〈完全ワイヤレス型ヘッドホン〉
Sony LinkBuds S(ソニー リンクバッズ エス)
オーディオ用イヤホンは、技術とアイデアで革新の真っただ中にある。ソニーのLinkBuds S(リンクバッズ エス)は、切り口の面白さが光る。そもそもイヤホンの始まりは、耳中にスピーカーを差し込み、外音を物理的に遮断した状態で音楽を聴くというもの。次に街中の騒音など外部のノイズを電気的に遮断するノイズリダクションが加わり、さらにプレーヤーやスマートフォンと結ぶ線が面倒なので追放し、完全ワイヤ
レスになった。そしていま、外音を遮断するはずのイヤホンの最新トレンドは、「外音取り込み」だ。真逆だろう!?
ソニーは今年2月にLinkBudsを、そして6月にLinkBuds Sを発売、いずれも外音取り込みをアピールしている。狙いは、イヤホンの新しい使用形態としての「常時装着」だ。音楽を聴く時だけでなく、常に装用したまま、音楽やさまざまな音情報、会話などを耳に入れるというスタイルだ。LinkBudsは、開けた孔から自然に外音が入ってきたが、LinkBuds Sはマイクによる電子的な取り込みを実行している。
LinkBuds Sは小さく、4.8gと軽く、耳内部での接触面積が大きいから、確実に装着でき肌触りもいい。外音はクリアで十分使えるだろう。ユーザーが発声すると自動的に音楽再生が一時停止する。ただし、自分の声質は少し不自然に感じた。指で本体をタッチすると、ノイズキャンセリングモードに遷移。ノイキャン状態での音質もウェルバランスだ。
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近未来的なのが内蔵センサーの活用。通話や歩行などの行動を感知し、適切なタイミングで音楽を再生し、アプリの通知を読み上げる。特定の場所で音楽を再生したり、身体の向きに合わせて音声が届いたりと、ロケーションゲームのプレイも可能。今後、現実とデータをリンクさせる音声ARデバイスへの進化が期待される。ソニーらしいアイデアと切り口のユニークさが光る新時代の新発想イヤホンだ。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。近著に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
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※この記事はPen 2022年8月号より再編集した記事です。