「砂漠のロールスロイス」「SUVの最高峰」と評されるレンジローバー。こうした名声はいかに生まれたのか。過去のエピソードを振り返り、検証する。
レンジローバーのはじまりは、意外にシンプルだった。「街乗りもできるランドローバー(本格クロスカントリー車)があったら便利だろう」という思いつきが原点だ。「ロードローバー」と呼ばれたそのコンセプトを、エンジニアのスペン・キングとゴードン・バッシュフォードが煮詰め、1967年から本格的にプロジェクトとして着手。デビッド・ベイチュのデザインによるボディを載せて年に初代を発表したのだった。
当時のロンドンでは、オーナーの生活を如実に物語るクルマとされていた。レンジローバーを持つことは、それを必要とする広いエステート(土地)をスコットランドなどに所有していることを意味したからだ。
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英国のみならず、世界中でこのクルマが評価されたのは、まずは機能性からだった。広いウィンドー、クルマの脇が目視しやすいように、うんと低くされたウエストライン、エンジンメンテナンスが容易なクラムシェル型ボンネット、さらに出先で破損しても汎用品と交換可能な丸型ヘッドランプなどの特長にあった。
シンプルだけれど、つくり手の主張が随所に感じられるプロダクトとしてのデザインが、クルマ好きの食指を動かすことになる。
レンジローバーのデザイナーの才気を感じるのは、機能とデザインが強く結びついたこのクルマのモデルチェンジを、巧みにやりとげてきたこと。フルモデルチェンジを4回行い、52年にわたってレンジローバーというブランドを確固たるものとしてきた。
4代目では、イタリアの高級スピードボート「リーバ」にヒントを得たというボートテイルスタイルを採用。車体後方にいくにしたがって、ぎゅっとすぼまったようなリアの造型は、それまでと一線を画すスピード感をもたらすデザインとして成功している。
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エンジニアの努力もブランドに大きく貢献した。高速でも快適なサスペンションシステム、アルミニウムボディによる軽量化(4代目以降)、オフロードでも一般道でもすぐれた走行性能を発揮するドライブトレイン、という具合。初代で早くも4輪ディスクブレーキを搭載し、90年には4チャネルのABS(アンチロックブレーキシステム)を装着。これはSUVとして世界初の装備だった。
レンジローバーは、ラグジュアリーな雰囲気がよく似合う一方で4WDの性能を限界まで追求。電子装備も駆使し、最善の機能性を目指している。その徹底ぶりもブランドの価値を担保しているのだ。新型が出るたびに私たちはうれしい驚きをおぼえてきた。
新しい道を常に切りひらくことを得意とするレンジローバー。そこに名だたるSUVの真価があるのではないか。
※この記事はPen 2022年9月号「レンジローバーで走れ!」特集より再編集した記事です。