■台湾の消費者が食品を買う時に重視することは?
『台灣食品消費調査統計』によると、台湾の消費者が食品を選ぶ際に重視しているポイントは「鮮度 76.2%」「安全性 73.7%」「価格 48.6%」「味 40.8%」「効果効能 24.2%」「環境保護 21.6%」「ブランド 11.8%」というデータが出ている。「価格」や「味」よりも「鮮度」や「安全性」を重視している消費者が多いのにはちょっと驚いた。
そういえば、以前、食品会社のカスタマーサービスの取材をしたことがある。消費者からのクレームで多い項目について「賞味期限切れ」「製造年月日や有効期限の表示が見にくい」「原産地が分かりにくい」等が多かった。
大らかで細かいことは気にしない国民性を感じる台湾ではあるが、食に関しては割合、厳しい目を持っているのかもしれない。
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■台湾の食品規定事情
台湾では「国民の食生活の安全を守り、国民の権利と健康が脅かされることがないよう」食品に関する規定が衛生福利部食品藥物管理署(Taiwan Food and Drug Administration、以下、TFDA)の「食品安全衛生管理法」を筆頭にかなり多く制定されている。そしてその規定も、時代や消費者の動向に臨機応変に対応して、新たな規定や修正が加えられたり、不要だと思われるものはどんどん廃止される。
規定は食品そのものだけでなく、食品の容器やパッケージ、表示ラベルの記載事項、宣伝文句、デザインなどについても非常に細かく、違反した場合の営業停止命令、登記の取り消しなどといった罰則や、罰金の金額等も法規に非常に明確に記載されている。
実際に、自治体の食品関連部署のウェブサイト上には、違反の内容、科された罰則や罰金の金額までもが詳細に公開されている。それにはなんと企業名が実名で書かれているのだ。食に対する違反には容赦ない罰が与えられる。
また、消費者自らが食の安全を守るよう意識を促すために、食品の違法を見つけた場合の通報ホットライン「1919」を設置し、報酬付与を規定の中に明記している。報酬目当てもあるのか、通報の件数は年々増えているという。
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■台湾の健康食品
台湾で販売されている食品は大きく「一般食品」と「健康食品」に分類される。「健康食品」は、日本の「特定保健用食品(トクホ)」に相当し、TFDAでの安全性と有効性の審査、認可を受ける必要がある。 「健康食品」の認可が取得できれば「小綠人」と呼ばれる「健康食品認証マーク、以下、「小綠人」」を付け、食品の効能効果について表示・宣伝が可能となる。
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■追加された「健康」の文字に関する法規
2年前の2020 年 8 月に追加、公布された一つの規定が、今月7月1日から施行された。規定公布から施行までの2年という時間は、関係する事業者が規定に対応するための猶予期間である。
その規定とは『食品及相關產品標示宣傳廣告涉及不實誇張易生誤解或醫療效能認定準則』第4条2項である。
2022年7月1日以降に製造される食品で、TFDAでの「健康食品」の審査・認可取得、登録をしていない「一般食品」には、商品名に「健康」の2文字を使用してはならない(筆者による日本語訳)
つまり健康食品認証を取得していない「小綠人」が付けられない食品(飲料も含めて)の商品名に「健康」の文字を使うことができなくなったのだ。これは効能効果がない一般食品が「健康」と表示することで、消費者がその効果を期待したり、健康食品と誤解することを避けるためだ。
TFDAによると、商品名だけでなく、商品のパッケージや宣伝文句に「健康」の文字が使われ、それが目立っていたり、消費者に強く「健康」を印象付ける可能性がある場合、商品名と同様に違法とみなされる。
また、規定では「健康」の2文字とあるが、繁体字中国語だけでなく「Healty」「ヘルシー」等、海外からの輸入品で「健康」に匹敵する言葉にも適用されるという。
規制に違反した食品を製造、販売の事業者には4~400万元(約16~1,600万円)の罰金が科される。
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■スーパーマーケットに並ぶ食品チェック
この法規が施行されてから1週間が経ったので、近所のスーパーマーケットに並んでいる商品を見に行ってみた。
商品名に「健康」の文字を使用している食品、パッケージに「健康」の文字がある商品が棚に並んでいる。日本語で「ヘルシー」と大きく書いてある日本からの輸入食品もあった。その中には「小綠人」が付いていない商品が少なくない。
製造日が2022年7月1日以前であれば今のところは違法にはならないが、今後は商品名、パッケージの変更などの対応を取らなければ高い罰金を科せられてしまうだろう。
今回、スーパーマーケットの商品を見て回って、今まであまり意識をしていなかったが「小綠人」が付いている食品の数は思っていたよりも多い。
売り場では「小綠人」付いている食品、いない食品は特に売り場が分けられておらず同じ棚に並べられている。見たところ「小綠人」が付いているからといって格別に価格が高くなっているわけでもなさそうだ。
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■台湾での健康食品の認可取得の難易度
台湾での「健康食品」の認可取得は簡単ではない。審査申請費用も非常に高額で、申請から取得までは最短でも1年はかかるという。審査を通るために必要な資料には、臨床試験などの多くのデータが必要だ。
審査の途中でデータが揃えられず、申請を諦めたり、却下される企業があったり、効能効果を持つ食品を開発したものの、この認可取得の費用の高さと期間の長さで申請を諦め、一般食品として販売しているケースもある。
それだけに「小綠人」は安全性、有効性、安定性を確認するために、何重もの厳しい審査を通った製品の証であるともいえる。
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■健康意識の高まりで更に注目される健康食品
新型コロナの流行によって、台湾でも健康意識が高まっている。できるだけ身体に良い食品を取りたいという消費者を守るため、台湾では食品の製造、販売に関して、今後もさらに規定が厳格なっていくだろうといわれている。
守られる消費者としては嬉しいことだが、食品製造、販売業の企業には、法に違反しないよう常に規定の確認を怠らないよう注意が必要となる。台湾で食品を販売する海外の企業ももちろん「規定チェック」は欠かせない。
違法の公開リストには、海外の企業であっても手加減なく名前が掲載されているからだ。こんなにも罰金を取られているのか・・・と気の毒に思う案例もある。しかし郷に入れば郷に従えで、規定は守らなければならない。
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■台湾の食品からは「健康」の文字が消えていく?
「健康」を謳った食品は売り場でよく見かけている。今後は一般食品では「健康」の文字が使用不可になることから、商品名や商品パッケージが変わっていくだろう。
先日、車で高速道路を走っていたら、私がこの「健康」の2文字についての記事を書くのを知っているかのように、横のレーンを「健康」の2文字を大きく書いた商品の宣伝カーが横切っていった。
その商品ボトルのラベルにはしっかりと「小綠人」が付いていた。
河浦美絵子
台湾在住20年目。40歳から台湾の大学院で台湾の教育史を研究し、その後、現地の企業に就職。永住ビザ取得。台湾生活の記録として2006年から始めたブログから人脈が広がり、日本の新聞や雑誌、ウェブサイトで台湾情報の記事を執筆するようになる。また、台湾企業へのアドバイザーや日系企業からの台湾市場調査などを請け負う。趣味は旅行と食べ歩き。台湾での毎日の日常を個人のブログで発信している。
ブログ:メイフェの幸せ&美味しいいっぱい〜in 台湾
※この記事はNewsweek 日本版からの転載です。