私たちが空港で飛行機に乗る際には、厳格な保安検査を受けることになる。飛行機自体のセキュリティも相当に高いかと思いきや、意外にも大型旅客機は施錠できるしくみがないのだという。
ボーイング737の副操縦士を務める女性が6月、自身のTikTokチャンネルを通じ、飛行機の始動方法を解説した。アメリカのシカゴに住むモーガン(@almostcaptainmorgan)と名乗る投稿者によるもので、現在までに1200万再生を超える人気動画となっている。
操作手順自体も興味深いのだが、動画の概要欄には次のように記されている。「ボーイング737のエンジンをかけるのに、キーはいらない!」 これだけだと解釈によっては、キー自体は存在するが運用上置きっぱなしになっているようにも読み取れる。そこで視聴者が「キーは存在する?」と確認したところ、モーガンは「ノー!」と明言し、キー自体の存在を否定した。
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近年の大型機では、キーなしが主流に
ボーイング737に限らず、近年の大型旅客機は一般的にキーを備えていないようだ。セキュリティ上、コックピットとキャビンを隔てるドアだけは、数字入力式のキーでロックされている。だが、外部につながるドアを施錠したり、エンジン始動にキーを求めたりするしくみは存在しない。
航空ニュースサイトの「シンプル・フラインは2021年公開の記事において、こう説明している。「パイロットたちが空港で鍵の受け渡しを行うというアイデアは有用に思えますが、そうしたことは行われません。近代的なジェット機への入室と始動に、キーはまったく必要ないのです。」
「近代的な商用ジェットにはキーが付いていません。(外部との)扉にも鍵はかかりません。非常時にはグラウンド・スタッフが立ち入る必要があり、ロックできるようだと手順が複雑になってしまうのです。」
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それでも盗まれる心配はない
機体がまるごと盗難に遭うのではないかと心配になってしまうが、同サイトによるとそのような懸念はほとんどないようだ。
「セキュリティが確保された空港内での運用となることから、そのような(キーを必要とする)設計にはなっていないのです。ゲートに留め置く時はドアに印やテープを付け、侵入者があった場合に検知できるようにしておくことがありますが、ロックはかかりません。」
ただし、セスナやプライベート・ジェットなどの個人所有機になると、空港敷地外の私有地に停めておく機会が想定される。このため小型機の場合は自動車と同じく、イグニッションにキーを必要とする設計になっていることが多いようだ。
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始動は第2エンジンから……その理由は?
モーガン副操縦士は動画の中で、本物のコックピットさながらのシミュレーター機を使いながら、ボーイング737の詳細なエンジン始動手順を明かしている。40秒の短いクリップを通じテキパキと説明しており、まるで飛行機をかんたんに飛ばせるかのような錯覚に陥ってしまうほどだ。
説明によると、エプロンへの駐機中はジェットエンジンを停止するため、はじめにAPU(補助動力装置)を始動して電力と圧縮空気を確保する。その後、機体と運行会社によって手順は異なるが、少なくともモーガンがボーイング737に乗務する場合は第2エンジンを先にかける手順だと説明している。
理由の説明は省略されているが、動画視聴者たちがコメント欄で議論しているところによると、安全性を高める意図があるようだ。ボーイング737では第2エンジンがブレーキの油圧を供給するため、ステアリングの動力を供給する第1よりも優先して動作させるねらいがあるという。
あえてエンジンキーを持たせない設計や、エンジン始動の順序など、モーガン副操縦士の動画は航空業界の舞台裏を教えてくれている。意外な運用が存在し、その背後に考え抜かれた理由があるということも、航空業界が人々を魅了する理由のひとつだろう。
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【動画】現役女性パイロットが飛行機の始動方法を解説
@almostcaptainmorgan No key required to start the engines on a Boeing 737! ✈️ #airlinepilot #traveltiktok #didyouknow ♬ Aesthetic - Tollan Kim