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いまの時代にこんなのあり⁈ ミタスニーカーズ・国井栄之による驚きの販売方法

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:帯刀憲一郎
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東京・上野から世界に向け、独自のスニーカースタイルを提案する「ミタスニーカーズ」。今年2月にリリースしたアディダス オリジナルスとのコラボモデルが、その販売手法で業界を驚かせたという。このプロジェクトについて、クリエイティブ・ディレクターの国井栄之に話を訊いた。

6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。

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国井栄之●クリエイティブ・ディレクター。1976年、東京都生まれ。96年にミタスニーカーズに入社、その後クリエイティブ・ディレクターに就任した。多くのブランドとのコラボレーションモデルや別注モデルを手がける他、国内外のスニーカープロジェクトにも関わり、同店のみならず世界のスニーカーシーンを牽引する存在として知られている。Twitter:@shigeyuki_kuniiInstagram:@shigeyuki_kuniiFacebook:@shigeyuki.kunii

今年2月にミタスニーカーズがリリースしたアディダス オリジナルスとのコラボモデル「フォーラム 84 ロー ミタ “ASK”」。フォーラムの前身、トップテンの中でも謎のベールに包まれているメイド・イン・USAのオーストリッチモデルをトレースしたデザインもさることながら、販売方法が業界を驚かせた。一斉の販売告知はせず、入荷日や価格は非公開。ショップを訪れて店員にASKし、自分のサイズが入荷していれば購入できるという、現代消費社会へのアンチテーゼといえるアナログ的施策だ。

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下駄や草履の製造販売を行っていた三田商店としてスタートし、国井の加入後にミタスニーカーズに改名。80年代から東京・上野のアメ横センタービルにショップを構え、2020年6月には拡張リニューアルを遂げた。

「ハイプと称されるスニーカーが予定調和なタイムラインの中で毎週のようにリリースされ、すぐに忘れ去られてしまう。そんな偏った現実に疑問を感じていました」と、クリエイティブ・ディレクターの国井栄之は語る。

過去にも革新的な仕掛けをつくってきた国井が、クリエイションで重要視するのは、そのタイミングに意味と意義をもたせることだ。

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スニーカー好きと転売業者を区別する「ドレスコード制」を初めて導入したのもミタスニーカーズだった。2019年にはデジタルに移行。指定されたスニーカーを履く写真をアップした人だけが購入権を得る仕組みだ。

デザイン面では、ベースとなるモデルに込められた本質を活かすことを第一に考える。「大切なプロダクトをカスタムさせてもらう立場」という思いから、彼が手がけたモデルのインソールには「東京改」のロゴがプリントされているのがその証し。同時に、入手困難になるそれらが、スニーカーを本当に愛する人々に一足でも多く渡るように、販売方法にも考えをめぐらす。今回も、友人や家族に向けて少数しかつくられないフレンズ&ファミリーモデルながら、顧客を同様の存在と捉え、一般販売したのも異例といえよう。

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国井自身がこれまでに作成したコラボレーションモデルのデザイン資料。ストーリーテリングすべき目的が定まれば、デザイン作業は15分ほどで終わるそう。「集中力がないんで」と国井は笑う。

「コラボはぼくらの責務ではありません。でもそれを通して市場を変える努力と、小売り本来の使命を全うするための変わらない努力。両極を同時に行い、地に足が着いた進化をしていきたいですね」

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スニーカー「ミタスニーカーズコラボレーション」

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左上から時計回りに、「温故知新」をテーマに時代の異なる素材で3分割した、ナイキの「エア フォース 1」。ウィズリミテッドも加わった、ニューバランス「MT576」のトリプルネームモデ ル。アシックスの“虜”になってほしいと、ダブルミーニングを込めてトリコロールカラーで彩った「ゲルライト スリー」。ラグジュアリーブランド=本物との説明を受け、日本文化の花札でアンサーしたジバンシィとのコラボ。松に鶴の札の色合いでまとめた。中央は今回話題の「フォーラム 84 ロー ミタ “ASK”」。

入社2年目の1999年に自身初となるコラボレーションモデルをナイキと着手した。以降、ショップによるコラボレーションや別注のパイオニアとしてスポーツからラグジュアリーまで、さまざまなブランドと協業している。

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国井栄之のFAVORITE THINGS

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「スマートフォン」

車中やカフェで仕事をすることが多く、作業はiPhoneだけでほぼ完結するという。待ち受け画面は友人でありアーティストのスニーカーウルフが手がけた、千社札をモチーフにしたグラフィック。ミタスニーカーズのショップ名と東京改の文字が落とし込まれている。

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※この記事はPen 2022年8月号「“仕掛け人"を探せ!」特集より再編集した記事です。

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