」など、いつにも増して有機的なフォルムとやわらかさが印象的なコレクションだった。
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FLOS
クリスタル製ベースを使った記念モデル
1962年に創業したフロスは、同じ年に発表された名作照明「アルコ」に、60周年を記念した特別モデル「アルコK」を発表した。従来は大理石を使うベース部分に、透明度の高いK9クリスタルを使用。世界で2022台の限定生産品でもあり注目が集まる。その他の新作として、ブランド初参加となるグリエルモ・ポレッティの「トゥータイ」も注目されていた。
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Lee Broom
彫刻が纏う布のドレープを照明に
ロマンティックな世界観を得意とするロンドンのデザイナー、リー・ブルームは、教会や修道院を彷彿とさせる荘厳な雰囲気のなかでインスタレーションを展開。新作「レクイエム」は、ブルーム自身がハンドメイドでつくった限定品。古代の人物彫刻が纏う衣服のドレープから発想を得てデザインしたものだ。ドレープのような部分は古代の人物彫刻が纏う衣服から発想を得てデザインされ、石膏で浸されたシートでつくられている。
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Cassina × Virgil Abloh
遊び心あふれる、ヴァージル・アブローの遺作
異なるサイズの2つのブロック体を縦横に組み合わせ、ソファ、ベンチ、テーブルなど、さまざまな形を実現する「モジュラー・イマジネーション」は、昨年他界したヴァージル・アブローの遺作。硬質で工業的な外観にもかかわらず、座り心地はとても柔らか。素材もリサイクル可能。鮮やかなオレンジ一色でまとめた空間に、いくつものモジュラーを並べていた。
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Maison Matisee × Formafantasma
マティスの切り絵を、照明のかたちに
“色彩の魔術師”とも呼ばれた画家、アンリ・マティスの美学を、現代の暮らしのオブジェへと転化していくメゾン・マティスがフォルマ・ファンタズマと協業した照明だ。マティスが晩年に多数手がけた切り絵から発想を得ながら、照明「フォールド」が完成した。平面パターンを立体へと展開しながら、吊り、床置き、壁掛けなど、全6タイプが完成した。
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B&B Italia
マリオ・ベリーニの名作が装いを一新
脚もフレームもない、クッションだけで構成されたソファ「レ・バンボレ」。マリオ・ベリーニが1972年にデザインした名作が、誕生から半世紀を記念してバージョンアップ。さらに快適な座り心地と丈夫なつくりに改良した他、張り地も多彩に。会場では、ステラ・マッカートニーによるファブリックを施した作品(写真)も展示された。
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Vaarnii
フィンランド発の新生ブランド
森の自然環境を守りながら、ミニマムで良質なデザインを追求すべく創業し、初のコレクションを発表したフィンランドのブランド、ヴァルニ。シンプルながら、ディテールにこだわりを見せる16アイテムのデザインは、新しい北欧の風を感じさせる。デザイナーには、セシリエ・マンツやイ・カンホ、マックス・ラムなどの実力派が担当している。
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KOYORI
日本の総力を結集して、世界に
精緻な技が光る日本の家具づくりを改めて世界にアピールするために、有数の日本メーカー数社がタッグを組み、ひとつのブランド「コヨリ」としてミラノに初参戦。ブルレック兄弟、ガム・フラテージと協働しながら、チャレンジングな取り組みを行い、「シャク」(写真手前)や「ムスビ」(写真奥)の他、全部で4種の椅子を発表した。
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TAJIMI CUSTOM TILES × Ronan & Erwan Bouroullec
タイルの概念を超えたアートオブジェ
日本有数のタイルの産地、岐阜県多治見ならではの技法を活かして、タイルのオーダーメイド制作のサービスを行うブランド。マックス・ラム、イ・カンホに続く第3弾として、ブルレック兄弟が参加。押出成形による円筒と普遍的な直方体のタイルを組み合わせ、独創的な形のオブジェを開発。パーツごとで色彩を違え、釉薬の味わいと幅広さも表現した。
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AHEC × Studio Swine
廃棄ゼロを目指す、プレゼンテーション
村上あずさとアレキサンダー・グローブスのスタジオスワインは、廃棄物のない展示を実現。
アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)とデザイナーとの協働による22点の家具を、輸送時のクレートを積み上げてディスプレイした。見る角度により移り変わる森の絵は、木の文学的側面に着目したもの。環境負荷を抑えつつ、数々のストーリーが折り重なる空間となった。
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Rooms Studio
宗教空間からヒントを得た、中庭に置かれたベンチ
ジョージアのトビリシ拠点の2人組、ルームス・スタジオ。インスタレーション「ルート・イン」は、イスラム教、キリスト正教会、ビザンティン様式などの宗教空間を参照したアーチをもつ金属の椅子で構成された。6点の椅子は月曜から土曜までを表す。歴史的建築の中庭に置かれた緊張感あふれる椅子が、来場者の憩いの場になっていく様子も印象的だった。
※この記事はPen 2022年9月号「レンジローバーで走れ!」の第3特集「世界のいまがわかる、ミラノデザインウィーク最新レポート」より再編集した記事です。