リシャール・ミルとフェラーリのコラボモデル第1弾は、ケース厚が僅か1.75㎜の極薄機械式時計!

  • 文:笠木恵司
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リシャール・ミルとフェラーリのパートナーシップで誕生した「RM UP-01 フェラーリ」。ケース厚1.75㎜の驚異的な極薄手巻きモデル。ケースバックが地板を兼ねるのでなく、ケース内部にムーブメントを搭載する従来型構造の採用によって耐衝撃性を確保。5000Gを超える加速度に耐えるという。

リシャール・ミルの時計は超高額で知られているが、その背後に卓越した発想と技術力を備えていることが鮮やかに実証された。フェラーリとのパートナーシップによる第一弾のコラボモデル「RM UP-01フェラーリ」は、ケース厚が僅か1.75㎜の驚異的な極薄手巻き。しかも、近年の極薄時計はケースバックが歯車などを固定する地板を兼ねているのに対して、ケース内部にムーブメントを収納する従来型の構造を踏襲。ハードな実用に必要不可欠な耐衝撃性の確保が目的であり、実際に5000Gを超える加速度にも耐えるという。

当然のことながら、ムーブメントはケース厚をさらに下回る1.18㎜しかない。この極薄空間に輪列などを収めるため、歯車と針の重なりをできる限り水平方向に分散して高さを抑えている。ただし、時計の心臓部であるテンプの軸にはアンクルを衝撃から守る2つの重要なパーツが取り付けられており、薄型化を阻む障害となっていた。そこで、この2つのパーツを排除して、その役割をアンクル自体が担うように再設計したウルトラフラット脱進機を開発。極細のゼンマイを収納したウルトラフラット香箱と合わせて特許を取得している。

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厚さ1.75㎜のケース内部には、さらに薄い1.18㎜のムーブメントを搭載。ケースはグレード5のチタン製モノコック構造なので、衝撃に強い。1気圧だが防水性も確保。ストラップはブラックラバー。

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コンセプトウォッチではなく、普段使いできる実用性を確保

ケースは硬度が高く軽量なグレード5のチタン製で、両サイドがカーブしたトノー型(樽型)。前述したようにパーツを水平方向に分散したため、ダイヤルは一般的なスタイルとはかけ離れているが、フェラーリのシンボルである跳ね馬のシルエットによって、特別な高級時計であることがひと目で分かる。時分針は上部の中央にあり、その右側には時計の心臓部として往復振動するテンプを配置。左側には巻き上げ(W)と針合わせ(H)を選べるファンクションセレクターとリューズ機構が縦に並んでいる。セレクターのポジション変更と、下部のリューズ機構による巻き上げや時間調整は専用工具を使用する。

そのほかにも高速回転バレルやトルク伝達の高効率化など、さまざまな最新テクノロジーが導入されているが、世界一を狙ったコンセプトウォッチではなく、普段使いできる実用性が際立った特長といえるだろう。超高額モデルでは極めて珍しい150本限定という大胆な設定は、その高らかな宣言とも解釈できる。

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ムーブメントの地板とブリッジもグレード5のチタン製。軽量で硬度が極めて高く、耐食性にも優れている。

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常識を覆してきた超高級ブランドの集大成モデル

2001年に創業したリシャール・ミルは、それまで金庫の奧で貴重品として扱われていた精密なトゥールビヨンをアウトドアに引っ張り出したことが最初の功績といっていい。機械式時計で秒を刻む調速脱進機はデリケートであるため、衝撃はタブーだったが、リシャール・ミルはテニスやゴルフ、カーレースなど過酷な条件でも着用できる複雑時計を開発してきた。それだけでなく、超軽量で剛性に優れたカーボンTPTなどの先端素材も積極的に導入。高級時計は貴金属製の重厚感に価値があるという常識も、完全に覆してしまった。

今回の「RM UP-01フェラーリ」は、こうした積み重ねの最高峰に位置するひとつの集大成と考えられる。価格も2億円を超えるので、まさに雲上の超高級時計というほかない。だが、敢えて限界に挑み、知恵と技術を結集して克服しようとする姿勢は、誰でもどんな職業でも可能ではないだろうか。

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上部中央に時分針、その右側は時計の心臓部であるテンプで、毎時2万8800振動(4Hz)。左端上部は巻き上げ(W)と針合わせ(H)を選べるファンクションセレクター。その下にリューズ機構があり、専用工具を使用して巻き上げや時間調整を行う。「RM UP-01 フェラーリ」手巻き、チタンケース、ケース径51mm x 39mm、パワーリザーブ約45時間、ラバーストラップ、1気圧防水、世界150本限定。¥247,500,000(予価)

問い合わせ先/リシャールミルジャパン TEL:03-5511-1555

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