東京・汐留のオフィス街に立つ電通本社ビル。働き方をより柔軟で最適なものへと進化させる電通デジタルのオフィスが、同ビル内に竣工した。多様な働き方に対応するため、その時々の作業やコミュニケーションの内容に合わせて選べる多彩な場を配置。“道”に見立てた交差する通路を介して、さまざまな振る舞いが連続する街のようなオフィスをつくり出した。
設計を担当したのは建築家の大野力率いるシナト。大学で都市工学を学んだ大野はフリーランスとして活動をスタート。店舗や住宅などを手がけながら2004年に自身のアトリエを設立した。以降、インスタレーションなどの仮設的な作品から、都市計画や大型複合施設といった大規模プロジェクトまで300以上の作品に携わる。
年々活動の幅を広げる中で話題を集めたのが、新宿駅一帯のプロジェクトだ。商業施設全体の設計を手がけた「ニュウマン新宿」では、通常分けられる店舗と共有通路の境界を曖昧にデザインすることで、施設全体と街との一体感を創出。また「新宿東口駅前広場」では設備スペースとして使われていた空き地を活用し、パブリックアートのある集いの場へと改修するなど、街の魅力を再構築した。
周辺環境と共生する、オープンで多様な居場所のある空間づくりは、用途や規模を超えてさまざまな作品に反映されている。従来の慣習からなる空間づくりを見直し、土地や場から生まれる新しい発想が多くの支持を集めている。
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シナトが携わってきた代表的な建築
【keyword 1:新宿の新たな風景】
新宿駅直結の大型商業施設「ニュウマン新宿」をはじめ、2016~20年にかけて複数のプロジェクトを担当。パブリックファニチャーや植栽を設えた駅前広場など、憩いの場となる公共空間を提案し、新宿に新たな人の流れや賑わいを創出している。
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【keyword 2:多様な居場所のある働く場】
企業の社屋やシェアオフィスなど、さまざまな規模や業態のオフィス空間を幅広く手がけているシナト。働く人が自由に選択できる多様なワークスペースを点在させ、柔軟な働き方に対応する新しいオフィス空間の在り方を提案している。
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【keyword 3:地域に開き、人を呼び込む】
外部に面した1階にコミュニティカフェを併設した建設会社の社屋や、敷地内を周辺住民が自由に横断できる貫通通路を設けた郊外の飲食店兼果物店など、地域と積極的につながる空間設計を基本理念とし、コミュニティへの貢献を図っている。
シナト
代表の大野力は1976年、大阪府生まれ。金沢大学工学部土木建設工学科卒業後、フリーランスを経て2004年にシナトを設立。建築、インテリアの設計やインスタレーションアートなど、さまざまな規模や用途のプロジェクトを手がける。
※この記事はPen 2022年8月号より再編集した記事です。